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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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閃光の父の旅立ち。ブラックな過去を捨てた私と、世界一優しい騎士のホワイトな日常

閃光の父の旅立ち。ブラックな過去を捨てた私と、世界一優しい騎士のホワイトな日常

 千を超える魔獣のスタンピードから一夜明けた、ポポロ村の朝。

 澄み切った青空の下、村の境界線には、王都へと帰還する一人の老騎士の姿があった。

「……すっかり長居してしまったな」

 愛馬の手綱を握り、ガレオン・ルルーシュがポツリと呟く。

 特A級魔獣の一撃を受けた背中の傷は、リリスの神聖魔法とポポロ村特製のバフ飯のおかげで、すでに馬に乗れるまでに回復していた。

「父さん。あの、これ……道中の携帯食料です。僕が握った『肉椎茸と醤油草のおにぎり』と、水筒に『ポポロ・コーヒー』を淹れておきました。あと、タローマン製の『冷えピタシート』も入ってますから、傷が痛んだら貼ってくださいね」

 見えない犬耳をパタパタと揺らしながら、ユリウスが大きな荷袋をガレオンに手渡す。

 ガレオンは、ズシリと重いその袋を受け取ると、少しだけ呆れたように息を吐いた。

「……相変わらず、世話焼きな奴だ。ワシを老人扱いするな」

「そ、そんなつもりじゃ! ただ、少しでも快適に帰ってほしくて……」

「ふん。まあ……ありがたく貰っておく」

 ガレオンは不器用に顔を逸らしながらも、荷袋を大切そうに鞍の横に結びつけた。

「……ユリウスよ。お前のその『優しさ』は、戦場では命取りになるかもしれん」

「……はい」

「だが……その優しさこそが、お前の圧倒的な『力』の源泉なのだろう。ならば、誰に何と言われようと、己の信じる騎士道を貫き通せ。……もう二度と、自分を三流などと卑下することは許さんぞ」

「父さん……っ! はいっ!」

 ユリウスが、背筋をピンと伸ばして、力強く頷く。

 かつては息子の心を引き裂いた父親の言葉が、今は何よりも温かいエールとなって、ユリウスの背中を押していた。

 ガレオンは満足げに頷くと、今度は私の方へと鋭い視線を向けた。

「おい、そこの強欲な小娘」

「……レティシアです、お父様」

「誰がお父様だ」

 ガレオンは忌々しそうに鼻を鳴らしながらも、馬の上から私を真っ直ぐに見下ろした。

「ユリウスのことは、お前に預けた。もし、あやつに理不尽な労働を強いたり、不当な扱いをして泣かせたりしてみろ。その時は、帝国近衛騎士団を総動員して、この村ごと貴様を叩き潰しに来るからな」

「ええっ!? と、父さん! レティシアさんと戦うなんて絶対にやめてくださいぃぃっ!」

 ユリウスがワタワタと慌てふためく中、私はクスッと笑って、ガレオンの威圧感に真っ向から言い返した。

「ご心配なく、ガレオン様。残念ですが、うちの村の【福利厚生】と労働環境は、ブラックな帝国軍なんかよりもずっと上です。……彼を泣かせるどころか、世界一幸せな騎士にして見せますから、次に来る時は視察のつもりでいらしてください」

「……ふん。口の減らん奴だ」

 ガレオンの口角が、微かに吊り上がった。

 それは、彼が見せた初めての、明確な『笑顔』だった。

「達者でな」

 短くそう言い残し、ガレオンは馬の腹を蹴った。

 ヒヒーンという嘶きと共に、帝国最強の剣士は、朝日に向かって走り去っていく。

 私たちは、その背中が見えなくなるまで、ずっと手を振って見送ったのだった。

     * * *

 ガレオンが去った後のポポロ村には、再び騒がしくも平和な『ホワイトな日常』が戻ってきた。

「さあさあ! 解体の手は止めないでちょうだい! 魔獣の毛皮や魔石は、傷む前に処理すれば王都の貴族たちが高値で買い取るわ! 今回の防衛戦で出た経費なんて、余裕でペイしてお釣りが来るんだから!」

 広場では、真紅の髪を振り乱したクロエが、商人としての本性を丸出しにして解体作業の指揮を執っていた。

 ユリウスが『氷刃円舞』で一刀両断したため、素材の切り口が驚くほど綺麗であり、最高ランクの品質として取引されるのだという。

「うふふふっ! 魔石の売り上げのおこぼれ(お布施)で、エンジェルすまーとふぉんのローンが今月分も返せましたぁ! これでまた『エターナル(創造世界)』のお城作りに着手できます!」

「コラ、リリス! また変な石を出して村を臭くしないでよ!」

 健康サンダルをペタペタ鳴らしながら喜ぶリリスに、私が釘を刺す。

 「むかーっ! あれは防衛アイテムになったじゃないですかぁ!」と頬を膨らませる見習い女神。相変わらずのポンコツぶりだが、彼女がいてくれるおかげで、村の空気はいつも明るい。

「レティシアさん。お仕事中、失礼します」

 ふわりと、陽薬草の香りを纏った風が吹いた。

 ルナキン・ポポロ支店のテラス席で、私が【経費精算】のパネルを使って事後処理の書類をまとめていると、エプロン姿のユリウスが、お盆を持ってやってきた。

「温かい『ポポロ・コーヒー』と、差し入れの『太陽芋のスイートポテト』です。少し休憩しませんか?」

「ありがとう、ユリウス。……あなたも、魔獣の解体作業の手伝いでお疲れでしょう?」

 私がコーヒーを受け取ると、ユリウスは向かいの席にちょこんと座り、見えない尻尾をパタパタと揺らした。

「いえ! 僕は皆のために働くのが好きですから。力仕事なら任せてください」

「ふふっ。本当に、あなたは働き者ね」

 私は、スイートポテトを口に運びながら、目の前で嬉しそうに笑う彼の顔をじっと見つめた。

 ほんの数日前、この青年は絶対零度の冷気を纏い、特A級魔獣を単騎で蹂躙する『化け物』のような力を見せつけた。

 だが、今の彼からそんな恐ろしい威圧感は微塵も感じられない。

 自分の力を誇示することもなく、「俺が守ってやった」と恩を着せることもない。ただ、「皆の役に立てたこと」を心から喜び、今日もエプロンをつけて村の雑用をこなしている。

(……本当に、変わった人)

 彼にとって、私は「俺の女」というような、所有欲や独占欲を満たすための対象ではないのだ。

 彼が私を守ってくれるのは、私が彼にとって「大切な仲間」であり、「理不尽に傷ついてほしくない人」だから。

 その博愛主義的な優しさを、物足りないと思う女性もいるかもしれない。

 けれど、私は違う。

 前世で誰からも駒としてしか扱われず、ブラックな環境で過労死した私にとって。

 この見返りを求めない、純度100%の『人間としての深い愛情』が、どれほど心地よく、どれほど救いになっていることか。

「レティシアさん? どうかしましたか? 顔にクリームがついてますか?」

「ううん、なんでもないわ」

 首を傾げるユリウスに、私は優しく微笑みかけた。

 私は、彼を無理に独占しようとは思わない。

 彼が持つ「皆を守りたい」というその気高く優しい精神を、誰よりも尊重し、隣で支えていきたい。

 それが、自立した一人の人間(経営者)として、私が彼に返すことのできる最大の『愛』の形なのだから。

「ねえ、ユリウス」

「はい?」

「明日は、村の復興作業も少し落ち着くはずよ。……お疲れ様会も兼ねて、二人で少しだけ、遠出し(デートし)ない?」

 私が少しだけ上目遣いで提案すると、ユリウスはキョトンと瞬きをした後、ボンッ!と音を立てて顔を真っ赤にした。

「で、で、でーと!? ぼ、僕みたいな取り柄のない男が、レティシアさんをエスコートするなんて……っ!」

「取り柄がないなんて、二度と言わない約束でしょ。……それとも、私と出かけるのは嫌?」

「い、嫌なわけないですっ! 喜んでお供させてくださいっ!!」

 勢いよく立ち上がり、犬耳をピンと立てて敬礼するユリウス。

 その微笑ましい姿に、私は堪えきれずに声を上げて笑ってしまった。

 理不尽なブラック国家を追放され、辿り着いたこの辺境の村。

 私はここで、最高の親友クロエと、騒がしい見習い女神リリスと、そして……自分のためには怒れないけれど、誰かを守るためなら神すら凌駕する、世界一優しくて最強の騎士様ユリウスに出会った。

 私たちの、騒がしくも愛おしい『ホワイトな日常』。

 どんな困難が訪れようとも、私と私の最強の社員たちがいれば、絶対に乗り越えていける。

「さあ、午後のお仕事も頑張りましょうか!」

 雲一つない青空に向かって、私は大きく背伸びをした。

 私の【無限の福利厚生】で、この村と、彼を世界一幸せにするための日々は、まだまだこれからなのだから。

(第3章・完)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

第3章『閃光の父と絶対零度の騎士』編、これにて無事に完結エピローグです!

不器用な親父・ガレオンの旅立ち。最後に「息子を泣かせたら村ごと叩き潰すぞ」とツンデレな威嚇を残していくあたり、彼らしい不器用な愛情表現でした。レティシアも一歩も引かずに「世界一幸せにします」と宣言する最高の姑(?)バトルでの幕引きでしたね。

そして、再び平和が戻ったポポロ村。

魔獣を素材としてさばくクロエ、お布施でローンを返すリリス、そして相変わらずエプロンをつけて世話を焼くユリウス。

レティシアは、ユリウスの「見返りを求めない優しさ」こそが彼の本質であり、彼を無理に独占するのではなく、隣でその気高さを守り抜きたいと決意を新たにしました。

最後は、レティシアからのデートの誘いにボンッ!と顔を赤くするユリウスの可愛いチワワっぷりで締めくくりです。

【読者の皆様へのお願い】

ここまで読んで「親父いいキャラだった!」「ユリウスの優しさが最高!」「レティシア社長と末永くお幸せに!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様からいただく【ブックマーク】と【星評価(MAX)】が、この物語の「第4章」を執筆するための最高の【福利厚生モチベーション】となります!

どうか、清き星での応援をよろしくお願いいたします!

第3章、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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