↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/73

平和な日常と恋の挟み撃ち。そして地を割って現れた、古代の機甲厄災

平和な日常と恋の挟み撃ち。そして地を割って現れた、古代の機甲厄災

 ポポロ村のニート農民たちが無事に更生し、村に再び活気が戻ってから数日後のこと。

 村の南側に広がる広大な農地では、朝から賑やかな声が響き渡っていた。

「そらっ! もっと深くクワを入れるだべ! 遅れた分の遅れを取り戻すだ!」

「分かってるだ! 泥沼の親父さんに負けねぇくらい、立派な月見大根を育てるだべ!」

 すっかり元の働き者に戻ったドン吉たちが、泥だらけになりながら畑を耕している。

 その中心には、もちろん我らが最強の騎士、ユリウスの姿があった。

 彼は大きなクワを軽々と振り回し、普通の農民の十倍近いスピードで、的確かつ丁寧に土をほぐしていく。

「ふぅ……。皆さん、いい汗かいてますね!」

 ユリウスがクワを止め、額の汗を腕で拭いながら爽やかな笑顔を向ける。

 その無邪気で清々しい姿は、もはや村の農作業における絶対的な精神的支柱エースとなっていた。

「ユリウス! 午前中の休憩よ。冷たいお茶と、塩分補給用の『塩漬け梅干し』を持ってきたわ」

 私は、ルナキンの制服にエプロンを重ねた姿で、大きなヤカンとカゴを提げて畑のあぜに歩み寄った。

 社長自ら現場に赴き、社員(村人)たちの体調管理(福利厚生)を徹底する。これも立派な領地経営の一環である。

「あっ、レティシアさん! ありがとうございます!」

 ユリウスが見えない犬耳をピンと立てて、私の方へ小走りで駆け寄ろうとした、その時だった。

「お待ちください、ユリウスさんっ!」

 ――ヒュンッ!

 風を切るような鋭い身のこなしで、私の隣にピタリと着地した人影。

 ショートパンツにパーカー、そして足元には特注の安全靴を履いた、月兎族の姫君にしてポポロ村村長、キャルルだった。

「肉体労働の後は、ただの塩分や水分だけでは足りません。……はいっ! 私が作った『特製・人参と蜂蜜の栄養特化ドリンク』です! ビタミンと愛がたっぷり詰まってますよ♡」

 キャルルは、可愛いウサギの水筒をユリウスの目の前にスッと差し出した。

 そして、私の方をチラリと見て、ニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 (……このウサギ、また張り合ってきて)

 私はピキッとこめかみを引き攣らせた。

 サウナでの【裸の女子会】以降、キャルルのユリウスへのアピールは日に日に激しさを増していた。仕事の連携は完璧なのに、ユリウスが絡んだ瞬間に私たちはバチバチのライバルモードに突入してしまうのだ。

「わぁ、キャルルさんもありがとうございます! じゃあ、どっちもいただきますね!」

 当のユリウスは、二人の間に流れる不穏な火花に全く気づく様子もなく、私の淹れたお茶とキャルルの特製ドリンクを、両方とも美味しそうに飲み干した。

「ぷはぁっ! 美味しいです! やっぱり、体を動かした後の飲み物は最高ですね!」

 ユリウスが、屈託のない極上の笑顔を浮かべる。

 その純度100%の無邪気な笑顔を至近距離で浴びせられ、私とキャルルは思わず「うっ……」と胸を押さえて同時に顔を赤くした。

 (……ずるいわ。あの笑顔は反則級よ)

「さあ、お茶も飲んだし、もう少し頑張りましょうか!」

 ユリウスは再びクワを握り直し、丁寧に、そして力強く土を耕し始めた。

「すごい体力ですね……。あんなに動いているのに、息一つ乱れていない」

 キャルルが、感心したようにユリウスの背中を見つめる。

「ええ。それに、どんな単純作業でも一切の手抜きがないわ」

 私も、彼の背中から目を離せずに頷いた。

 ユリウスは、土をほぐしながら、優しく語りかけるように呟いた。

「耕さないと、ご飯食べれないからね」

 それは、自分に言い聞かせるような、あるいは土そのものに語りかけるような、素朴で飾り気のない本音だった。

 誰かのために。皆で作る美味しいご飯のために。

 その根底にある、見返りを求めない究極の優しさに触れて、私とキャルルの心が同時に大きく跳ねた。

「……そうですね」

 キャルルが、熱っぽい瞳でユリウスの背中に同意する。

「……ユリウスの言う通りよ」

 私も、全く同じタイミングで、彼への愛おしさを込めて同意した。

 そして、ハッとしてお互いの顔を見合わせる。

「ちょっと、レティシア社長。今の私のセリフですよ」

「何言ってるの、私の方がコンマ一秒早かったわ」

 キャルルと私が、ユリウスの背中を挟むようにしてジリジリと距離を詰め、またしても見えない火花を散らす。

 当のユリウスは「? どうしたんですか、お二人とも?」と、クワを持ったまま不思議そうに首を傾げているだけだった。

 平和だ。

 騒がしくて、愛おしくて、最高にホワイトな私たちの日常。

 このまま、美味しい月見大根が育って、皆で笑ってご飯を食べる。そんな日々がずっと続いていくと、信じて疑わなかった。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!

 その時。

 足元の広大な大地が、不気味な地鳴りを上げて激しく揺れ始めた。

「な、なんだべ!? 地震か!?」

 ドン吉たちが、慌ててクワを放り出して身を低くする。

「……ッ! 違います、これは自然の揺れじゃない!」

 誰よりも早く異変に気づいたのは、月兎族であるキャルルだった。

 彼女の長く鋭い耳がピーンと立ち上がり、地中深くから響く『音』を正確に拾い上げる。

「地中から……巨大な歯車が擦れ合うような音と、蒸気の噴出音が聞こえます! 何かが……下から来ます!!」

「下から!?」

 私が驚いて足元を見た、その直後だった。

 ――ズガァァァァァァンッッ!!!

 ユリウスたちが耕していたばかりの畑の中央。

 黒々とした土が爆発したように天高く吹き飛び、巨大な地割れが走った。

「ひぃぃぃっ!!」

「逃げろぉっ!!」

 土煙が舞い上がる中、地割れの底から這い出してきたのは……全長十メートルは優に超える、黒光りする鋼鉄のバケモノだった。

 巨大な二本の湾曲した大顎(角)。

 重厚な金属の装甲に覆われた甲虫のフォルム。

 六本の鋭い機械の脚が、ズシン、ズシンと大地を踏み砕く。

 その装甲の隙間からは、禍々しい紫色の蒸気(魔力)がシュウシュウと噴き出していた。

「な、なによアレ……! 魔獣じゃない……機械!?」

 私は、その異様な姿に息を呑んだ。

「間違いない……あれは、ドンガン地下帝国の深層に封印されていたはずの古代兵器……『死甲虫機デス・スタッグ・ビートル』です!」

 キャルルが、戦場の顔つきに切り替わり、鋭く叫んだ。

 ポポロ村は、地底に存在するドンガン地下帝国と友好条約を結んでいる。

 しかし、このバケモノは明らかに制御を失い、暴走している状態だった。赤いセンサーの瞳を不気味に明滅させ、ギギギギ……と耳障りな金属音を鳴らしている。

「どうして、地下帝国の兵器が地上に……!?」

「ポポロ村の豊かな大地が原因かもしれません! この村で栽培されている陽薬草や月見大根は、膨大な魔力エネルギーを秘めています。暴走したあの機械は、そのエネルギーを求めて地中を喰い破ってきたんです!」

 キャルルの説明を聞き、私はギリッと奥歯を噛み締めた。

 私たちの育てた畑。社員たちが汗水垂らして耕した、豊かなホワイト領地。

 それを、こんな鉄クズのバケモノに食い荒らさせるわけにはいかない。

「ギイィィィィィィンッ!!!」

 死甲虫機デス・スタッグ・ビートルが、天に向かって甲高い駆動音の咆哮を上げた。

 そして、狙いを定めるように、逃げ遅れて腰を抜かしているドン吉たちへと、巨大な鋼鉄の大顎を向けて突進を開始した。

「いけねぇ……! 喰われるだべぇっ!!」

 ドン吉が、絶望して目を閉じる。

 しかし。

 その鋼鉄の大顎が、彼らの体を両断するよりも、遥かに速く。

 ――ガァァァァンッッ!!!

 鼓膜をつんざくような轟音。

 ドン吉たちの目の前で、巨大な死甲虫機の突進が、見えない壁にぶつかったようにピタリと停止した。

「……他人の畑を、勝手に荒らさないでもらえますか」

 土埃が晴れたそこに立っていたのは。

 エプロン姿のまま、抜刀した『オリハルコン・ソード』一本で、数十トンはある鋼鉄のバケモノの突進を真正面から受け止めている、我らが最強の騎士だった。

「ユリウスの兄ちゃん……!!」

 ユリウスの腕の筋肉が隆起し、剣身から青白い絶対零度の冷気が溢れ出す。

 彼は、一切の後退を許さず、重戦車のような死甲虫機を力ずくで押し留めていた。

「皆さん、今のうちに下がって! レティシアさん、避難の指示を!」

「分かってるわ! 自警団のマンミアを呼んで! 村人たちを安全な場所へ誘導するのよ!」

 私が社長(指揮官)として即座に指示を飛ばすと、村人たちは我に返り、一斉に避難を開始した。

「ユリウスさん! 私も加勢します!」

 キャルルが、足元の土を爆発的に蹴り飛ばし、ユリウスの隣へと並び立った。

 彼女の足元――タローマンで買った特注の安全靴が、凄まじい闘気を纏って紫電のような光を放ち始める。

「あれは機械のバケモノです! 並の打撃や斬撃は、あの重装甲に弾かれます!」

「分かりました! なら、装甲の隙間を狙うか、中身ごと凍らせるしかありませんね!」

 ユリウスとキャルル。

 最強の剣士と、最強の武闘派姫。

「私たちが作った美味しいご飯の邪魔をする鉄クズは……ここでスクラップにしてあげます!!」

 キャルルが好戦的な笑みを浮かべ、ユリウスが静かに闘気を研ぎ澄ます。

 ポポロ村の豊かな大地を舞台に、予期せぬ古代兵器との総力戦が、今まさに火蓋を切ろうとしていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第5章の第8話、いかがでしたでしょうか。

前半は、泥まみれになって畑を耕すユリウスと、彼を巡るレティシア&キャルルの熱い恋の挟み撃ち(バチバチの同調)をお届けしました。

「耕さないとご飯食べれないからね」というユリウスの純粋な一言。誰にでも優しい彼だからこそ、ヒロインたちはますます惹かれてしまいますね。

しかし、そんな平和な日常を切り裂き、地中から突如現れたのはドンガン地下帝国の古代兵器『死甲虫機デス・スタッグ・ビートル』!

ポポロ村の豊かな作物の魔力エネルギーを求めて暴走してきた鋼鉄の厄災です。

逃げ遅れたドン吉たちを間一髪で救い、重戦車の突進を剣一本で受け止めるユリウス。エプロン姿のままの最強騎士、頼もしすぎます!

次回、第9話!

いよいよ戦闘開始! キャルルの必殺格闘術『顎砕き』と、ユリウスの『フリーズ』が完璧な連携を見せます。

しかし、戦闘の直後、ユリウスが一番に心配したのは……?

強すぎるがゆえにヒロイン扱いされないキャルルの、切なくも可愛いヤキモチが爆発します!

「ラブコメからの急展開!」「ユリウスの背中かっこいい!」「死甲虫機、デザイン強そう!」とワクワクしていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、毎日更新を続けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。