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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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あなたは一人じゃない。ホワイト村女子チームの『特別監査』開始!

あなたは一人じゃない。ホワイト村女子チームの『特別監査』開始!

 翌朝。

 ポポロ村の広場には、ゴッドチューブの人気配信者(偽勇者)ゼロスが勝手に設営した、けばけばしい装飾の巨大テントが鎮座していた。

「……レティシアさん。行ってきますね」

 ルナキン・ポポロ支店の裏口。

 普段はパリッとしたエプロンをつけているユリウスが、今日はあえて薄汚れた粗末な服を着ていた。ゼロスから「魔王の残党らしく、ボロボロの服を着てこい」と指示されたからだ。

 昨夜私が手当てした傷には絆創膏が貼られ、その痛々しい姿を見るだけで胸が締め付けられる。

「ユリウス。お昼の休憩時間には、これを食べてね。……『肉厚シープピッグの特製カツサンド』と、『陽薬草の濃縮回復ドリンク』よ。ステータス異常の回復効果もつけておいたから」

「わぁ……! ありがとうございます、レティシアさん。これがあれば、どんな力仕事でも頑張れます!」

 私がバスケットを渡すと、ユリウスは見えない犬耳をピンと立てて、嬉しそうに目を細めた。

 彼がゼロスの暴力に耐え、泥を被ってくれているおかげで、村人たちには今のところ一切の被害は出ていない。

「……ユリウス」

 彼が踵を返そうとした時。私は、彼のごつくて大きな手を、両手でギュッと握りしめた。

「レティシア、さん?」

「……一人で、全部抱え込もうとしないで。あなたは、村を『神敵』にさせないために、物理的な盾になって耐えてくれている。……だったら私は、社長として。あなたを縛り付けている理不尽なシステムごと、社会的にぶっ壊してあげる」

 私の真っ直ぐな言葉に、ユリウスは驚いたように目を丸くした。

「あなたは一人じゃないわ。私と……ポポロ村の皆がついている。だから、絶対に絶望しないで。私たちが、必ずあなたの尊厳を取り戻してみせるから」

 ユリウスの氷色の瞳が、微かに揺れた。

 彼は、自分が傷つくことに無頓着だ。自分が馬鹿にされても、一人で泥を被ればいいと思っている。でも、そんな彼に『私たちはあなたの味方だ』と伝えることで、少しでも彼の心の負担を減らしたかった。

「……はい」

 やがて、ユリウスはフッと柔らかく、とても安心したような笑顔を浮かべた。

「レティシアさんがそう言ってくれるなら……僕は、全然辛くありません。むしろ、少し嬉しいくらいです」

「え?」

「レティシアさんが、僕のために怒って、戦ってくれる。……それが、すごく心強いから。……行ってきます!」

 ユリウスは私にペコリと頭を下げると、足取りも軽く、ゼロスのテントの方へと走っていった。

 その後ろ姿を見送った私は、自分の頬が少しだけ熱くなっているのを感じながら、両頬をパンッ!と叩いて気合いを入れた。

「……さて。ヒロインの仕事デレはここまでよ」

 私は振り返り、ルナキンの奥にある執務室へと足を踏み入れた。

 そこにはすでに、真紅の髪をまとめたクロエと、エンジェルすまーとふぉんを充電中のリリスが待機していた。

「さあ、始めるわよ。コンプライアンス違反の迷惑系インフルエンサーを社会的に抹殺する『特別監査プロジェクト』のキックオフよ!」

 私は空中に【経費精算】のパネルを展開し、前世の社畜時代に使っていたタスク管理ツール(ガントチャート)の形式に切り替えた。

 空中に浮かぶ光のパネルには、今回の『ゼロス炎上計画』に必要なステップと、各メンバーの担当タスクが可視化されて表示されている。

「クロエ。あなたには、ゼロスの『金の流れ(スポンサー)』を洗い出してほしいわ」

「任せてちょうだい」

 クロエが優雅に扇子を広げ、自信満々に微笑む。

「あいつのユニークスキル【マネー】は、天界のスポンサーからの課金(お布施)を力に変えるもの。つまり、スポンサーを引き剥がしてしまえば、あいつはただのうるさいだけのチビよ。……私の『ゴルド商会』の裏ルートを使えば、あいつに高額スパチャを投げている天界の企業や貴族のリストなんて、すぐに手に入るわ」

「お願いね。リストが手に入り次第、私たちが『スポンサー差し止め(営業妨害)』の交渉を仕掛けるわ」

 私はパネルのクロエのタスクに『進行中』のチェックを入れた。

 続いて、リリスの方を向く。

「リリス。あなたには一番の技術職ハッカーをお願いするわ」

「は、はっかーですか!? 私、そういう難しいのはちょっと……」

 リリスがオドオドと後ずさるが、私は彼女の肩をガシッと掴んだ。

「大丈夫。やることは簡単よ。その『エンジェルすまーとふぉん』は、天界の神々が使うのと同じシステムに繋がっているんでしょう?」

「はいぃ。一応、見習いですが神格公務員の支給品ですから」

「なら、ゴッドチューブの管理者回線バックドアにアクセスできるはずよ。ゼロスが配信しているチャンネルを乗っ取って、私たちが送る映像を、強制的に全世界に割り込み配信できるように設定ハッキングしてちょうだい」

「えええっ!? そ、そんなことしたら、炎上神ワイズ様に怒られちゃいますぅ!」

「神敵にされるのと、どっちがいいの?」

「……やりますぅ! エステティシャン・リリス、本気出しますぅ!」

 リリスが涙目でスマホの画面を猛烈な勢いでタップし始める。彼女はポンコツだが、神聖魔法や天界のアイテムに関する権限だけは本物だ。

「そして……最後は私ね」

 私は、テーブルの上に置かれた『あるもの』を指差した。

 それは、村の農家のおじさんが持ってきた、大きなバスケットだった。

 中には、ポポロ村の特産品である瑞々しい野菜が詰め込まれているのだが……その中央に鎮座している、一際大きなキャベツが、モゴモゴと動いていた。

『ねえねえ奥さん聞いた〜? 隣の村の鍛冶屋のジョンさん、最近夜遊びが激しいらしいわよ〜』

『ヤダァ、奥さんいるのに〜』

 キャベツの葉っぱが口のようにパクパクと動き、井戸端会議のような声を垂れ流している。

 ポポロ村の特産品、『ネタキャベツ』。

 周囲の音声を吸収(録音)し、それを噂話として再生するという、ゴシップ好きの奇妙な魔植物だ。

「ゼロスを完全に社会的に抹殺するためには、決定的な『証拠』が必要よ。あいつが自分の名声のために、自分で村に火を放ったり魔獣をけしかけたりする『ヤラセ』を計画している音声データ。……それを、このネタキャベツで録音するわ」

 私は、ネタキャベツの葉っぱを撫でながら、悪代官のように口角を吊り上げた。

「これを『村からの差し入れ(貢物)』として、ゼロスのテントに送り込む。……あいつは傲慢だから、まさか野菜が会話を録音しているなんて夢にも思わないはずよ」

「……えげつないわね。さすがはうちの社長様」

 クロエが呆れたように、しかし楽しげに笑う。

「コンプライアンス(法令遵守)を舐めたクズには、これくらいの監査(制裁)が妥当よ。……さあ、反撃開始よ!」

     * * *

 その頃。

 広場に建てられた豪華なテントの中では、ゼロスがふんぞり返って果実酒を煽っていた。

「おいバケモノ! 靴の磨き方が足りねえぞ! もっと舌を使って綺麗に舐め回せ!」

「すみません、すぐにやり直します」

 ユリウスは、床に這いつくばりながら、ゼロスのブーツを布で懸命に磨いていた。

 カメラが回っていないこの密室で、ゼロスの態度はさらに横暴を極めている。取り巻きたちも、ユリウスに向かって嘲笑の声を浴びせていた。

 しかし、ユリウスの心は、決して折れてはいなかった。

 彼の胸のポケットには、先ほどレティシアから渡された『特製カツサンド』が入っている。

 (レティシアさんが……僕のために怒ってくれた)

 その温かい事実が、ユリウスの心を鉄壁の要塞のように守っていた。どんなに理不尽な暴力を振るわれようと、彼女が味方でいてくれるなら、痛くも痒くもないのだ。

「チッ、つまんねえ奴だな。いくら蹴っても殴っても、ヘラヘラしやがって……」

 ゼロスが忌々しそうに舌打ちをした時。

 テントの入り口から、取り巻きの一人が大きなバスケットを抱えて入ってきた。

「ゼロス様! 村の連中から、差し入れが届きました! なんでも、魔王を成敗してくださる勇者様への貢物だとか!」

「ほう? 辺境の泥村の連中も、ようやく俺の偉大さに気づいたか」

 ゼロスはニヤリと笑い、バスケットの中を覗き込んだ。

「なんだ、野菜か。貧乏くせえが……まあ、食ってやらないこともない。おい、これの毒見をしておけ!」

 ゼロスの指示で、バスケットはテントの隅にある調理台に置かれた。

 そのバスケットの中央。

 他の野菜に紛れて鎮座する大きな『ネタキャベツ』が、誰にも気づかれないように、静かに、しかし確実に……テント内で交わされる全ての会話の『録音』を開始していた。

「さーて、明日の配信はどうしてやろうかな」

 ゼロスが、不敵な笑みを浮かべながら、取り巻きたちにヤラセの計画を語り始める。

 自分たちが企む卑劣な悪意が、全て有能社長の『監査網』に筒抜けになっていることなど、愚かな偽勇者は知る由もなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第4章の第4話、いかがでしたでしょうか。

ゼロスの元へ向かうユリウス。彼を引き留め、「あなたは一人じゃない。私たちが理不尽なシステムごとぶっ壊してあげる」と宣言するレティシア。

この言葉で、ユリウスの心は完全に救われました。「レティシアさんが味方なら痛くも痒くもない」と、最強騎士のメンタルは鉄壁です!

そして、ルナキンの裏では女子チームによる『特別監査(炎上作戦)』がスタート!

クロエはスポンサーの洗い出し。

リリスはゴッドチューブのハッキング。

そしてレティシアは、録音機となる魔植物『ネタキャベツ』を差し入れに偽装してゼロスのテントに送り込みました!

現代のコンプライアンス監査の手法(証拠集め)が、ファンタジー世界で完璧に機能しています(笑)。

次回、第5話!

ゼロスのテントに潜入したネタキャベツが、とんでもない「ヤラセ計画」の音声を録音します。

そしてリリスのハッキングもいよいよ大詰め! ホワイト村の情報戦が加速します!

「女子チーム頼もしい!」「ユリウス頑張れ!」「ネタキャベツ有能すぎる(笑)」と反撃への期待を高めていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、毎日更新を続けるための最大の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

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