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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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星から落ちてきたクズ村長の末路と、新たなる無敵のトライアングル!』

星から落ちてきたクズ村長の末路と、新たなる無敵のトライアングル!』

 死甲虫機デス・スタッグ・ビートルの襲撃から数日。

 ポポロ村の広大な農地には、かつてないほどの活気と、心地よい労働の汗の匂いが満ち溢れていた。

「そらっ! 源蔵の親父さんに負けねぇだべ! もっと深く耕すだ!」

「おうよ! ドン吉、手つきが良くなってきたじゃねぇか! その調子で月見大根の苗を植えていくべ!」

 泥沼源蔵の檄が飛び、かつてニート化していたドン吉たち農民が、泥だらけになりながら笑顔でクワを振るっている。

 彼らの目に、金を手にしてふんぞり返っていた頃の驕りは微塵もない。あるのは、土と共に生きる農家としての誇りと、仲間たちと一つの目標に向かって汗を流す『労働の喜び』だった。

「おーい、皆! お昼の休憩にするべ!」

 お昼時。木陰に集まったドン吉たちの前に、大きな木箱が運ばれてきた。

 中には、ほかほかの湯気を立てる『タローソン特製・具だくさん爆弾おにぎり』と、シープピッグの肉がゴロゴロ入った豚汁がたっぷりと用意されている。

 もちろん、レティシア社長が支給を再開した、労働者だけが味わえる無料の『福利厚生(バフ飯)』だ。

「いただきますだべ!」

 ドン吉が、泥を落とした手でおにぎりを掴み、大きな口を開けてガブリと噛み付いた。

 その瞬間。彼の目から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「……うめぇ。涙が出るほど、うめぇだ……っ」

「ああ。王都の高級フレンチ弁当なんかより、汗水垂らして働いた後に皆で食うこのおにぎりの方が、何百倍も美味いだべ……!」

 ドン吉たちは、豚汁をすすりながら、子供のように泣き笑いした。

 お金では決して買えない、労働というスパイスが効いた最高の食事。彼らはもう二度と、この温かいご飯のありがたみを忘れることはないだろう。

 その光景を、ルナキン・ポポロ支店のテラス席から眺めていた私は、満足げにコーヒーを一口飲んだ。

「これで、成金ニート問題も完全解決ね。……本当に、世話の焼ける社員(村人)たちだわ」

「ふふっ。でも、レティシア社長の顔、とても嬉しそうですよ」

 私の向かいの席で、人参ジュースをストローで飲んでいたキャルル村長が、クスッと笑った。

「武力や恐怖ではなく、労働の尊さを自ら気づかせる。……素晴らしい経営手腕です。このポポロ村のトップがレティシア社長で、本当に良かったと心から思います」

「ありがとう。キャルルも、行政トップとしてよく農民たちのフォローに回ってくれたわ。助かったわよ」

 私とキャルルは、互いの手腕を認め合い、仕事のパートナーとして静かに微笑み合った。

 この数日間の騒動を経て、私たちの間には『社長』と『村長』としての、確固たる信頼関係が築かれていたのだ。

 ――キィィィィンッ……!!

 その時。

 真っ青な空の彼方から、何かが空気を切り裂くような甲高い音が聞こえてきた。

「ん? なんだべあれ。昼間なのに流れ星か?」

 おにぎりを食べていたドン吉が、空を指差す。

 その「流れ星」は、ぐんぐんとポポロ村の広場に向かって落下してきて――。

 ドッッッッシャァァァァァンッッ!!!

「ひぃぃぃっ!?」

「な、なんだなんだ!?」

 猛烈な勢いで広場の中央に激突し、見事なクレーターを作り上げた。

 もうもうと舞い上がる土煙。

 私とキャルルがテラスから身を乗り出すと、クレーターの底で、ボロボロになった派手なアロハシャツの老人が、ピクピクと痙攣していた。

「あ、あででで……。ワシの腰が……背骨が……」

 なんと、第1話でキャルルの怒りの飛び蹴り(特注安全靴)を食らい、星の彼方へと吹っ飛ばされていた前村長・ロップ(70歳)が、大気圏を突破してようやく村に帰還したのである。

「お、おのれ……! ワシはポポロ村の偉大なる村長ぞ! 誰かワシを助け起こし、肩を揉み、ふかふかのベッドへ運ぶのじゃ……!」

 全身を打撲し、服はボロボロ、サングラスもひしゃげているというのに、ロップの傲慢な態度は全く変わっていなかった。

 彼が這い上がろうとした、その時。

「……あらあら。ようやく帰ってきたのね、うちの『多重債務者』さん」

 冷たい声と共に、クレーターの縁にスッと立ったのは、真紅の髪を揺らす強欲商人、クロエだった。

 彼女の手には、分厚い羊皮紙の束が握られている。

「な、なんじゃお主は!? ワシを誰だと――」

「あなたが村に帰ってくる時に乗ってきた、あの『魔導ロールスロイス』。あれ、王都にあるうちのゴルド商会のディーラーで、フルローンを組んで買っていたわよね?」

 クロエが、ニッコリと悪魔のような笑みを浮かべて羊皮紙を突きつけた。

「魔族の愛人への貢ぎ物と、ロールスロイスのローン残債。合わせて金貨『一億枚』。……どうやって払ってくれるのかしら?」

「ひっ……!? い、一億……っ!?」

 ロップの顔から、一瞬にして血の気が引いた。

「ま、待て! ワシは村長じゃ! この村の税金を使って――」

「おじいちゃん」

 いつの間にかクロエの隣に立っていたキャルルが、絶対零度の声でロップを見下ろした。

「あなたはもう村長ではありません。公金を横領した罪人と、多重債務者です。……『天は自ら助くる者を助く』。自分の借金は、自分の汗水流して働き、完済してください」

「キャ、キャルル!? 孫娘よ、お前までワシを見捨てる気かぁぁっ!?」

 キャルルはフイッと冷たく顔を逸らし、クロエに向かって頷いた。

「クロエさん。この男の身柄、商会に引き渡します。煮るなり焼くなり、強制労働させるなり、好きにしてください」

「ええ、助かるわ。……ちょうど、タローマン(ホームセンター)の資材置き場で、セメント袋や鉄骨を運ぶ『肉体労働者』が不足していたのよね。一億枚完済するまで、二百年くらい無休で働いてもらうわよ」

「ひぃぃぃぃぃぃっ! ワシは70歳の老人じゃぞ! 労災が下りるぅぅぅっ!!」

 クロエの合図で現れた屈強なオークたちに両脇を抱えられ、ロップ前村長はドナドナと資材置き場へと連行されていった。

 公金を持ち逃げし、村を捨て、最後は孫の権威を笠に着てふんぞり返ろうとした身勝手な老人の、あまりにも惨めな(しかし自業自得な)末路であった。

「……ふぅ。これで、村の憂いも本当に全てなくなりましたね」

 キャルルが、テラス席に戻ってきてホッと息を吐いた。

「ええ。これでポポロ村は、正真正銘、誰にも邪魔されない最高のホワイト領地よ」

 私が微笑むと、キャルルは私の前に立ち、深く、それはもう丁寧に、臣下が主君に向けるような最敬礼のお辞儀をした。

「レティシア社長。この村を救い、豊かにしてくださったこと、そして見事な経営手腕で村人を導いてくださったこと。……行政を預かる村長として、そして一人の人間として、心から敬意を表します」

「キャルル……」

「仕事においては、私はあなたに絶対の信頼を置き、あなたの指示に従いましょう。このポポロ村を共に守るパートナーとして」

 キャルルのその真っ直ぐな言葉に、私は胸が熱くなるのを感じた。

 王族としてのプライドを持つ彼女が、私の社長としての器を完全に認めてくれたのだ。これほど心強い味方はいない。

 しかし。

 頭を上げたキャルルの銀色の瞳には、先ほどまでの敬意とは全く違う、ギラギラとした『女の闘志』が燃え盛っていた。

「――ですが! 恋の勝負は別ですっ!!」

「……え?」

 キャルルが、バンッ!とテーブルを両手で叩き、私に顔を近づけてきた。

「ユリウスさんの『誰にでも等しく優しい気高さ』、最高です! でも、だからこそ、私は彼にとっての『ただ一人の特別な姫』になってみせます! 仕事ではあなたに従いますが、彼を巡るレースでは、絶対に一歩も譲りませんからね!!」

 ヤンデレ気質全開の宣戦布告。

 さっきまでの美しい友情の空気はどこへやら、キャルルは「絶対に負けない!」と鼻息を荒くしている。

「……ふふっ。本当に、素直じゃないというか、欲張りなウサギ姫ね」

 私は立ち上がり、腕を組んでキャルルを真っ向から見据えた。

「いいわ、受けて立つ。言っておくけど、彼がピンチの時に一番に心配して駆けつけてくれたのは、この私なんだから。……社長として、そして一人の女として、うちの自慢の騎士ナイトをそう簡単に渡すもんですか」

 バチバチバチッ!!

 ルナキンのテラス席で、有能社長と武闘派姫の間に、死甲虫機の襲撃の時よりも熱い火花が激しく散りまくる。

 お互いを認め合ったからこそ、絶対に負けたくない最強のライバル。

「あーあ。また始まったわね」

「もきゅ……。キャルルさん、またハンカチ噛んでますぅ……」

 少し離れた席で、クロエとリリスが呆れたようにお茶をすすっている。

「レティシアさーん! キャルルさーん!」

 その時。

 ルナキンの厨房の勝手口から、とても嬉しそうな、底抜けに明るい声が響いた。

 見れば、パリッとしたエプロン姿のユリウスが、手にお玉を持ったまま、見えない犬耳と尻尾をパタパタと揺らしてこちらに手を振っていた。

「お昼ご飯の『シープピッグの特大ニンニクカツカレー』、美味しくできましたよー! 二人とも、お腹空いてませんか? 一緒に食べましょう!」

 私とキャルルがバチバチに争っていることなど、露ほども知らない。

 ただ純粋に、美味しいご飯を作って皆を笑顔にしたいという、一点の濁りもない無邪気な笑顔。

 その顔を見た瞬間。私とキャルルは、顔を見合わせて、思わず「ふふっ」と同時に吹き出してしまった。

「ええ、今行くわ! 大盛りでお願いね、ユリウス!」

「私もですっ! ユリウスさんの手作りカレー、すっごく楽しみです♡」

 ドロドロの愛憎劇も、ブラック企業のような理不尽も、この村には存在しない。

 あるのは、泥まみれになって働く誇りと、温かいご飯と、そして、少しだけ騒がしくて最高に幸せな『無敵のトライアングル』。

 今日もポポロ村の青空の下、私たちの終わらないホワイトな日常と、賑やかなラブコメディが、高らかに笑い声を上げていた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

第5章『成金ニートと恋する月兎族』編、これにて無事に大団円エピローグです!

兵糧攻めとユリウスの背中によって更生したドン吉たち。汗水流して働いた後に食べる「おにぎりと豚汁」の味に、涙を流して喜ぶ姿は胸が熱くなりましたね。労働の尊さとお金では買えない価値、これぞお仕事ファンタジーの醍醐味です。

そして、星の彼方から大気圏を突破して帰ってきたロップ前村長(70歳)。

相変わらずのクズっぷりでしたが、クロエ姐さんのローン取り立てと、孫娘キャルルの見捨て(自助論)により、タローマンでの過酷な強制労働へとドナドナされていきました(笑)。一億ゴールド完済まで二百年、頑張ってください!

ラストは、レティシアとキャルルの熱い「パートナー契約」と「ラブコメ宣戦布告」!

仕事では最高の相棒、恋では最強のライバル。この二人のバチバチ感、書いていて本当に楽しかったです。

当のユリウスは何も分かっておらず、エプロン姿で「カツカレーできましたよー!」と無邪気に笑っているのが、この物語らしくて最高のオチですね。

【読者の皆様へのお願い】

ここまで読んで「ニート更生泣けた!」「クズ村長のざまぁ最高(笑)」「このトライアングルずっと見ていたい!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様からいただく【ブックマーク】と【星評価(MAX)】が、この物語の「第6章」を執筆するための最高の【福利厚生モチベーション】となります!

どうか、清き星での全力応援をよろしくお願いいたします!

第5章、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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