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潜入警部と忘れない少女  作者: 青山春彦
第1章 潜入と記憶の導き
8/12

8話 文化祭前夜と爆弾と銃火

 夜の湊高校は、昼間とはまるで別の場所のようだった。

 昼間は、文化祭の準備で賑わっていた校舎も、今は、ほとんど灯りが消えている。

 廊下に並ぶ窓から、わずかな街灯の光だけが差し込んでいた。

 静まり返った校内。その中を、龍二と春菜が静かに歩いていた。

 龍二の手には、小型の懐中電灯。制服の内側には、いつもの拳銃。春菜は、その隣を歩きながら、小さく言う。


「夜の学校って、本当に静かだね」


 龍二は周囲を確認しながら答えた。


「それだけ敵も動きやすいってことだ」


 春菜は、少し肩をすくめた。


「もう、またそんな怖いこと言う」


 龍二は立ち止まった。そして静かに言う。


「もう一度確認するぞ」


 春菜も真剣な顔になる。


「残りの爆弾は全部で3つ」


 龍二が続ける。


「USBの図面から場所は絞れている」


 懐中電灯の光が床を照らす。龍二は、紙に描かれた簡易図を見せた。


「体育館倉庫・旧校舎の理科室・屋上設備室」


 春菜が頷く。


「順番はどうするの?」


 龍二は答える。


「一番近い体育館からだな」


 2人は、体育館へ向かった。

 夜の校庭を横切る。風が静かに吹いていた。

 体育館の裏口へ到着する。龍二は扉を押した。そして扉が、ゆっくりと開く。

 中は暗い。そしてライトの灯りを頼りに、体育館倉庫へ進む。床には器具が並び、棚が影を落としていた。

 そして、春菜が耳を澄ませる。


「……聞こえる」


 龍二が止まる。電子音。


 ピッ……ピッ……ピッ……


 龍二は懐中電灯を床へ向けた。棚の奥。黒いケースが置かれている。龍二は、その黒いケースにゆっくり近づいた。

 そのケースの蓋を開ける。すると、ケースの中にはやはり爆破装置。幸いなことに、タイマーはまだ動いていない。

 龍二は小さく言う。


「遠隔起動型だな」


 春菜が配線を見る。


「これも昨日と同じ構造」


 構造としては、微妙に違うが、だいたいの構造は同じなため、龍二は頷いた。

 ナイフで配線を切る。電子音は鳴らない。そして次に、安全装置を外し、爆薬を取り出す。


「1つ目」


 龍二が言った。春菜は小さく息を吐く。


「あと2つ」


 2人は体育館を出た。

 夜風が冷たい中、旧校舎へ向かう。

 その建物は、現在では普段ほとんど使われていない。廊下は暗く、空気が重い。龍二は懐中電灯を壁へ向けた。

 そして、理科室の前で足を止める。扉は半開きだった。

 龍二は静かに押す。部屋の奥に机が並んでいる。その中央にバッグがあった。


 ピッ……ピッ……ピッ……


 電子音。

 春菜が言う。


「ここ」


 龍二は爆弾を確認した。爆弾の構造は、これまでと同じ構造。龍二は手際よく配線を外す。そして次に、爆薬を取り出す。


「これで2つ目」


 春菜の表情が少し明るくなる。


「あと残り1つ」


 龍二は頷いた。


「屋上だったな」


 2人は、階段へ向かう。夜の校舎はさらに静かだった。だが、階段を上る途中。龍二は足を止めた。春菜が小声で聞く。


「どうしたの?」


 龍二は低く言った。


「人の気配がある」


 春菜の心臓が強く鳴る。屋上の扉の向こう。誰かいる。龍二は静かに拳銃を抜いた。そして小さく言う。


「俺の後ろにいろ」


 春菜は頷いた。龍二はゆっくり扉を押した。

 その瞬間、銃声が夜の屋上に響いた。火花が散る。弾丸が扉の横のコンクリートに当たった。龍二は、反射的に体を横へ滑らせる。春菜の肩を引き、壁の陰へ押し込んだ。


「伏せろ!」


 春菜は、床に身を伏せる。屋上には3人の男がいた。

 1人は拳銃。残り2人は自動小銃を持っていた。そしてその銃口がこちらへ向く。男たちが連続して発砲。乾いた音が空気を裂く。弾丸が床に当たり、コンクリートの破片が飛び散る。

 龍二は壁の陰に身を寄せた。

 呼吸を整える。

 敵は3人。装備は拳銃と自動小銃。距離は15メートル。正面からは不利だった。龍二は、春菜を見る。


「ここから決して動くな」


 春菜は頷いたが、不安そうだった。龍二は拳銃を構える。そして壁の端から一瞬だけ顔を出し、敵の位置を確認する。

 その瞬間、一発撃った。その弾丸が敵の足元の床に当たる。

 敵が体勢を崩すと、龍二はすぐ横へ移動した。敵の銃弾がさっきの位置を撃ち抜く。龍二は、すぐに別の柱の陰へ滑り込んだ。

 敵が叫ぶ。


「囲め!」


 敵2人が左右へ分かれる。龍二は床を低く走った。自動小銃の連射がその背後を追う。弾丸が床に穴を開ける。龍二は換気設備の影へ飛び込んだ。

 呼吸を整え、拳銃を構える。

 右から敵が近づく。足音的に距離は約5メートル。

 龍二は影から飛び出し、二発撃つ。一発目は肩。二発目は脚。すると、その敵が倒れる。

 これで残り2人。

 その瞬間だった。


「動くな!」


 別の男が春菜の腕を掴んでいた。銃口が春菜の頭に向く。春菜の顔が強張る。男が叫ぶ。


「銃を捨てろ!」


 龍二は動きを止めた。

 拳銃を持ったまま、男は春菜を盾にしている。

 龍二と春菜までの距離は10メートル。撃てば、春菜に当たる可能性が高い。

 すると男が怒鳴る。


「早くしろ!」


 龍二は、仕方なくゆっくり拳銃を下ろした。だが、銃を手放さない。

 その時、春菜がわずかに動いた。ほんの一歩。龍二の視線と重なる。春菜の目は冷静だった。そして突然、男の足を思いきり踏んだ。

 男が一瞬怯む。その瞬間、龍二が動いた。

 地面を蹴り、距離を詰める。拳銃を片手で構え、撃つ。その弾丸は男の腕に当たる。

 銃が落ちる。

 龍二はそのまま体当たりした。すると、敵と一緒に床に転がる。龍二はすぐさま、男の腕を掴み、背中へ回す。

 関節が固定される。これで男は動けない。こうして、屋上に静寂が戻った。

 春菜が息を吐くと、龍二はすぐ立ち上がった。


「怪我はないか?」


 春菜は首を横に振る。


「ううん。大丈夫」


 だが、声は少し震えていた。そんな春菜に龍二は近づいた。


「まったく……無茶するなと言っただろう?」


 春菜は小さく言う。


「だって……」


 龍二を見る。


「大黒くんのことを信じてたから」


 龍二は少し驚いた。


「何を?」

「きっと私のことを助けてくれるってね」


 龍二は数秒黙って、それから言った。


「そんなの当たり前だろ」


 春菜は笑った。その顔には、少し涙がにじんでいた。

 龍二は屋上の奥を見る。

 設備室の前に黒いケースが置かれている。


「これが最後の爆弾だ」


 2人は近づく。そして、龍二がケースを開けた。

 タイマーはまだ停止中。そして配線を外して、爆薬を取り出す。


「3つ目」


 春菜が小さく息を吐く。

 夜風が屋上を吹き抜ける。

 文化祭は明日。爆弾はすべて止めた。春菜が龍二を見る。


「ねぇ、大黒くん」


 龍二が答える。


「なんだ?」


 春菜は少し照れながら言った。


「今日、ちょっとだけ」

「?」

「恋人候補の点数上がったかな?」


 龍二は少し笑った。


「ああ、かなりな」


 春菜は嬉しそうに笑った。

 夜の学校に静かな屋上。だが戦いは、まだ終わっていない。

 この爆破計画の本当の首謀者が、まだ姿を見せていない。

『良かった』『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。どうぞ、これからもよろしくお願いします。

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