【裸の女子会】サウナで勃発! 誰にでも優しい最強騎士への愛の品評会』
【裸の女子会】サウナで勃発! 誰にでも優しい最強騎士への愛の品評会』
ポポロ村に建設された、ヒノキの香りが漂う広々とした大浴場。
その一角にある、熱気で満たされたサウナ室の中で、女たちの無言の戦いが繰り広げられていた。
「……ふぅ。いい汗かいてきましたね、レティシア社長」
サウナの熱気の中、バスタオルを一枚だけ巻いた姿で、キャルルが挑発的な笑みを浮かべた。
月兎族である彼女の肌は、熱気にあてられてほんのりと桜色に染まっている。日頃から飛び蹴り(安全靴)で鍛え上げられたしなやかな筋肉と、女性らしい柔らかな曲線が見事に調和した、まさに『わがままボディ』だ。
「ええ、そうね。デスクワークばかりだと体が鈍るから、こういうデトックスは大切よ」
私は、キャルルの視線を真っ向から受け止め、長い髪をかき上げた。
私とて、前世の社畜時代から体調管理とプロポーションの維持には気を遣ってきたのだ。過労死したとはいえ、美への執着は捨てていない。大人の女性としての洗練されたラインなら、王族の姫君にも決して引けは取らないはずだ。
ジリジリと、私とキャルルの間で「女としての魅力」を競う見えない火花が散る。
「あらあら。若いっていいわねぇ。無駄に張り合っちゃって」
そんな私たちの間を割るように、一段高いベンチに座っていたクロエが、艶やかなため息を吐いた。
バスタオル越しでも隠しきれない、圧倒的で豊満な大人の色気。水滴が滴る真紅の髪と、妖艶な微笑み。
その完成されすぎた『美とプロポーション』を前に、私とキャルルは無言で敗北を悟るしかなかった。
「……もきゅ。サウナの後は、絶対にタローソンで冷たいフルーツ牛乳を飲むですぅ……」
一番下の段では、見習い女神のリリスが、幼児体型を丸めて干からびたスライムのように伸びていた。
「で? 仕事のパートナーとしては完璧な二人が、わざわざサウナで睨み合ってる理由はなんなのよ。……まあ、聞かなくても分かってるけど」
クロエが、呆れたようにクスッと笑う。
その言葉を合図にしたかのように、キャルルが姿勢を正し、少しだけ頬を赤く染めながら口を開いた。
「……ユリウスさんは、本当に素敵ですね♡」
「っ!」
名前が出た瞬間、私の肩がピクリと反応した。
「私、村長として赴任して日が浅いのに、ユリウスさんはとっても優しくしてくれました。今朝も、私が作ったお弁当を『すごく美味しそうだ』って褒めてくれたんですよ? あの飾り気のない純粋な瞳で見つめられると、胸がドキドキして……もう、たまりませんっ♡」
キャルルは、両手を頬に当てて身悶えした。
朝の「皆で食べましょう」という見事なフラグクラッシュは棚に上げ、都合の良い部分だけを切り取ってマウントを取ろうという魂胆だ。
「……はぁ。言っておくけどね、キャルル」
私は、わざとらしく大きなため息をついて見せた。
「ユリウスは、貴女だけじゃなく、村の『皆』に優しいのよ。彼の優しさは、特定の一人に向けられた下心なんかじゃない。……困っている人がいれば、誰にでも等しく手を差し伸べる、生粋の『博愛騎士』なんだから」
「ふふん、強がりはおやめなさいレティシア社長。あんなに素敵で力強い方が、私のような可愛い女の子のアピールに全くなびかないはずがありません! あれは絶対、私に特別な感情を抱き始めている証拠です!」
「だから、違うって言ってるでしょ! このポジティブバニー!」
私たちがバチバチと言い争っていると、干からびかけていたリリスが、むくりと顔を上げた。
「そう言えば、こないだルナキンで『ルナキンスペシャルパフェ』を食べて、私がお財布を天界に忘れてきちゃった時……ユリウスさんが『僕が払っておきますよ』って、お小遣いから払ってくれたですぅ♡ ユリウスさん、私に気があるのかもしれませんっ!」
「あんたねぇ……」
リリスのアホすぎる発言に、私とキャルルの口から同時にツッコミが漏れた。
ただの無銭飲食の尻拭いをされただけじゃないか。
「まあ、リリスのパフェ代の件はただの善意でしょうけど。……でも、確かにあの子の純粋さには、時々毒気を抜かれるわね」
クロエが、サウナの熱気で火照った頬を手の甲で冷やしながら、少しだけ懐かしむような優しい顔をした。
「この間、私が商会の深夜の帳簿整理で疲れて、執務室で肩を回していたらね。ユリウスがコーヒーを淹れてきてくれたのよ。……それだけじゃなくて、チラシの裏に手書きで作った『肩叩き券』を渡してくれたの」
「えっ?」
「ふふっ。大の大人が、まるで母親を手伝う子供みたいに『肩叩き券』よ? 思わず声を出して笑っちゃったわ。……でも、そういう不器用で、見返りを全く求めない底抜けの優しさが、彼の最大の魅力なのよね」
クロエの言葉に、サウナ室がふっと温かい静寂に包まれた。
リリスのパフェ代を払い、クロエに肩叩き券を渡し、キャルルのお弁当を純粋に喜ぶ。
そして私には、どんな理不尽な暴力からも盾となって守ってくれるという、究極の安心感を与えてくれる。
彼は、誰かを「自分のもの」にしようとして優しくしているわけではない。
ただ、自分の手の届く範囲にいる人たちが、笑顔でいてくれることが一番嬉しいのだ。その究極の利他主義(博愛の精神)こそが、彼が神域の力を引き出せる源泉であり、私たちが彼に惹きつけられてやまない理由だった。
「……なるほど。よく分かりました」
キャルルが、ギュッと両手を握りしめた。
彼女の銀色の瞳には、もう先ほどのようなフワフワとした乙女の夢見がちな光はなかった。
代わりに燃え上がっていたのは、欲しいものは何としてでも手に入れるという、王族特有の苛烈な『ヤンデレ気質』だ。
「ユリウスさんが、誰にでも優しい素晴らしい方だということは認めましょう。……ですが! だからこそ、私は彼の一番になりたいんです!」
キャルルが、バッと私の方を向き、真っ向から宣戦布告をした。
「誰にでも優しい彼に、私だけを特別だと言わせてみせます。……私、絶対に負けませんからね、レティシア社長!」
「……上等じゃない」
私は、サウナの熱気で汗ばんだ顔に、不敵な笑みを浮かべた。
誰にでも優しい彼だからこそ、私は彼を独占して束縛するような真似はしたくない。社長として、対等なパートナーとして、彼の気高さを一番近くで支えてみせる。
「私だって! 勝負よ、キャルル村長!」
バチバチバチッ!!
サウナ室の温度をさらに十度は引き上げるような、女たちの熱い闘志の火花が激しくぶつかり合った。
「あーあ。こりゃ当分、うちの騎士様は休まる暇がないわね」
「もきゅ……のぼせましたぁ……フルーツ牛乳……」
クロエが呆れ笑いを浮かべ、リリスが目を回して倒れ込む中、私とキャルルの視線はどこまでも熱く絡み合っていた。
* * *
「……くしゅんっ!」
同じ頃。
ルナキン・ポポロ支店のキッチンで、明日の朝食用の仕込みをしていたユリウスが、突然大きなくしゃみをした。
「おや? 風邪でしょうか。……いけませんね、明日は皆さんに美味しい朝ごはんを作らないといけないのに。しっかり暖かくして寝ないと」
ユリウスは、見えない犬耳を少しだけ下げて首を傾げた。
自分が今、女子たちの間で熱烈な『愛の品評会』の対象になり、村のトップ二人からバチバチに狙われていることなど、露ほども知らない。
彼は、仕込みを終えたニンニクと豚肉の入ったボウルにラップをかけると、明日も皆が笑顔になってくれることを想像して、ふにゃりと幸せそうに微笑んだのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
第5章の第6話、いかがでしたでしょうか。
女性読者の皆様、お待たせいたしました! 【裸の女子会】サウナでのラブコメ回です!
キャルルのスタイルマウントから始まり、話題は自然と「ユリウスへの愛の品評会」へ。
キャルルがお弁当の件でマウントを取ろうとしますが、レティシアが「彼は皆に優しいのよ」と牽制。
そこにリリスの「パフェ代肩代わり」と、クロエの「手書きの肩叩き券」というエピソードが投下されます。クロエに肩叩き券を渡すユリウス、まるでオカンを手伝う大型犬みたいで可愛すぎますね(笑)。
誰にでも見返りを求めず優しくする。その「底抜けの博愛主義」こそが彼の魅力。
それを理解した上で、「だからこそ私だけを特別だと言わせる!」とヤンデレ気質を燃やすキャルルと、「対等なパートナーとして支える!」と真っ向から受けて立つレティシア。
サウナの熱気以上の火花が散る、最高の女子バトルとなりました。
当のユリウスは、くしゃみをしながら明日の仕込み(ご飯のこと)を考えているという平和すぎるオチです。
次回、第7話!
サウナで女子たちが火花を散らしている裏で、ニート農民たちの心が激しく揺さぶられます。
翌朝、彼らが見たのは、誰よりも早く畑に出て泥まみれで土を耕す「最強騎士」の姿だった!
「クロエ姐さん優勝!」「肩叩き券可愛すぎる!」「ユリウス逃げて!(笑)」と楽しんでいただけましたら、
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