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『追放社畜OLの【無限の福利厚生】辺境村改革!〜気弱な最強氷魔法剣士様の理不尽を許さぬ無双姿に私だけがときめいている〜』  作者: 月神世一


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侮辱される騎士。なんで言い返さないのよ! 私の大切な人を馬鹿にしないで!

侮辱される騎士。なんで言い返さないのよ! 私の大切な人を馬鹿にしないで!

 黄金に輝く悪趣味な魔導戦車の前で、空気がピンと張り詰めた。

 狂気に満ちた目で私を強引に連れ戻そうとするエドワード王太子。

 その間にサッと割って入り、私を背中で庇うように立ち塞がったのは、村の最高警備責任者であるユリウスだった。

 しかし、彼はまだ先ほどまでリリスにお茶を淹れていた時の『エプロン姿』のままだった。

 その長身を少し縮こまらせ、犬耳(幻覚)をペタンと伏せてオドオドと私の前に立つ姿は、エドワードの格好の標的となってしまったのだ。

「あぁ? 何だ貴様は。私とレティシアの間に割って入るとは、身の程を知れ、薄汚い平民が!」

「ひぃっ……!」

 エドワードの怒声に、ユリウスはビクッと肩を跳ねさせた。

「誰かと思えば、エプロンなどつけた貧相な優男ではないか。腰に剣を佩いてはいるが、どうせ飾りだろう? その震える足を見れば、貴様がどれほどの臆病者か一目でわかるわ!」

 エドワードは嘲笑を浮かべ、ユリウスを頭の先からつま先まで、値踏みするように舐め回した。

「フハハハッ! おいレティシア、お前は王都を追放されて、こんな気弱で無能な男に乗り換えたのか? あまりにも惨めだな! 私という完璧な主から逃げ出した結果が、こんな底辺の雑用係に守ってもらう生活だとは、笑いが止まらんわ!」

 エドワードの心無い侮辱の言葉が、広場に響き渡る。

 私の胸の奥で、カッと熱い怒りの炎が燃え上がった。

 (――ちょっと、なんで黙ってるのよ!?)

 私は、私を庇ってくれているユリウスの広い背中を睨みつけた。

 (あんたはあの日、魔導戦車を一瞬で凍らせて、数百の軍隊を一人で叩き潰したのよ!? なんでそんな奴の暴言を、黙って下を向いて聞いてるの!?)

 言い返しなさいよ。

 自分の方が何百倍も強いんだって、その圧倒的な力でこんな男、一瞬で黙らせてやりなさいよ!

 私がどれだけ念じても、ユリウスは腰の剣に手をかけることすらしなかった。

「あ、えと……すみません。僕なんて、ただの田舎の護衛で……」

「ユリウス!」

 思わず私が声を上げると、彼は私の方をチラリと振り返り、情けない顔で眉尻を下げた。

「お茶を淹れたり、薪を割ったりすることくらいしか取り柄がなくて……。ご不快にさせたなら、申し訳ありません……」

 ペコペコと。

 自分がどれほど強大な力を持っているかを知りながら、ユリウスは本気で「自分は無能な雑用係だ」と思い込んでいるからこそ、その侮辱をヘラヘラと受け入れてしまうのだ。

「フハハハハッ! 見ろ、自分で自分をゴミだと認めておる! 貴様のような底辺の平民は、一生私の靴でも舐めていればいいのだ!」

 エドワードは図に乗って高笑いを上げ、ユリウスをさらに見下した。

 悔しかった。

 歯痒くて、腹立たしくて、どうにかなってしまいそうだった。

 私が前世でブラック上司に「お前は無能だ」と罵倒され続けた時、私はただ黙って耐えることしかできなかった。自分には価値がないと、洗脳されていたから。

 でも、ユリウスは違う。彼は誰よりも優しくて、強くて、私の自慢の騎士ナイトなのだ。

 それなのに、私が一番高く評価している彼自身が、自分を価値のないものとして扱う。

 私の大好きな、尊敬する人が目の前で理不尽にバカにされているのに、本人がヘラヘラと引いているのが、私はどうしても許せなかった。

「……あらあら。本当に、あの子は自分のためには怒れないのね」

 少し離れた場所で、クロエが扇子で顔を隠しながら、ため息をついている。

「むむむっ! あの成金金髪男、天界のネチネチした借金取りの黒服よりむかつきますぅ! 私が【ホーリー・スマッシュ】で天誅を下してやりましょうか!?」

 リリスがエンジェルすまーとふぉんのハードケースを握りしめ、物理攻撃の構えを取っている。

 村人たちも、ユリウスが馬鹿にされていることに腹を立て、「なんだあの男」「ユリウスの兄ちゃんは優しいんだぞ」と口々に非難の声を上げていた。

 しかし、エドワードの耳には、そんな声は届いていなかった。

 彼は完全に自分の作り上げた「私が一番偉い」という妄想の世界に浸りきっていたのだ。

「ええい、無能な平民風情が、私の視界を遮るな! 邪魔だ、どけッ!」

 ドンッ!と。

 エドワードが苛立ち紛れに、ユリウスの肩を強引に突き飛ばした。

 ユリウスの実力なら、そんな貧弱な突きなど微動だにせず弾き返せたはずだ。彼が本気を出せば、エドワードの手首ごとへし折ることなど容易い。

 しかし、ユリウスは。

「わわっ……!」

 あっさりとバランスを崩し、数歩よろけて道を空けてしまったのだ。

 争いを避けるために、わざと無抵抗で突き飛ばされたのだ。

「っ……!」

 私はギリッと奥歯を噛み締めた。

 胸の奥で煮えくり返るようなイライラが、臨界点に達しようとしていた。

 (なんで!? どうして自分のために怒らないのよ!!)

 私の苛立ちなど知る由もなく、エドワードは邪魔者を排除したとばかりに鼻を鳴らし、再び私へと傲慢な視線を向けた。

「ふん、無能な男との茶番は終わりだ。おいレティシア、戯言は終わりだと言っているだろう」

 エドワードは、狂気に濁った瞳で私を見下ろす。

 彼にとって、私は意思を持った一人の人間ではない。自分の都合のいいように国を回すための、ただの『便利な道具』でしかないのだ。

「私が直々に迎えに来てやったのだから、その恩に報いて死ぬまで働け! 王城の事務が回らんのだ! 今すぐ国へ帰るぞ!」

 エドワードが苛立ち紛れに腕を伸ばし。

 私の細い手首を、強引に掴んで引きずり倒そうとした――。

 その、瞬間だった。

 ――自分のためには絶対に剣を抜かない、気弱な氷の騎士様。

 彼の『優先順位』が、世界で最も明確に、そして残酷なまでに示されたのは。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第2章の第6話、いかがでしたでしょうか。

エドワードによる容赦ないユリウスへの侮辱。そして、自分のためには絶対に言い返そうとしない、無抵抗なユリウス。

レティシアの「なんで言い返さないのよ!」「私の大切な人を馬鹿にしないで!」という歯痒さとイライラが、最高潮に達しました。

自分が馬鹿にされることには腹が立たなくても、自分の好きな人(高く評価している人)が不当に貶められ、本人がそれをヘラヘラ受け入れているのを見るのは、何よりも悔しいものです。

レティシアのこの「怒り」こそが、ユリウスへの深い愛情の裏返しなのです。

そして次回、第7話!

ついに、エドワードの魔の手がレティシアに及んだ瞬間。

溜めに溜めたフラストレーションを、ユリウスが『最高の形』で爆発(粉砕)させます!!

「エドワード許すまじ!」「レティシアのイライラわかる!」「ユリウス、次こそやっちまえ!!」とフラストレーションを溜めていただけましたら、

ぜひページ下部(または右上)の【★で称える(ポイント評価)】から、星3つ(★★★)での全力応援をよろしくお願いいたします!

皆様の【ブックマーク】と【星評価】が、明日更新の『ざまぁ&胸キュン回』への最大の福利厚生です!

どうか、引き続き応援よろしくお願いいたします!

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