表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/45

陥落した社畜OLの決意。最強のホワイト村で、私と不器用な騎士の甘い日常は続いていく

陥落した社畜OLの決意。最強のホワイト村で、私と不器用な騎士の甘い日常は続いていく

 黄金の魔導戦車が氷漬けにされ、ブラック元婚約者がスーツケースに詰め込まれてドナドナされていった翌日。

 ポポロ村には、雲一つない快晴の空が広がっていた。

「……はぁ。ダメだわ、全然仕事に集中できない」

 ルナキン・ポポロ支店のテラス席。

 私は、テーブルに広げた領地の予算編成書類を前に、両手で顔を覆って深いため息をついた。

 目を閉じると、昨日の光景が鮮明にフラッシュバックしてくる。

 転びそうになった私を、瞬時に抱き止めた逞しい腕。

 フワリと身体が宙に浮いた、人生初の『お姫様抱っこ』。

 そして、至近距離で見つめ合いながら放たれた、あの殺し文句。

『……自分のためには怒れないけれど。こうやって、貴女を守るナイトじゃ、駄目でしょうか?』

「っ〜〜〜〜!!」

 ボフンッ!と、自分の頭から湯気が噴き出す音が聞こえた気がした。

 ダメだ。思い出すだけで心臓がうるさいし、顔が林檎のように真っ赤になっているのが自分でも分かる。

 前世から今まで、恋愛なんてする余裕もなく「仕事の出来る堅物女」として生きてきた私のキャパシティを、あの天然タラシの氷の騎士様は軽々と超えてくるのだ。

「レティシアさん? どうしたんですか、顔を真っ赤にして」

 ふいに、上から降ってきた優しい声。

 ビクッとして顔を上げると、いつものようにエプロンを身につけたユリウスが、心配そうに私を覗き込んでいた。手には、淹れたての陽薬草茶が乗ったお盆を持っている。

「ゆ、ユリウス! い、いつの間に!」

「たった今です。……もしかして、昨日転びそうになった時、やっぱりどこか痛めたんじゃ……?」

 ユリウスは慌てた様子でお盆をテーブルに置き、スッと顔を近づけてきた。

 大きな手が私の額に触れ、彼の整った顔立ちが目の前に迫る。ひんやりとした彼の手のひらの温度が、熱を持った私の肌に心地よく、同時に鼓動をさらに跳ね上がらせた。

「熱は……ないみたいですけど、すごく赤いですよ。無理して仕事しないで、今日は休んだ方が……」

「ち、違うの! 風邪とか怪我じゃないから! ただの、その……寝不足よ! そう、寝不足!」

 私はパニックになりながら、彼の大きな胸板をドンと押して距離を取った。

 ユリウスは「うわっ」と少し後ろに下がった後、犬耳(幻覚)をペタンと垂れ下げてシュンとしてしまった。

「ご、ごめんなさい……僕、また出しゃばった真似を。レティシアさんが頑張ってるのに、邪魔しちゃダメですよね」

「違うのよ! あなたが悪いんじゃなくて、私が勝手に……もう!」

 自分の不器用さに自己嫌悪に陥りそうになる。

 私がワタワタとしていると、テラスの奥から「あむあむあむ!」と凄まじい咀嚼音が聞こえてきた。

「んん〜っ! ルナキンの朝食バイキング、最高ですぅ! カリカリのベーコンに、とろとろのスクランブルエッグ! 天界のかすみみたいな朝ご飯とは雲泥の差ですね!」

 ピンク色の初心者マーク入りジャージを着た見習い女神・リリスが、山盛りの朝食プレートを幸せそうに平らげていた。

「おはよう、リリス。朝から相変わらずすごい食欲ね」

「はいっ! あ、そういえば朝一でエンジェルすまーとふぉんに『リボ払い督促状・第二弾』が届いてたんですけど、見なかったことにして削除しちゃいました! えへへ!」

「えへへ、じゃないわよ。現実逃避しても借金は減らないわよ」

 私が呆れ返っていると、カツン、カツンとヒールの音を響かせてクロエが現れた。

「心配ないわ、レティシア。彼女の借金なんて、私の計画を使えばすぐに完済できるんだから」

「計画?」

 クロエはリリスの隣に座り、妖艶な笑みを浮かべて扇子を広げた。

「ええ。リリスのスマホの『状態異常回復』アプリ。どんな傷や病気、肌荒れも一瞬で治せるんでしょう? これ、王都や他国の富裕層向けの『超高級アンチエイジング・エステサロン』として売り出すのよ。1回の使用料10万なら、50万で提供して40万の中抜き(利益)を出すわ。……あっという間に億万長者ね」

「ひぇっ!? あ、悪徳商人ですぅ! 神の権能をそんな金儲けに使うなんて、ヴァルキュリア先輩にバレたら雷落とされます!」

「あら、マグローザ漁船で一生タコ部屋暮らしするよりはマシじゃないかしら?」

「……やります! エステティシャン・リリス、頑張りますぅ!!」

 あっさりと堕落(?)する見習い女神。

 相変わらずクロエの商魂は逞しい。でも、これでリリスも借金取りの恐怖に怯えることなく、この村で一緒に平和に暮らしていけるなら、悪くない話だ。

「そういえば、エドワード殿下たちはどうなったのかしら」

 私が紅茶を飲みながら尋ねると、クロエはクスクスと笑った。

「闇金ギルドの連中から通信があったわ。今頃、シーラン国の冷たい海の上で、マグローザ漁船の甲板をデッキブラシで磨かされてるそうよ。『私は王太子だぞ! こんな扱いが許されると思っているのか!』って毎日泣き叫んでるらしいけど、周りの荒くれ者たちには『新入りの冗談』だと思われて、笑い飛ばされてるんですって」

「……見事なまでの、因果応報ね」

 自分が他人を『道具』や『奴隷』のように扱ってきた男が、今度は自分が奴隷のように扱われる側に回ったのだ。同情の余地など1ミリもない。

 私はテラスから、広場を行き交う村人たちを見渡した。

 活気のある声。笑顔で挨拶を交わす農家のおじさんたち。

 理不尽な長時間労働も、無茶なノルマもない。誰もが充実した顔で働き、しっかりと休んで、美味しいご飯を食べる。

 ここは、私たちが作り上げた、世界一の『ホワイト領地』だ。

「……レティシアさん。本当に、よかったです」

 隣に立つユリウスが、村人たちの笑顔を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「エドワード殿下が来た時はどうなるかと思いましたけど……レティシアさんが、無理やり国に連れ戻されなくて。この村で、こうしてまた一緒に笑い合えて。……僕、本当に嬉しいです」

 彼の横顔は、朝日に照らされてひどく優しく、そして少しだけ寂しそうだった。

「僕、本当に何も取り柄がないですけど……これからも、レティシアさんのそばで、お茶を淹れたり、薪を割ったり、そして……貴女を悪意から守る盾として、働かせてもらえませんか?」

 オドオドと、私の顔色を窺うように尋ねてくるユリウス。

 自分のためには剣を抜けない。自分がどれだけ馬鹿にされてもヘラヘラしている。

 でも、私のためにだけは、一切の迷いなく王太子相手でも腕を握り潰しにかかり、極大の魔導戦車を氷漬けにしてしまう。

 そんな、不器用で、優しすぎる私の騎士様。

「……バカね、ユリウス」

 私はクスッと笑い、彼の大きな手を、自分の両手でギュッと握りしめた。

 ユリウスがビクッと肩を跳ねさせ、目を見開く。

「取り柄がないなんて、二度と言わないで。あなたは私にとって、誰よりも価値のある、最高に優秀な社員……ううん。大切な、大切なパートナーなんだから」

「レ、レティシアさん……っ」

「私を連れ戻そうとするブラック国家はもうないわ。私はこれから先もずっと、この村の領主として生きていく。だから……あなたが私を守ってくれるなら、私は私の持てる【無限の福利厚生】の全てを使って、あなたを世界一幸せにしてあげる。……覚悟しておきなさいよね?」

 私が真っ直ぐに見つめてそう宣言すると。

 ユリウスの顔がボンッ!と音を立てて真っ赤に染まった。

「あ、あうぅ……っ。レティシアさんって、時々すごく男前というか……僕、心臓が痛いですぅ……っ」

「ふふっ。お互い様よ」

 顔を覆ってしゃがみ込む彼を見て、私はようやく「昨日の意趣返しができた」と、悪戯っぽく笑った。

 前世で過労死し、今世でもブラック国家に追放された私。

 でも、その理不尽な過去があったからこそ、私はこの村に辿り着き、最高の親友と、騒がしい女神様と、そして……私のためだけに怒ってくれる、愛おしい騎士様に出会うことができた。

「さあ、今日も一日、ホワイトで快適なお仕事を始めましょうか!」

 私の号令に、村の仲間たちが元気よく応える。

 理不尽をぶっ飛ばす、痛快でホワイトな異世界スローライフ。私と不器用な騎士様の、焦れ焦れで甘い日常は、これからもずっと続いていく。

(第2章・完)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

第2章、これにて無事に完結エピローグです!

お姫様抱っこの余韻で顔を真っ赤にするレティシアと、相変わらず天然タラシなユリウス。

エドワードはマグローザ漁船でデッキブラシをかけながら泣き叫び(完全ざまぁ)、リリスはクロエのプロデュースでエステサロンのスタッフ(借金返済)になることが決定しました(笑)。

そして最後は、レティシアからユリウスへの「あなたを世界一幸せにしてあげる」という、実質的なプロポーズ(?)宣言!

二人の距離が確実に縮まった、最高にハッピーでホワイトな締めくくりとなりました。

【読者の皆様へのお願い】

ここまで読んで「最高だった!」「エドワードざまぁ!」「ユリウスとレティシアのイチャイチャもっと見たい!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様からいただく【ブックマーク】と【星評価(MAX)】が、この物語の「第3章」を執筆するための最高の【福利厚生モチベーション】となります!

どうか、清き星での応援をよろしくお願いいたします!

第2章、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ