婚約者を殺してしまいました……。そうですわ! ロボットでごまかしましょう!!
それは、あまりにも突然だった。
「……え?」
ニコールは手に持っていた豆腐を、次に婚約者ボトローを見た。
彼は、ゆっくりと崩れ落ちる。
バタンッ!
「ボ……ボトロー様?」
返事はない。安らかな顔で、微動だにしない。
「……え? ええ?」
ニコールは豆腐を持ったまま固まった。
状況を整理する。
今日は結婚披露パーティーの日。
二人は、開始までの時間を控室で過ごしていた。
そんな中、ニコールは厨房から勝手に持ってきた豆腐を食べようとする。
そこへ、ボトローが躓き倒れ、豆腐の角に頭をぶつけてしまう。
結果。
返事がない……。
ただの屍のようだ……。
「し、死んでる……?」
(ありえない。豆腐の角に頭をぶつけて死ぬなんて、そんなことがあるはずが──)
返事がない……。
ただの屍のようだ……。
「あるの!? ありえないけど……じ、実際に……死んでるからああああ!!!」
ニコールは叫び、そして頭を抱えた。
「ど、どうしましょう……このままでは結婚披露パーティーが……いえ、それ以前にわたくしが殺人犯に……!」
しかし、彼女はただの令嬢ではなかった。
天才発明家である。
ニコールの瞳が、ぎらりと光った。
「ご……ごまかしましょう」
数十分後。
ボトローは立っていた。
いや、正確にはボトローっぽいロボット──ボトロー様5号。
ぎこちなく、しかし確かに歩く。
「ボトロー様、笑ってくださいませ」
「ホへ……ホへへへ……ボヘミア~ン」
ぎぎぎ、と音を立てながら、ぎこちなく笑うロボ・ボトロー。
ニコールは満足気に頷いた。
「完璧ですわ!」
外見はほぼそのまま。中身は歯車と魔力回路で作られた自信作。
多少ぎこちないが、遠目には問題ない。
「さあ、参りましょう。パーティーへ」
◇
「ボトロー様、おめでとうございます!」
「ア、アリガトゥース!! トゥース!!」
「……?」
開始早々、不安でしかない。貴族たちが次々と話しかけてくる。
「お顔色が優れませんな?」
「カオイロ? ワタシハロボ──」
パシッ!
ニコールが、慌ててロボ・ボトローの口を塞ぐ。
「おほ、おほほほ……」
笑って誤魔化すニコール。
「声が変では?」
「き、気のせいですわ……ね、ボトロー様」
「ハイ、キノセイデス……」
ニコールは隣で微笑みながら、冷や汗を流していた。
(まずいですわね……もうバレそうですわ……!)
そのとき。
「ボトロー!」
ボトローの親友、ガルシアが現れた。
「結婚祝いだ! さあ、いつもの腕相撲をしようぜ!」
(やめてえええええええええええ!!)
ロボ・ボトローは腕を掴まれ、無理やり席に座らされる。
「いくぞ!」
ぐしゃ。
ガルシアの腕が、テーブルにめり込んだ。
「……え?」
メキメキ……
バリバリバリバリ……
ドガーン!!
ロボ・ボトローはテーブルを突き破り、ガルシアを床に叩きつけていた。
一瞬の静寂。
「き、鍛えましたのよ、最近……」
ニコールは笑顔で言った。
「そ、そうか……すげえな……」
ガルシアは腕をプランプランさせながら引き下がる。
(危機一髪……!)
しかし、トラブルは続く。
ダンスの時間。
「ボトロー様、ニコール様、お二人で踊ってくださいまし!」
招待客から声が上がる。
ウィーン、ガシャン、ガシャン。
ロボ・ボトローが、機械音を鳴らしながら、手を差し出す。
「サア、ニコール。イッショニオドロウ」
(踊る……? そんな機能つけましたっけ!?)
ぎこちないステップ。
突然の高速回転&ジャイアントスイング。
ドガッ!
ボガッ!
バシューン!
ボガーン!!
なぎ倒され、吹き飛ばされる招待客たち。
「きゃあああああ!!!」
「タノシイ、ダンス、タノシイ」
「そ、そうですわねぇぇぇぇええええ!!!」
ニコールは半ばやけになっていた。
◇
そして、ついにクライマックス。
ケーキ入刀の時間。
無傷の招待客もあと僅か。
「さあ、お二人で……」
ナイフを持つロボ・ボトロー。
しかし、その腕が、震える。
ガタガタガタガタ……。
(まさか、限界……!?)
ビーッ! ビーッ!
「エラー……エラー……」
「ちょっと待ちなさい! ここで暴走は──」
その瞬間。
「ニコール?」
聞き慣れた声に振り向くと──
「……ボトロー様?」
そこには、人間のボトローがいた。
「いやあ、気絶しててさ。今起きたんだけど……」
会場が静まり返る。
全員の視線が、二人のボトローに集まる。
「……え?」
ロボ・ボトローが、ゆっくりと本物を見た。
「タイショウ・カクニン……ハイジョ、シマス」
「「え?」」
次の瞬間。
ロボ・ボトローが本物に襲いかかった。
とっ組み合う二人(?)
「ちょっ……何これ……?」
状況が理解できないボトロー。
そして、会場は大混乱。
「ニコール!? これは、一体!?」
「そ、その……最終試練ですわ! わたくしと結婚するための!!」
「なにぃぃ!? 君と結婚するための最終試練だと……!?」
ボトローは、自分でもキャラがよく分からなくなっていたが、それでも戦う覚悟だけは決めた。
※ここからは、ダイジェストでお送りします。
・先手を打って、ロボが小型ミサイルを発射。それが、通りすがりのカニに直撃。
・カニを貪りながら、ボトローが体当たりするも、ロボが受け止め巴投げ。
・投げられたボトローは、これまた通りすがりの始祖鳥に助けられる。
・ボトローが放った“ワキ、パカパカアタッ~ク”がロボに直撃し、会心のダメージ。
・最終的に、ロボは「死なないで、ボトロー」と言って爆発。
二人(?)の死闘が終わり、再び静寂が訪れる。
「お……おめでとうございます、ボトロー様。あなたこそ、真の夫です!!」
ニコールは満面の笑みで言った。
「フハハハハハ……、やはり俺が真の夫! トゥルー・ハズバンドだ!!」
ボトローも、それに答える。
こうして、二人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし……なのか?
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