表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/34

戦車ごと完全氷漬け! 見習い女神のお布施回収と、ブラック元婚約者のマグローザ漁船ドナドナざまぁ!

戦車ごと完全氷漬け! 見習い女神のお布施回収と、ブラック元婚約者のマグローザ漁船ドナドナざまぁ!

 黄金の魔導戦車『ゴールデン・モナーク』から放たれた、極大の魔力砲弾。

 全てを焼き尽くす灼熱の光が、網膜を焼くような閃光と共に、私とユリウスを飲み込もうと迫り来る。直撃すれば、ポポロ村の広場ごと、私たちは塵一つ残さず消し飛んでしまうだろう。

 しかし。

 私の前に立つエプロン姿の青年は、剣を抜くことすらなく、ただ静かに右手を前にかざした。

「――『氷結フリーズ』」

 たった一言。

 魔法陣の展開も、仰々しい詠唱もない。ただ、彼がその言葉を口にした瞬間。

 ピキィィィィンッ……!!

 世界から、一瞬にして『熱』が奪い去られた。

 私たちを飲み込もうとしていた灼熱の魔力砲弾が、空中でピタリと静止し、瞬く間に青白い氷の柱へと変貌する。

 それだけではない。絶対零度の冷気は、巨大な黄金の魔導戦車そのものへと伝播し、悪趣味な黄金の装甲を、駆動する履帯を、内部の魔導機関を、全て分厚い氷の棺へと閉じ込めてしまったのだ。

「なっ……が、あ……ッ!?」

 ハッチから身を乗り出して狂笑していたエドワードの顔面が、驚愕に凍りついた。

 物理的な意味でも、だ。

 彼の首から下は、戦車と一体化するように完全に氷漬けにされ、指一本動かすことができない状態になっていた。

「ば、馬鹿な……っ! 王室専用の、最強の魔導戦車だぞ!? それを、たった一人の平民が、剣も抜かずに魔法一つで……っ!?」

「……どんな強力な兵器でも、使う人間の心が貧しければ、ただの鉄屑です」

 ユリウスが、静かに言い放つ。

 舞い散る氷の粒子ダイヤモンドダストが、月明かりを反射してキラキラと幻想的に輝いている。

 その光の中心で、静かに手を下ろすユリウスの背中。

 (ああ……やっぱり、この人は規格外だわ)

 私は、彼の広い背中を見つめながら、ほうっと熱い吐息を漏らした。

 自分のためには怒らない。けれど、私のためにだけは、どんな巨大な力にも屈しない。

 この圧倒的な安心感と、理不尽を許さない冷徹なまでの強さ。

 (私、もう絶対にこの人を手放せない。……完全に、胃袋ならぬ心臓を掴まれちゃったわ)

 顔が熱い。心臓の音がうるさくて、ユリウスに聞こえてしまわないか心配になるほどだ。

「ヒィッ……! た、助け……っ、寒、い……っ」

 ガチガチと歯の根を鳴らしながら、エドワードが白目を剥きかけている。

 彼の強烈なプライドは、絶対的な武力と冷気の前で完全にへし折られ、もはや哀れな小動物のように震えることしかできなかった。

 と、その時である。

「はむっ、もぐもぐ……あちゃー。見事に凍っちゃってますねぇ」

 トコトコと。

 手にはユリウスが作った特製みたらし団子を持ち、ピンク色の初心者マーク入りジャージを着た見習い女神・リリスが、氷漬けの戦車へと歩み寄っていったのだ。

「り、リリスちゃん!? 危ないわよ!」

「大丈夫ですよ〜。完全に気絶しかかってますから」

 リリスはみたらし団子を咥えたまま、エドワードの顔をペチペチと軽く叩いた。

 「あ、うぅ……」と虚ろな声を漏らすエドワード。

「大丈夫ですか〜? あ、意識がないみたいですね。えーと、こういう時は……」

 リリスはジャージのポケットから手のひらサイズの羊皮紙カンペを取り出し、チラッと確認した。

 そして、ニッコリと満面の笑みを浮かべ、エドワードの懐にスッと手を伸ばしたのだ。

「あ、ありました! うわぁ、分厚いし宝石がいっぱいついてるお財布! 天界の女神にこんなにたくさんのお布施をしてくださるなんて、なんて信心深い人なんでしょう!」

「えっ」

 リリスは、意識が朦朧としているエドワードから、王家の紋章が入った最高級の財布を、なんの躊躇いもなく抜き取った。

 そして、ちゃっかりと自分のジャージのポケットにねじ込んだのである。

「これで私のリボ払いも少しは足しになります! 神の御加護があらんことを!」

「ちょっと! 女神様がドサクサに紛れてスリを働かないでよ!」

 私のツッコミに、リリスは「お布施ですぅ!」とケロリとした顔で言い張る。

 本当にこのポンコツ女神、図太いというか、生活の知恵(?)だけは無駄に逞しい。

「……あら。じゃあ、彼、完全に『無一文』になったわけね」

 パチン、と。

 クロエが優雅に扇子を閉じ、冷酷な笑みを浮かべた。

「いいタイミングね。ちょうど、この村にポポロシガーの買い付けに来ていた『彼ら』に、最高の獲物をプレゼントしてあげられるわ」

 クロエが指を鳴らすと、広場の群衆を掻き分けて、屈強な男たちが数人姿を現した。

 彼らは一様に真っ黒なスーツを着込み、目には黒いサングラス。その体格は、プロレスラーのように筋骨隆々だ。

「おいおい、クロエの姉御。こいつぁ、王国のエドワード王太子殿下じゃねぇか。どうしてこんなところで氷漬けになってんだ?」

「ちょうどよかったわ、シーラン国の闇金ギルドの皆さん。彼、うちの村に多大な損害を与えた挙句、あなたたちの国にも借金(違約金)を踏み倒しているでしょう?」

 クロエの言葉に、サングラスの男たちはニヤリと悪魔のように笑った。

「違いねぇ。王国の奴ら、賠償金の支払いを渋ってやがったからな。……おい、殿下サマよぉ。まさか『一銭も持ってねぇ』なんてふざけたことは言わねぇよな?」

「あ、う……わ、私の財布……金なら、いくらでも……」

 エドワードが震えながら懐を探るが、当然そこには何もない。リリスのジャージのポケットに移動しているのだから。

「ああん? 財布がねぇ? ……つまり、払う金がねぇってことだな。なら、体で払ってもらうしかねぇな」

「ヒィッ!?」

「連れて行け。こいつは上玉の『マグローザ漁船』の餌(労働力)になるぞ。王族の肉体労働なんて、見世物としても高く売れそうだ」

 黒服の男たちは、氷漬けから解放されつつあるエドワードの襟首を掴むと、手際よく彼を巨大なスーツケース(魔法の拡張空間付き)へと折り畳むように詰め込んでいく。

「や、やめろォッ! 私は王太子だぞ!? こんなタコ部屋のような場所に……! レ、レティシアァッ! 助けろ! 私を助け――」

 ガチャンッ!

 スーツケースの蓋が非情に閉じられ、エドワードの悲鳴は完全にシャットアウトされた。

 黒服の男たちはスーツケースを肩に担ぎ、「ドナドナドーナードーナー♪」と楽しげな鼻歌を歌いながら、シーラン国へと向かって意気揚々と去っていく。

 莫大な借金を抱え、国を崩壊させ、最後は無一文となって遠洋漁業のタコ部屋へドナドナされていく。

 それが、私を不当に搾取し、追放したブラック元婚約者の、あまりにも惨めで自業自得な末路だった。

 これにて、完全なる『ざまぁ』の達成である。

「……ふふっ、あははははっ! 傑作ね! まさかあのバカ王子がマグローザ漁船行きなんて!」

 クロエが腹を抱えて大笑いしている。

 村人たちも「うるさいのがいなくなったべ!」「宴会だ宴会!」と大盛り上がりだ。

 私は、嵐が過ぎ去った広場で、小さく息を吐き出した。

 これで完全に、私の過去の因縁は断ち切られた。もう王国に未練もなければ、エドワードに怒りすら湧かない。

 私が今、見つめるべき相手は。

「あ、あの……エドワード殿下、連れて行かれちゃいましたけど……よかったんでしょうか?」

 振り返ると、そこには。

 先ほどまでの冷徹な処刑人のオーラを完全に消し去り、いつものオドオドとした気弱な青年に戻ったユリウスが、犬耳(幻覚)を垂れ下げて首を傾げていた。

(……この人、自分がどれだけヤバい力を使って、どれだけ私を惚れさせたか、絶対に1ミリも分かってないわね)

 圧倒的な温度差ギャップ

 私は、彼のそんな鈍感で無自覚なところすら愛おしく思いながら、一つ大きなため息をついたのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第2章の第8話、完全なるドナドナざまぁ回でした!

ユリウスが魔導戦車を魔法一つで完全凍結! その圧倒的な強さと「私のために怒ってくれた」という事実に、レティシアは完全に恋に落ちました。

そして、気絶したエドワードの懐から、ポンコツ女神リリスが「お布施回収スリ」を敢行! これにより無一文となったエドワードは、シーラン国の借金取りに捕まり、マグローザ漁船へとドナドナされていきました(笑)。

シリアスとギャグのジェットコースター、いかがでしたでしょうか。

しかし、戦いが終わればユリウスはいつものチワワ状態に戻ります。

次回、第9話!

「僕、何かやっちゃいましたか?」とオドオドする彼に、レティシアが思わず怒ってしまうのですが……そこから、まさかの特大胸キュンイベント(お姫様抱っこ)が発生します!

「リリスのスリ笑った」「エドワード、自業自得すぎる」「ドナドナドーナー♪」「ユリウスの温度差最高!」と楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、次回のお姫様抱っこシーンを執筆するための最高の福利厚生です!

どうか、引き続きポポロ村の物語への応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ