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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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『顎砕き』と『フリーズ』! 息の合った最強連携と、強すぎる姫の切ないヤキモチ』

『顎砕き』と『フリーズ』! 息の合った最強連携と、強すぎる姫の切ないヤキモチ』

 巨大な地割れから現れた古代兵器『死甲虫機デス・スタッグ・ビートル』が、天を衝くような駆動音を鳴らし、巨大な二本の大顎を振り回して暴れ狂う。

 ポポロ村の豊かな土壌に蓄積された魔力を狙い、地下深くから這い上がってきた鋼鉄の厄災。

 その重戦車のような突進を、我らが最強の騎士ユリウスが、剣一本で正面から受け止めていた。

「ギイィィィィィィンッ!!」

「くっ……! 重い……ですが、これ以上は一歩も通しません!」

 ユリウスの腕の筋肉がはち切れんばかりに膨張し、足元の土が深々と抉れる。

 だが、彼の防衛線は絶対に揺るがない。彼が『盾』として機能している間に、村人たちの避難は完了しつつあった。

「レティシア社長は下がっていてください! ここは現場トップの私と、ユリウスさんで片付けます!」

 ショートパンツにパーカー姿のキャルル村長が、両手に『ダブルトンファー』を構え、軽やかなステップで死甲虫機の側面に回り込んだ。

 彼女の銀色の瞳は、完全に戦場を支配する武人のそれへと切り替わっている。

「ユリウスさん! 私がアイツの姿勢を崩して、装甲をこじ開けます! 装甲が割れた瞬間に、一番威力の高い一撃を内部に叩き込んでください!」

「分かりました! キャルルさんのタイミングに合わせます!」

 打合せはそれだけだった。

 キャルルは、自慢の脚力――100メートルを5秒台で駆け抜ける超人的なスピードで地を蹴った。

 彼女の足元、タローマンで買った特注の『鉄板入り安全靴』が、地面の土を爆発的に巻き上げる。

「いっくよーっ!!」

 キャルルは、死甲虫機の巨大な前脚を足場にして、空気の壁を蹴り上げるように宙を舞った(三角飛び)。

 そして、死甲虫機の巨大な頭部、その鋼鉄の顔面へと真っ向から急降下する。

「ギガガガッ!?」

 死甲虫機が迎撃のために巨大な大顎を振り上げるが、キャルルの動きの方が圧倒的に速かった。

「月影流――!」

 キャルルは両手のダブルトンファーを交差させ、迫り来る鋼鉄の大顎の関節部分にガキンッ!と的確に打ち込んだ。

 彼女の桁外れの膂力と闘気が、死甲虫機の姿勢を強引にブレさせ、頭部の装甲を無防備に上に跳ね上げさせる。

 (今ですっ! 装甲の継ぎ目、そこに全闘気を集中させて……!)

 トンファーで相手の体勢を完全に崩したキャルルは、空中で体を捻り、むき出しになった死甲虫機の『顎の付け根(関節の装甲)』に向けて、凄まじい闘気を纏わせた膝蹴りを叩き込んだ。

「必殺! 顎砕き(あごくだき)っ!!」

 ――メキョォォォォォォンッッ!!!

 ポポロ村の広場に、鋼鉄がひしゃげる凄まじい爆音が響き渡った。

 月兎族の王女が放った、渾身の打撃奥義。

 特注の安全靴から放たれた物理的衝撃と闘気が、分厚い古代の装甲を粉砕し、死甲虫機の顔面から首にかけての金属殻を見事に叩き割ったのだ。

「ギギ、ギャァァァァァァッ!?」

 内部の紫色の魔力機関がむき出しになり、死甲虫機が苦悶の機械音を上げて大きくのけぞる。

「やりました! ユリウスさん、今ですっ!!」

 キャルルが宙を舞いながら叫ぶと同時。

「――はいっ!」

 ユリウスの体が、白銀の閃光となって大地を滑った。

 彼の手に握られた『オリハルコン・ソード』が、絶対零度の冷気を極限まで圧縮し、青白いオーラとなって刀身を包み込む。

 一切の手加減なし。村の平和を脅かす厄災を、一撃で氷の世界へと沈める究極の奥義。

「『フリーズ・エッジ・フィニッシュ』!!」

 ズバァァァァァァァァンッ!!!

 ユリウスの放った氷の斬撃が、キャルルがこじ開けた装甲の隙間から、死甲虫機の内部機構へと完璧に吸い込まれた。

 その瞬間。

 荒れ狂っていた死甲虫機の動きが、ビデオの停止ボタンを押されたかのように、ピタリと止まった。

 ピキ、ピキキキキッ……!!

 内部から急激な冷却が始まり、全長十メートルの鋼鉄の巨体が、足元から頭頂部に向かって一瞬のうちに青白い氷の結晶へと変わっていく。

 魔力機関の蒸気も、回転する歯車も、その巨体を支えていた六本の脚も、全てが絶対零度の魔力によって氷結・粉砕されたのだ。

「……ふぅ」

 チャッ、と一音。

 ユリウスが優雅な所作で剣を鞘に納めた瞬間、巨大な死甲虫機の氷像は、パラパラと細かな氷の粉末となって風に舞い散り、完全に消滅した。

 後に残されたのは、耕されたばかりの綺麗な土と、朝日にキラキラと輝く氷晶のパウダーだけだった。

「や、やっただべぇぇっ!!」

「ユリウスの兄ちゃんと、キャルル村長がバケモノをやっつけただぁっ!!」

 避難していたドン吉たち農民から、割れんばかりの歓声が上がる。

 キャルルは、トンファーを腰に収めると、パァッと顔を輝かせてユリウスの方へと駆け寄った。

「やりましたね、ユリウスさん! 私の『顎砕き』からの、ユリウスさんの『フリーズ』! 完璧な連携でした!」

「はい! キャルルさんが見事に装甲をこじ開けてくれたおかげです。本当にすごい格闘術ですね!」

 ユリウスが無邪気な笑顔で称賛すると、キャルルは両頬を真っ赤に染め、両手を頬に当てて身悶えした。

「は〜ん♡ やっぱり、私とユリウスさんの相性はバッチリですね! 共に戦場を駆け抜ける、最強のパートナー……これぞまさに、戦いの中で育まれる愛の形っ!」

 自分の脳内で完璧な乙女ゲームのヒロインルートを構築し、勝利の余韻と恋のときめきに浸るキャルル。

 彼女は、このままユリウスが「君は強いんだな」とか「怪我はないかい?」と自分を気遣い、甘い言葉をかけてくれると信じて疑っていなかった。

 しかし。

「キャルルさん、少し待っていてくださいね!」

 ユリウスは、キャルルに一言そう告げると、彼女の横をすり抜け、一目散に駆け出したのだ。

 向かった先は――少し離れた安全圏から、戦闘の推移を見守っていた『私』の元だった。

「レティシアさん!!」

「ユリウス」

 ユリウスは、息を切らして私の前に立ち止まると、エプロンをはためかせて私の体を上から下まで食い入るように見つめた。

「お怪我はありませんか!? 土煙を吸い込んだり、破片が飛んできたりしませんでしたか!?」

「ええ。あなたが完璧な盾になって、キャルルが片付けてくれたからね。私は無傷よ」

 私が微笑んで頷くと、ユリウスは心底ホッとしたように、ヘナヘナとその場にしゃがみ込みそうになり、大きなため息を吐いた。

「よかった……。本当に、レティシアさんに万が一のことがあったらどうしようかと、気が気じゃありませんでした」

「……ありがとう、ユリウス。あなたが守ってくれたから、安心していられたわ」

 私は、土に汚れた彼の手をそっと握り、優しく微笑みかけた。

 彼は、誰にでも分け隔てなく優しい男だ。

 しかし、『戦えないただの人間(社長)』である私に対してだけは、明確に「自分が守り抜かなければならない存在」として、最優先で保護の対象にしてくれるのだ。

 それは恋愛感情というより、彼の気高き『騎士道』の本能なのかもしれない。だが、その絶対的な安心感こそが、私が彼に抱く特大の優越感でもあった。

「あ……ああ……っ」

 その光景を、少し離れた場所から見ていたキャルルは。

 プルプルと肩を震わせ、自分のポケットから『人参柄のハンカチ』を取り出し、ギリィィィッ!と力いっぱい噛み締めた。

「ず、ずるい……っ!!」

 キャルルの目から、ポロリと悔し涙がこぼれ落ちる。

「私の時は『すごい格闘術ですね!』って戦友扱いだったのに! レティシア社長の元には、あんなに血相を変えて飛んでいって『お怪我はありませんか!?』だなんて……っ!」

 キャルルは、自分の特注安全靴を見つめ、ガックリと肩を落とした。

 自分が王族であり、戦闘力がズバ抜けて高い武闘派だからこそ。ユリウスは彼女を「守るべきか弱いヒロイン」ではなく、「背中を任せられる頼もしい同僚」として認識してしまっているのだ。

「……私が、もう少しか弱かったら。あんな風に、私のことも一番に心配してくれるかもしれないのに……!」

 ハンカチを噛みちぎらんばかりの勢いで悔しがるキャルル。

 しかし、彼女の根底にある『自助論』の精神が、「か弱いフリをする」という選択肢を全力で拒絶してしまう。

「くっ……! 負けませんからね! 戦友から始まるラブ・ロマンスだって、恋愛小説の第7巻に載っていました! この『相性の良さ』を武器に、絶対にレティシア社長からユリウスさんを奪ってみせますっ!!」

 強すぎるが故に、ヒロイン扱いされない月兎族の姫君。

 彼女の切なくも可愛いヤキモチと、不屈の闘志が、ポポロ村の青空に向かって熱く燃え上がっていた。

 かくして。

 ドンガン地下帝国からの招かれざる厄災は、最強の騎士と最強の姫の連携によって無事に排除され。

 ポポロ村は再び、騒がしくも愛おしい『日常』と、終わらないラブコメ大戦争の平穏を取り戻したのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第5章の第9話、いかがでしたでしょうか。

古代兵器・死甲虫機デス・スタッグ・ビートルとの大迫力バトル!

キャルルの必殺格闘術『顎砕き』で装甲をこじ開け、ユリウスの絶対零度『フリーズ・エッジ・フィニッシュ』で内部を氷結粉砕する。二人の最強コンビネーション、めちゃくちゃかっこよかったですね!

しかし、戦闘後のラブコメパートは一転してキャルルの悲哀(笑)。

「相性バッチリね♡」と乙女モードに入るキャルルを置き去りにして、ユリウスは「戦えない社長」であるレティシアの元へ一目散!

「お怪我はありませんか!?」と血相を変えて心配するユリウスの姿に、レティシアへの「守るべき相手」としての特別感が垣間見えます。

「私がもう少しか弱かったら心配してくれたのに……」とハンカチをギリィッと噛むキャルル。強すぎる武闘派ヒロインゆえの「非ヒロイン扱い」というギャップが、切なくも最高に可愛いですね!

でも、決してか弱いフリはしないのが、彼女の『自助論』精神の素晴らしいところです。

次回、いよいよ第10話(第5章エピローグ)!

すっかり更生した働き者の農民たち。そして、星の彼方から落ちてきた「あのクズ村長」の末路とは!?

女子たちのラブコメも大団円(?)を迎える、笑顔と癒やしの最終回をお届けします!

「キャルルの顎砕きかっこいい!」「ユリウスの過保護バンザイ!」「ハンカチ噛むキャルル不憫可愛い(笑)」とニヤニヤしていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、第5章最終話を走り抜けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

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