最強騎士の盾と有能社長の知略。世界一ホワイトで無敵のパートナーシップ
最強騎士の盾と有能社長の知略。世界一ホワイトで無敵のパートナーシップ
「ひ、ひぃぃぃ……っ! やめろ、俺に触るな! 俺は神に選ばれし勇者様だぞぉぉぉっ!!」
ポポロ村の広場に、下着一枚の姿でへたり込んだゼロスの無様な悲鳴が響き渡っていた。
彼の周囲を囲んでいるのは、クロエが手配した『ゴルド商会・債権回収部門』の屈強なオークやドワーフたちだ。彼らは冷ややかな目で、かつての迷惑系勇者を見下ろしている。
「勇者? ……いいえ、今のあなたはただの『多重債務者』よ」
真紅の髪を揺らし、クロエが優雅に歩み寄る。
彼女の手には、分厚い羊皮紙の束――スポンサー企業からの『契約解除通知』と『損害賠償請求書』が握られていた。
「天界の各企業への違約金。配信のヤラセによる詐欺の賠償金。それに、全財産を突っ込んだあの成金ブーストの魔法、うちの商会が発行した魔導キャッシング(借金)枠まで限界まで使っていたわね。……ざっと計算して、総額『五十億ゴールド』ってところかしら」
「ご、五十億……っ!?」
天文学的な数字に、ゼロスは白目を剥いて泡を吹きそうになる。
「というわけで、あなたと取り巻きの皆さんは、うちの商会直属の『ドンガン地下帝国のマグマ採掘場』へ出向してもらうわ。……安心しなさい、労働基準法ギリギリのシフトで、百五十年くらい真面目に働けば完済できる計算よ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ! 許してくれぇぇぇぇっ!!」
泣き喚くゼロスと取り巻きたちは、屈強なオークたちに両脇を抱えられ、ドナドナと回収馬車へ押し込まれていく。
他人の生活を踏みにじり、炎上で金と承認欲求を満たしていた迷惑系インフルエンサー。社会のコンプライアンスを舐め腐った男の、あまりにも惨めで自業自得な末路だった。
「……特別監査(コンプライアンス調査)、これにて一件落着ね」
私は、遠ざかっていく馬車を見送った後、パンッ!と両手を叩いて広場を振り返った。
「皆、お疲れ様! 倉庫は全焼しちゃったけど、再建費用や失われた野菜の補填は、天界の企業から巻き上げた『独占契約の利益』で十分すぎるほどお釣りが来るわ! 明日からまた、バリバリ稼いでしっかり休む、最高のホワイト村に戻るわよ!」
「「「うおおおおおっ! レティシア社長バンザイ!!」」」
村人たちから、割れんばかりの歓声が上がる。
マンミアたち自警団が互いの肩を叩き合い、農家のおじさんたちも安堵の涙を流して喜んでいた。
「えへへぇ〜! 私のはっかー技術、すごかったですよね! レティシアさん、もっと褒めてくださいぃ!」
「ええ、本当に大活躍だったわ。ありがとう、リリス」
私がポンコツ女神の頭を撫でてやると、彼女はふにゃ〜っととろけたような顔になる。
その足元では、今回の最大の功労者(?)である『ネタキャベツ』が、コロコロと転がりながら「コンプライアンスイハ〜ン!」と鳴いていた。
物理的な暴力だけでは、今回の危機は乗り越えられなかった。
村人たちの絆と、クロエの交渉術、リリスの技術、そして私のリスクマネジメント。全員の力が噛み合ったからこそ、私たちはこの理不尽な悪意を完全に弾き返すことができたのだ。
* * *
その日の夜。
宴会騒ぎで盛り上がる広場から少し離れた、ルナキン・ポポロ支店のテラス席。
私は一人、夜風に吹かれながら、空中に展開した【経費精算】のパネルで明日のシフト表の調整を行っていた。
「レティシアさん。お疲れ様です」
ふわりと、甘く温かい香りが漂ってくる。
顔を上げると、綺麗に洗濯されたエプロンを身につけたユリウスが、お盆を持って微笑んでいた。
「ユリウス。……どうしたの?」
「夜も遅いですから、コーヒーじゃなくて『ホットミルク』と、僕が焼いた『太陽芋の特製クッキー』です。……少し、休憩しませんか?」
彼がそっとマグカップを私の前に置く。
私はパネルを閉じ、温かいマグカップを両手で包み込んだ。
ゼロスに泥まみれにされ、ボロボロになっていた彼の顔の傷は、リリスの回復魔法ですでに綺麗に治っている。
「ありがとう。……いただきます」
ホットミルクを一口飲むと、じんわりとした甘さが、張り詰めていた神経を優しく解きほぐしていった。
ユリウスは向かいの席に座ると、少しだけ真剣な表情になり、私の目を真っ直ぐに見つめた。
「レティシアさん。……本当に、ありがとうございました」
「え?」
「もしレティシアさんがいなかったら。僕はあのまま……村の皆を守るために、自分が『魔王』の汚名を被って、世界中からやってくる討伐隊と、一人で戦い続けるしかなかったと思います」
ユリウスの声は静かだったが、そこには嘘偽りのない本音が含まれていた。
彼の実力なら、世界中を敵に回しても戦い抜くことができただろう。でもそれは、どこまでも孤独で、悲しい戦いになったはずだ。
「レティシアさんが、僕のために怒ってくれて。僕が戦えない場所で、僕を守ってくれた。……それが、すごく嬉しかったんです」
ユリウスが、見えない犬耳を少し垂れ下げながら、照れくさそうに笑う。
その真っ直ぐすぎる感謝の言葉に、私は胸の奥がキュンと締め付けられるのを感じた。
「……馬鹿ね。お礼を言うのは私の方よ」
私はマグカップを置き、テーブル越しに彼のごつくて大きな右手を、両手でそっと握りしめた。
「レティシア、さん?」
「あなたが、理不尽な暴力に一人で耐えて、時間を稼いでくれたから。私の監査網(情報戦)が完成したの。……あなたが物理的な盾になってくれなかったら、村はとっくに火の海になっていたわ」
私は、彼の氷色に澄んだ瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。
「ねえ、ユリウス。……私は、あなたを『俺の女だから』って所有物みたいに扱うような男にはなってほしくない」
「えっ……? そ、そんなこと、僕は絶対に思いません!」
「分かってるわ。あなたは、誰にでも優しくて、誰かのために本気で怒れる、世界一優しくて気高い騎士よ。……私は、あなたのその『究極の騎士道』が、心の底から大好きなの」
私の言葉に、ユリウスの顔がボンッ!と音を立てて真っ赤に染まった。
「だから……約束して」
私は、彼の手をもう一度、強く握った。
「あなたが剣で防げない、社会的な悪意や理不尽なシステムは……社長が、私の知略で全部防いで、ぶっ壊してあげる」
「レティシアさん……」
「あなたは私が守る。私はあなたが守る。……だからあなたは、これからもずっと安心して、あなたの信じる『優しさ』を貫きなさい」
私がそう告げると。
ユリウスは、驚いたように目を丸くした後……やがて、見えない犬耳と尻尾をパタパタと勢いよく揺らして、心底幸せそうな、ふにゃりとした笑顔を浮かべた。
「はいっ! ……僕、これからもずっと、レティシアさんの……皆の『最高のナイト』でいられるように、頑張ります!」
彼の手から伝わる温もりが、私の心に、前世では決して得られなかった絶対的な『安心感』をもたらしてくれた。
自分の名声のために他人を傷つける偽勇者は、もういない。
私には、彼がいる。クロエがいて、リリスがいて、村の皆がいる。
「さて。明日からはまた、忙しくなるわよ!」
「はい! 朝ごはんは、特盛りのベーコンエッグを焼いておきますね!」
月明かりの下、私たちは顔を見合わせて笑い合った。
ここは、ブラックな過去を捨てた私たちが作り上げた、世界一ホワイトな辺境の村。
最強の盾と、最強の知略。
互いの背中を完全に預け合える、無敵のパートナーシップを手に入れた私たちの『ホワイトな日常』は、これからもどこまでも痛快に続いていくのだ。
(第4章・完)
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
第4章『偽勇者の炎上配信と絶対零度の魔王』編、これにて無事に完結です!
ヤラセで世界を欺いていた迷惑系勇者ゼロスは、クロエの手によって数億ゴールドの借金を背負い、ドワーフの地下帝国(マグマ採掘場)へとドナドナされていきました(笑)。社会のコンプライアンスを舐めた当然の報いですね!
そして、月明かりのテラスでのエピローグ。
「レティシアさんがいなかったら、僕は本当に世界の敵になっていた」と感謝するユリウスに対し、レティシアは「物理的な脅威はあなたが、社会的な悪意は私が防ぐ」と宣言します。
ユリウスの優しさを誰よりも肯定し、彼を社会的に守り抜くことを誓うレティシア。ヒロインがただ守られるだけでなく、互いの強さを補い合う「対等で最強のパートナーシップ」が完成しました!
【読者の皆様へのお願い】
ここまで読んで「ゼロスの末路スカッとした!」「女子チーム最強!」「レティシアとユリウスの絆にキュンとした!」と少しでも楽しんでいただけましたら、
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皆様からいただく【ブックマーク】と【星評価(MAX)】が、この物語の「第5章」を執筆するための最高の【福利厚生】となります!
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第4章、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!




