【絶頂カタルシス】誰も傷つけさせない! 父の眼前で解き放たれる絶対零度の剣技!
【絶頂カタルシス】誰も傷つけさせない! 父の眼前で解き放たれる絶対零度の剣技!
絶望的な熱波が、戦場を支配していた。
三つの頭を持つ特A級魔獣キマイラが、怒りに任せて口の奥で練り上げた極大の火炎球。先ほどとは比べ物にならないほど濃密な魔力が、今まさに解き放たれようとしている。
その矢面に立ったのは、エプロンを外した長身の青年――ユリウス・ルルーシュだった。
「ユ、ユリウス、、下がっていろ、、」
背後で倒れ伏したまま、ガレオンが血を吐くような声で呻いた。
リリスの奇跡的な回復魔法で命を取り留めたとはいえ、彼にはもう立ち上がる力すら残っていない。それなのに、彼は必死に腕を伸ばし、息子の背中を掴もうとした。
「お前では無理だ、、お前だけでも、、逃げろ」
それが、不器用な親父の、隠しきれない本音だった。
かつて「自分を守れない軟弱者」だと息子を切り捨て、追放した帝国最強の剣士。
しかし、いざ死の淵に立った時、彼が口にしたのは息子への呪詛でも叱咤でもなく、ただ「生きて逃げてほしい」という父親としての純粋な願いだった。
ユリウスは、振り返らなかった。
ただ、腰の長剣の柄に静かに右手を添え、背中にいる父親、リリス、そして私や村の皆を完全に庇うように、大きく一歩を踏み出した。
「父さんを傷つけさせない、、誰も! 傷つけさせない!」
凛とした、しかし決して揺るがない強い意志が、ユリウスの声に宿っていた。
自分のためには決して怒らない。自分が馬鹿にされても、殴られても、彼はヘラヘラと笑って受け入れてきた。
だが。大切な誰かが理不尽に傷つけられ、奪われそうになった時だけは。
彼は、一切の迷いなく、その奥底に眠るバケモノじみた力を解放するのだ。
キマイラの三つの口から、全てを焼き尽くす灼熱の火炎が放たれた。
眼前の世界を赤黒く塗り潰す、破壊の業火。
それに対して、ユリウスは剣を抜くことすらなく、左手をスッと前にかざした。
「フリーズ!」
詠唱も、魔法陣すらもない。
ただその一言が紡がれた瞬間。
ピキィィィィィンッ……!!!
世界から、あらゆる『熱』と『音』が消失した。
私たちを飲み込もうとしていた灼熱のブレスが、空中でピタリと静止し、瞬く間に青白い氷の柱へと変貌する。
それだけではない。
ユリウスの手から放たれた絶対零度の冷気は、巨大なキマイラの全身を覆い尽くし、さらにはその後方に押し寄せていた数百のジャイアント・ボアやアシッド・スパイダーの群れをも飲み込んでいく。
一瞬だった。
地響きを立てて迫り来る大群は、大気を埋め尽くすダイヤモンドダストの煌めきと共に、見渡す限りの『青白い氷の彫刻』へと変わってしまったのだ。
「な、なに、、?」
ガレオンの口から、呆然とした声が漏れた。
無理もない。帝国最強と謳われた彼が命を懸けて、折れた剣と自身の肉体を犠牲にしてようやく凌いだ特A級魔獣の攻撃と大群を。
彼が「無能」だと切り捨てた息子が、剣も抜かずにたった一つの魔法で無力化してしまったのだから。
しかし、ユリウスの反撃はこれだけでは終わらなかった。
氷漬けになったとはいえ、特A級魔獣の生命力は規格外だ。完全に息の根を止めなければ、氷を内側から砕いて再び襲いかかってくる危険性がある。
「行くぞ! 氷刃円舞!」
シャァァンッ!!
澄んだ金属音と共に、ユリウスの腰からオリハルコン・ソードが引き抜かれた。
刀身に極低温の闘気を纏わせたユリウスが、地面を蹴る。
――速い。
いや、速いという次元ではない。
ガレオンの『閃光』が「一直線の圧倒的な破壊」だとするなら、ユリウスのそれは「流れるような吹雪の舞」だった。
音もなく魔獣の群れの間をすり抜け、青白い軌跡だけが戦場に幾重もの円を描いていく。
ザシュッ! ズバァァァッ!
ユリウスのオリハルコン・ソードが、氷結して身動きの取れない魔獣たちを次々と一刀両断していった。
硬い外殻も、巨大な体躯も関係ない。極低温で脆くなった魔獣たちは、ユリウスの優雅にして冷徹な剣筋に触れた瞬間、ガラス細工のようにあっけなく砕け散り、粉雪となって空に消えていく。
「……信じられないわね。あの子、魔法だけじゃなくて、剣術まであんなデタラメだったなんて」
クロエが扇子を取り落としそうになりながら、ポツリと呟いた。
私も、パネルの操作を忘れて、その美しすぎる剣舞に見惚れていた。
かつてガレオンは、ユリウスの剣を「踏み込みが甘い」「敵を倒す意志がない」と評した。
確かに、自分を守るためだけの剣なら、彼はどこまでも弱かったのだろう。
しかし今、彼の剣には「絶対に皆を守り抜く」という、揺るぎない覚悟と意志が宿っている。守るべき者が背後にいるからこそ、彼の剣は一ミリの迷いもなく、極限の冴えを見せているのだ。
最後に残った巨大なキマイラへと、ユリウスが跳躍した。
三つの首の付け根に向かって、空中で独楽のように回転しながら、白銀の闘気を圧縮した一撃を振り下ろす。
――ズバァァァァァァァァンッ!!!
特A級魔獣の巨体が、頭から尻尾の先まで、見事に真っ二つに両断された。
ズズーン、と地響きを立てて崩れ落ちるキマイラ。
それが、千を超えた魔獣のスタンピードが完全に終結した瞬間だった。
舞い散る氷の粒子が、月明かりを反射してキラキラと戦場に降り注いでいる。
その幻想的な光景の中心に、ユリウスが静かに着地し、チャッ……と一滴の血も付いていない剣を鞘に納めた。
誰一人傷つけさせない、完璧で圧倒的な『守護の剣』。
「あ、あれが、、あれが、ユリウスだと言うのか」
背後で、ガレオンが震える声で呟いた。
その氷色の瞳には、かつて見下していた息子への失望など微塵もなく。
ただ、自分の理解を遥かに超えた領域へと辿り着いた『最強の騎士』への、驚愕と、そして拭いようのない畏怖が刻み込まれていた。
「……ええ。お父様」
私は、誇らしさで胸を一杯にしながら、ガレオンに向かって微笑んだ。
「あれが、私がこの世界で一番信頼している……自慢の社員です」
自分のためには怒れない、心優しき青年。
しかし、理不尽を前にした時だけは、誰よりも強く、誰よりも気高い守護者へと姿を変える。
彼こそが、私をブラックな過去から救い出してくれた、究極のヒーローなのだ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
第3章の第7話、ついにユリウスの【絶頂カタルシス】回が炸裂しました!
「下がっていろ、逃げろ」と不器用な親心を見せるガレオンに対し、ユリウスは「誰も傷つけさせない!」とついにその本性を解放します。
『フリーズ!』で大群を氷漬けにし、『氷刃円舞』で一刀両断!
圧倒的な無双っぷりに、ガレオンも「あれが、ユリウスだと言うのか」と驚愕するしかありません。
自分が傷つくことには無頓着でも、大切な人を守るためなら化け物になる。
レティシアの「あれが私の自慢のナイトです」という誇らしげなセリフが、この物語のテーマを全て代弁してくれました。
次回、第8話!
圧倒的な力で防衛戦を終結させたユリウス。
ガレオンは、自分の「強さの定義」が間違っていたことに気づき、ついに父と子の『戦う理由の違い』について向き合うことになります。
「ユリウス無双キターーー!」「親父の逃げろに泣いた」「レティシア社長のドヤ顔最高!」と胸を熱くしていただけましたら、
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