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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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『第5章:成金ニートと恋する月兎族〜誰にでも優しい聖騎士を巡る、有能社長と武闘派村長のラブコメ大戦争!〜』

魔導ロールスロイスで帰ってきたクズ前村長と、一秒で恋に落ちる飛び蹴り姫

 迷惑系勇者ゼロスによる炎上騒動から数週間。

 ポポロ村には、かつてないほどの平和と、そして莫大な『富』がもたらされていた。

「レティシアさーん! 天界のホーリー・アームズ社から、今月の月見大根の代金が振り込まれましたぁ! 市場価格の三倍で、一括払いですぅ!」

 ルナキン・ポポロ支店のテラス席。

 見習い女神のリリスが、エンジェルすまーとふぉんの画面を見せながら嬉しそうに報告してくる。

「ええ、確認したわ。クロエの商会経由のポポロシガーの売上も絶好調だし、村の財政は過去最高の超・黒字よ!」

 私は空中に展開した【経費精算】のパネルを操作し、今月の役員報酬と、村人たちへの特別ボーナスの振り分けを行っていた。

 ゼロスの一件で、天界のトップ企業と結んだ『独占販売契約』。彼らは炎上の飛び火を恐れるあまり、私たちが提示した法外な条件を全て呑んだ。結果、ポポロ村の特産品はバカ売れし、村の金庫にはゴールドが入り切らないほどの利益が生み出されている。

「さーて、これで来月には村の広場に温泉施設でも作ろうかしら。社員の福利厚生は手厚く、が私のモットーだからね」

 私が上機嫌でコーヒーを飲もうとした、その時だった。

 ――ブォォォォォォンッ!!

 突如、のどかな村の広場に、腹の底に響くような重低音のエンジン音が鳴り響いた。

 何事かとテラスから身を乗り出すと、村の入り口から、一台の巨大な漆黒の車がゆっくりと入ってくるのが見えた。

「な、なんだあれ……?」

「四つの車輪で動く、鉄の箱……。ルナミス帝国でもあんなの見たことないわよ」

 私とクロエが目を丸くする。

 それは、流線型の美しいフォルムを持ち、フロントグリルには黄金のエンブレムが輝く、異世界には到底似つかわしくない超高級車――『魔導ロールスロイス』だった。

 キキッ、と音を立てて広場の中央に停まったロールスロイス。

 農家のおじさんたちや自警団のマンミアが警戒して取り囲む中、運転席のドアがガチャリと開いた。

「いや〜、やっぱり故郷の空気は最高じゃのう! ワッハッハ!」

 中から降りてきたのは、派手なアロハシャツを着て、頭には怪しげなサングラスを乗せた、耳の長い小柄な老人だった。

「……え?」

 私は自分の目を疑った。

「む、村長!? ロップ村長だべ!!」

「何しに帰ってきやがった、このクソウサギ!!」

 農民たちが、一斉にクワや鎌を突きつけて激怒する。

 そう、その老人こそ、かつてこの村の資金を全額持ち逃げし、魔族の貴婦人と『バックレラビリンス(愛の逃避行)』を強行した張本人――前村長のロップ(70歳)だったのだ。

「お前が公金を持ち逃げしたせいで、村はあわやブラック領地に転落するところだったんだぞ!」

「ワシらの血税を返しやがれ!」

 怒号が飛び交う中、ロップは明後日の方向を向きながら呑気に口笛を吹いた。

「ピューヒョロロ〜。ワシは知らん。何も知らんよ〜。若気の至りというやつじゃて」

「70歳のどこが若気の至りよ!!」

 私はテラスから飛び降りて、ロップの前に立ちはだかった。

 私がこの村の領主(社長)になったのも、元を正せばこのタヌキオヤジならぬウサギジジイが逃げたせいだ。

「ちょっと、前村長さん。今さら何の用よ。ここはもう、私が社長として買い取った私の領地なんだけど?」

 私がビシッと指を突きつけると、ロップはサングラスをずらし、私を鼻で笑った。

「レティシア? 誰だそれは。ワシはそんな契約書にサインした覚えはないぞ。……そもそも、ポポロ村は古くから『月兎族げっとぞく』が治めると掟で決まっておるのじゃ!」

「はぁ!?」

「分かったか! 一般ピーポー共め! よって、これからのポポロ村は、ワシの可愛い孫娘が決める! お前らは、これからもワシの悠々自適な年金生活のために、馬車馬のように働くのじゃ!」

 あまりのクズ発言に、広場中がドン引きの沈黙に包まれた。

 自分の不祥事は完全に棚に上げ、孫の権威を笠に着てふんぞり返る。前世のブラック企業によくいた「無能な天下り役員」の典型例だ。

「……おじいちゃん。あまり村の方々を困らせてはいけませんよ」

 その時。

 ロールスロイスの後部座席のドアが開き、鈴の転がるような、可愛らしくも凛とした声が響いた。

 降りてきたのは、透き通るような白い肌と、背中まで伸びた艶やかな銀髪を持つ、月兎族の少女だった。

 年齢は私と同じ二十歳くらいだろうか。服装は、動きやすい現代風のショートパンツとパーカーというラフな出で立ち。しかし、その足元には、タローマン(ホームセンター)で売っているような『特注の鉄板入り安全靴』がしっかりと履かれている。

「は、初めまして。キャルル・ムーンハートと申します。祖父がご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません」

 キャルルは、両手を前で揃え、非常に礼儀正しく、深いお辞儀をした。

 レオン・ハート獣人王国の第三姫君にして、近衛騎士隊長候補。その高貴なオーラと、誰にでも愛されるような「星の王子様」めいたピュアな笑顔に、怒っていた農民たちも思わず毒気を抜かれてしまう。

「あ、いや……可愛い孫娘さんに謝られちゃあ、俺たちもこれ以上は言えねぇべ」

「そうですか? 皆さん、お優しいのですね」

 キャルルがふわりと微笑む。

 すると、ちょうどその時。

「レティシアさん。皆さんの分の冷たいお茶を淹れてきましたよ!」

 大きなヤカンと紙コップの束を持ったユリウスが、パリッとしたエプロン姿でルナキンから出てきた。

 彼は広場の真ん中にいるキャルルを見ると、目を丸くして首を傾げた。

「おや? お客さんですか? 遠いところからようこそ」

 ユリウスは紙コップを置き、エプロンで自分の大きな右手をゴシゴシと拭いてから、キャルルに向かって無邪気な笑顔で手を差し出した。

「初めまして。僕はユリウスと言います。この村で、レティシアさんのお手伝い(ナイト)をしています。冷たいお茶、飲みますか?」

 その、裏表のない純度100%の優しい笑顔。

 キャルルは、差し出されたその大きな手を見つめ、少し戸惑いながらも自分の小さな手を重ねた。

「あ……ご丁寧に、ありがとうございます。キャルルで――」

 ――キャッチ。

 二人の手が握り合わされた、その瞬間だった。

 キャルルの銀色の瞳が、見開かれた。

 彼女の月兎族特有の長く鋭い耳が、ピクッと反応する。

 彼女には、生まれつき備わった『心音鑑識眼』があった。相手の心臓の鼓動(心音)を聞くことで、その人間が嘘をついているか、どんな本性を隠しているかを見抜くことができるのだ。

 (な、何、この手……!?)

 キャルルは、ユリウスの手のひらの感触に戦慄した。

 エプロン姿の優男に見える。だが、その手には、幼い頃から血を吐くような努力で鍛錬に鍛錬を重ねなければ絶対にできない、分厚く硬い『剣だこ』が刻まれていた。

 そして何より、彼から聞こえてくる『心音』。

 トクン……トクン……。

 それは、一点の濁りも、悪意も、下心もない。ただ誰かを守りたいという純粋な慈愛だけで満ちた、信じられないほど綺麗で、静かで、力強い鼓動だった。

 (この人……強い。嘘みたいに強くて、嘘みたいに優しい……!)

 王宮のドロドロとした権力闘争や、下心まみれの貴族たちばかりを見てきたキャルルにとって。

 ユリウスのその純粋さは、まるで暗闇に差し込む一筋の月光のように、彼女の心を一瞬で貫いた。

「え……?」

 ユリウスが、手を握ったまま固まっているキャルルを見て不思議そうに首を傾げる。

 その顔を見た瞬間。

 キャルルの脳内で、何かが決定的に弾けた。

 (……あ〜、もう。好きッ!!!)

 キャルルの頬が、一瞬にして林檎のように真っ赤に染まる。

 彼女の中に眠っていた、ヤンデレ気質と乙女のロマンチック回路が、想定外のレッドゾーンへと突入したのだ。

「おや、キャルル? どうしたのじゃ? さあ、そんな下働きのエプロン男の手など離して、村の連中にワシの偉大さを説教してやるのじゃ!」

 空気を全く読まないロップ村長が、横からしゃしゃり出てきてユリウスを指差す。

 その瞬間。

 キャルルの瞳の奥底に、凄まじい殺意の炎が灯った。

「……おじいちゃんは」

「ん? なんじゃ?」

「向こうに行ってて!!!」

 ――ヒュンッ!!

 キャルルの体が、コマのように鋭く回転した。

 特注の鉄板入り安全靴が空気を切り裂き、美しい弧を描く。

 月影流格闘術・『鐘打ち』。

 恐るべき威力のハイキックが、ロップ村長の顔面にクリーンヒットした。

「ぶべらぁぁぁぁぁぁっ!?」

 パコォォォォンッ!!という、ゴルフのドライバーでフルスイングしたような快音が響き渡る。

 ロップ村長の体は、文字通り弾丸のように上空へと打ち上げられ、キラーン☆と星の彼方へと消えていった。

「……えっ?」

「……へ?」

 突然の身内への飛び蹴りに、私や農家のおじさんたち、そしてユリウスまでもが口をポカンと開けて固まってしまう。

「ふぅ……失礼しました」

 キャルルは、何事もなかったかのようにパーカーの裾を払い、再びユリウスに向き直った。

 そして、顔を真っ赤にしてモジモジしながら、もう一度深くお辞儀をした。

「あ、あの……改めて。私、キャルルと言います! ユリウスさん……これから、よろしくお願いしますねっ♡」

 上目遣いで、ユリウスに熱っぽい視線を送るキャルル。

 そのあまりにも分かりやすい態度に、私はピクッとこめかみを引き攣らせた。

 (……ちょっと、このウサギ。まさか、うちの自慢の騎士ナイトを狙ってるの!?)

 平和と富を手に入れたポポロ村に、今度は新たな問題――最強騎士を巡る『ラブコメ大戦争』と、身内の怠慢という厄介な火種が、嵐のように巻き起こりつつあった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

いよいよ第5章の開幕です!

前章の重い展開から一転、今回はワチャワチャとしたラブコメ&日常コメディ全開でスタートしました!

村の資金を持ち逃げしたクズ前村長、ロップ(70歳)がまさかの魔導ロールスロイスで帰還。相変わらずのクズっぷりを発揮しますが、一緒に来た孫娘のキャルルがすべてを持っていきました(笑)。

ユリウスの「剣だこ」と「綺麗な心音」に触れた瞬間、一秒で恋に落ちるキャルル。

ヤンデレ気質が爆発し、邪魔をしたおじいちゃんを容赦ない回し蹴り(安全靴)で星の彼方へ吹っ飛ばすヒロイン、強烈すぎますね。

そして、それを見て静かに焦り(ヤキモチを焼き)始めるレティシア社長。

誰にでも優しい聖騎士のユリウスを巡る、有能社長と武闘派姫のバチバチの三角関係が幕を開けました!

次回、第2話!

潤沢な資金を手に入れたポポロ村で、ついに恐れていた「成金病(ニート化)」が発生! 働き者とニートの対立に、レティシア社長が頭を抱えます。

「キャルルの飛び蹴り最高!」「おじいちゃん自業自得(笑)」「レティシア負けるな!」とニヤニヤしていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、第5章を走り抜けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

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