↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/73

「パンがなければお菓子を!」ポンコツ女神の迷言と、有能社長のえげつない社内改革』

「パンがなければお菓子を!」ポンコツ女神の迷言と、有能社長のえげつない社内改革

 ルナキン・ポポロ支店の執務室。

 ニート化した農民たちの騒動から数時間が経過し、私は大きなため息をつきながら【経費精算】のパネルを睨みつけていた。

 問題は深刻だった。

 莫大な利益を村人に還元した結果、村の農民の約三割が「もう働かなくていい」とふんぞり返り、完全なニートと化してしまったのだ。

 真面目に働いている泥沼源蔵たちへの負担は跳ね上がり、収穫期の『月見大根』や『太陽芋』の収穫量がガタ落ちしている。

 このままでは、村の特産品の出荷が滞るだけでなく、村内での食料自給率にも影響が出かねない。

「……最悪ね。お金があるからって、誰も働かなくなったら、そもそもお金で買う『商品』自体が世の中から消えちゃうっていうのに」

 私はこめかみを揉みながら呟いた。

 金はあくまで価値を交換するツールでしかない。農家が畑を耕し、パン屋がパンを焼くからこそ、金に価値が生まれるのだ。全員が消費者ニートに回れば、経済はあっという間に崩壊する。

「う〜ん、難しいことはよく分かりませんけどぉ」

 執務室のソファで、見習い女神のリリスが、タローマートで買ってきた『ハニーかぼちゃのタルト』を頬張りながら呑気な声を上げた。

「大根やお芋がないなら、他から買えばいいじゃないですかぁ。それに、もしパンがなければ、お菓子を食えばいいんですぅ! タローマートのスイーツ、最高ですからね!」

 ――ピタッ。

 執務室の空気が、見事に凍りついた。

「……ちょっと、あんた」

 隣で帳簿をつけていたクロエが、パチンと扇子を閉じ、リリスの背後にスッと立ち塞がった。

 そして、両手でリリスのモチモチした頬っぺたをガシッと掴む。

「ふぎゃっ!?」

「どこのフランス王妃よ! あんたは!」

 ギリギリギリッ!!と、クロエが容赦なくリリスの頬を横に引っ張る。

「イデデデデッ! 伸びますぅ! 神格公務員の美肌が伸びちゃいますぅ!!」

「あのねぇ、お菓子を作るのにも小麦や卵、砂糖が必要なの! 農家が働かなくなったら、そのお菓子すら作れなくなるってことが分からないの、このポンコツ女神!」

「ひぐぅ……! ご、ごめんなさいぃ……私、ちゃんと働きますよぉぉぉっ!!」

 涙目でバタバタと暴れるリリスを放り投げ、クロエは「やれやれ」と肩をすくめて私の席へと歩いてきた。

「冗談はさておき、レティシア。リリスのアホな発言にも一理あるわ。……金があるから王都から美味いものを取り寄せればいいって、あの馬鹿な農民たちも言っていたでしょう?」

「ええ。確かに、外部から食料を輸入することは可能よ。でも、そんなことを続ければ、あっという間に村の資金は底を尽くわ」

 私はパネルを閉じ、腕を組んだ。

「それに……これは単純な経済の問題じゃない。労働の尊さ、つまり『誰かのために汗を流して作るご飯のありがたみ』を忘れてしまった彼らの心を、どうやって更生させるかという問題よ」

「武力(暴力)は使わないって言っていたわね。……なら、どうするの? お金の力に溺れた連中から、どうやってプライドをへし折るつもり?」

 クロエが、面白そうに目を細めて聞いてくる。

 私は、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。

「簡単よ。彼らのお金を『無価値』にしてしまえばいいの」

「無価値?」

「ポポロ村の流通とインフラは、現在完全に私――社長であるレティシアの管理下にあるわ。タローソン、タローマート、ルナキン・ポポロ支店。そして村の社員食堂から配給される『バフ飯』に至るまで、全てが私の【福利厚生】のシステムの上で成り立っている」

 私は再び【経費精算】のパネルを空中に展開し、村の行政システムの権限設定画面を開いた。

「金を手にして腐るなら、社長として彼らに再教育リストラが必要ね。……これより、ポポロ村における『特別社内ルール(完全成果主義)』を適用するわ」

 私は、ニート農民たちの名前をリストアップし、彼らのIDにチェックを入れていく。

「真面目に働いている社員(村人)には、今まで通り、タローグループでの社割(優待価格)と、バフ飯の無償提供を継続するわ。……でも、正当な理由なく労働を放棄した者――つまりあのニートたちには、これらの『福利厚生』を一切停止する」

「……なるほど。タローマートでの買い物を禁止するってこと?」

 クロエの問いに、私はニヤリと笑って首を振った。

「禁止はしないわ。売ってはあげる。……ただし、『ニート特別価格』でね。通常価格の百倍よ」

「ひゃ、百倍!?」

 頬を擦りながら聞いていたリリスが、目を丸くして叫んだ。

「そう。タローソンのおにぎり一個が、金貨五枚。ルナキンでのステーキ定食が、金貨五十枚。……外部からの輸入業者にも、クロエの商会ルートで圧力をかけて、ポポロ村の特定の個人ニートには超高額でしか取引しないように取り決めを結んでもらうわ」

「ふふっ……えげつないわね。さすがはうちの社長様」

 クロエが、心底楽しそうに扇子で口元を隠した。

「お金があっても、おにぎり一個買うのに大金が飛んでいく。……いくら特別ボーナスで懐が潤っているとはいえ、そんな生活を続ければ、数日で破産するでしょうね」

「ええ。それに、村の食堂で出される『手作りの温かいバフ飯』は、お金では買えないようにするわ。彼らがいくら金を積もうと、汗を流して働かない限り、美味しいご飯は一口も食べさせない」

 これが、有能社長による『究極の兵糧攻め』だ。

 労働の価値を忘れ、金を万能だと思い込んだ成金たちに、「金があっても食べ物が手に入らない」という恐怖とひもじさを骨の髄まで味わわせる。

「……失礼します。レティシア社長」

 その時、執務室のドアが開き、月兎族の姫君にして村長であるキャルルが入ってきた。

 彼女は私の提示したパネルの設定画面を一瞥すると、感心したように小さく息を吐いた。

「なるほど……。武力ではなく、流通と福利厚生を統制することで彼らの首を絞める。見事な政治的(経済的)制裁です。村長である私からも、この『特別社内ルール』の施行を承認いたします」

「ありがとう、キャルル。……行政トップのお墨付きがあれば、文句は言わせないわ」

 キャルルはフッと微笑むと、私の元に歩み寄り、小声で囁いた。

「仕事(経営)においては、レティシア社長の手腕、心から尊敬いたします。……ですが、これはこれ、それはそれです」

「……どういうこと?」

「ユリウスさんのことですっ♡」

 キャルルは、顔をほんのりと赤く染め、乙女の表情に切り替わった。

「私、村長としての仕事の合間に、ユリウスさんに最高に美味しい『特製人参お弁当』を作って差し入れるつもりですから! レティシア社長より先に、彼の胃袋を掴んでみせます!」

「……っ」

 このウサギ姫、まだ言うか。

 彼が誰にでも分け隔てなく優しいことに気づかず、完全に自分への好意だと暴走している。

「あら、そう。勝手にすれば? ユリウスは人参が好きみたいだけど、彼、私の作る『シープピッグのニンニクアブラ飯』には目がないのよ。……お洒落なお弁当なんて、育ち盛りの騎士には物足りないんじゃないかしら」

「くっ……! カロリーと暴力的な旨味で勝負する気ですか……! 負けませんからね!」

「私だって! 勝負よ!」

 バチバチバチッ!!

 再び、私とキャルルの間に激しい火花が散る。

「あーあ。仕事の息はピッタリなのに、恋となるとどっちも引かないわね」

「ルナキンのパフェ、美味しいですぅ……もきゅもきゅ」

 クロエが呆れ顔でため息をつき、リリスが能天気にスイーツを頬張っていた。

     * * *

 そして、翌日の昼。

 ポポロ村の『社内改革』は、情け容赦なく実行に移された。

「な、なんだべこれはぁぁっ!!?」

 タローマートのレジ前で、ニート農民の一人が、ひっくり返ったような悲鳴を上げていた。

 彼がカゴに入れた高級ツマミと酒。普段なら銀貨数枚で買えるはずのそれが、レジの魔導パネルには『金貨二十枚』という法外な数字が表示されていたのだ。

「ぼ、ぼったくりだべ! 昨日はこんな値段じゃなかっただろ!」

「申し訳ありません、お客様」

 レジを担当していた村人のパートのおばちゃんが、冷ややかにマニュアル通りの対応をする。

「レティシア社長の決定により、本日より『労働実績のない村人』への販売価格は、特別レート(百倍)が適用されております。……買わないのでしたら、お引き取りくださいね」

「そ、そんな……っ! 俺たちは金持ちなんだぞ! ルナキンに行って美味いもんを食ってやるべ!」

 ニート農民たちはタローマートを飛び出し、ルナキン・ポポロ支店へと駆け込んだ。

 しかし。

 ルナキンの入り口には、『非労働者の入店お断り』という非情な立て札が立てられ、屈強な自警団のオークが腕を組んで立ち塞がっていた。

「くそっ! なら、村の食堂に行ってタダ飯を食ってやる!」

 彼らが最後の望みを託して社員食堂に駆け込むと、そこには美味しそうな『肉厚シープピッグの特製カツサンド』が山積みになっていた。

 しかし、その前には、笑顔のユリウスがエプロン姿で立っていたのだ。

「あ、皆さんお疲れ様です! ご飯ですか?」

「お、おう! ユリウスの兄ちゃん、それ俺たちにも食わせてくれだ!」

「はい、もちろんですよ!」

 ユリウスは満面の笑みで頷いた後、一つの条件を提示した。

「でも、レティシアさんから言われているんです。『今日畑でクワを振るった人から順番に渡してね』って。……皆さんは、今日はどの畑を耕してきたんですか?」

「うっ……」

 ユリウスの、悪意の欠片もない純粋な瞳。

 一切の嫌味なく発せられたその言葉に、ニート農民たちはグサリと胸を刺されたように言葉を詰まらせた。

「俺たちは……その……」

 金はある。しかし、美味い飯は食えない。

 そして何より、泥まみれになって誰かのために働く者の『尊さ』を、彼らは肌で感じ始めていた。

 有能社長による、愛のムチ(究極の兵糧攻め)。

 成金ニートたちの心が、徐々に、しかし確実に折れようとしていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第5章の第3話、いかがでしたでしょうか。

村の食糧危機を危惧するレティシアの前で、ポンコツ女神リリスの迷言が飛び出しました!

「パンがなければ、お菓子を食えばいいんですぅ!」

すかさずクロエの物理ツッコミ(頬つねり)が炸裂し、「どこのフランス王妃よ!」と名ツッコミが飛び出しました(笑)。

そして、レティシア社長による『究極の兵糧攻め(リストラ)』が開始されます!

武力は使わず、「福利厚生の停止」と「超高額な特別レート」を設定し、働かない者には金があっても飯を食わせないというシビアな社内改革。

キャルル村長もその手腕を認めますが、ユリウスを巡る勝負では「特製人参お弁当」でレティシアに宣戦布告!

「ニンニクアブラ飯」で迎え撃つレティシア、ラブコメ大戦争もヒートアップしています!

後半では、見事に兵糧攻めに遭うニート農民たち。タローマートでもルナキンでも門前払いされ、最後はユリウスの純粋な「どの畑を耕してきたんですか?」という言葉に心をえぐられます。

次回、第4話!

キャルルがユリウスに猛アピールを開始します! 手作りの人参お弁当を持参し、ボディタッチも試みますが……!?

誰にでも優しい彼(ヒーローの本質)の前に、恋愛フラグが綺麗にへし折られる爆笑&胸キュン展開です!

「リリスのアホ可愛さ最高!」「レティシアえげつない(褒め言葉)」「ユリウスの純粋な一撃が一番効く(笑)」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、毎日更新を続けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。