◆65階層にて
ここはダンジョンの65階層。
この階層は、かつて超凄腕の冒険者オリバーが築いた冒険者たちの楽園。
もちろん、魔物は存在しないオアシスのような階層である。
温泉が湧き、宿屋や居酒屋、武器や防具の店。 エッチな店やらカジノなど何でもある。
また、ダンジョンで怪我をした者たちを治療するための病院や湯治場もある。
そして、今はギルドの支部によって管理され、街の治安も良い。
アレフたちは、73階層にある転移ポートを使い、同じく65階層の転移ポート(ギルド前の広場)へと瞬間移動してきた。
しかし、ティナは暗黒竜、リリィとララはサキュバスである。
そして3人から溢れ出る只者じゃない感で、転移してきて数十分も経たないうちに、ギルド所属のランクA冒険者たちに取り囲まれてしまった。
「この階層に魔物が入り込むなんて、何十年ぶりかだぞ!」
「早いとこ駆除しないと大変なことになりかねんな」
「だれか支部長を呼んで来い!」
周囲は明らかに殺気立ってくる。
「ちょっと待ってくれ。 こいつらは危険な魔物ではない! 俺の仲間なんだ」
アレフが懸命に弁明していると、そこにギルドの支部長がやって来た。
「よう! アレフ。 久しぶりだな」
「おっ、なんだブレントじゃないか! 助かった。 この冒険者たちを何とかしてくれないか」
ブレントは、アレフたちを順番に眺めると。
「ふうん。 そっちのお姉さんは美人なのに、すごい威圧感があるな。 危険なにおいがプンプンするぜ」
「いや、本当に人間には何も危害を加えたりしないって! 俺が保証するよ」
アレフは早くうまい飯を食べて、その後ゆっくり温泉に浸かりたいので、必死に説得を試みる。
「アレフ。 分かってるよ。 そこのお姉さん1人で、この階層ごと簡単に滅ぼせる。 俺も伊達にギルドの支部長をやってるわけじゃない!」
「ならば・・」
「なあ、アレフ。 俺も馬鹿じゃない。 お前がこいつらを大人しくさせるって約束すれば、お前たちの滞在を許可する」
「ほんとうか。 約束するぜ、こいつらは俺がしっかり管理するよ」
「OK。 その言葉忘れるなよ!」
そう言うとブレントは冒険者たちに目配せし解散させた。 そして自分もギルドの建物へと歩き去って行った。
「ふぅ・・ 何とかなったな」
「アレフは、ブレントと知り合いなのですか?」
めずらしくティナが、アレフに話しかけてくる。
「ん? あぁ、同郷の幼なじみだ。 会うのは5年ぶりってとこかな」
「そうですか。 あの人はアレフと同じくらい強いですね」
「そんなことも分かるのかよ」
「あの人も、わたしの力量を見抜きました」
「いやいや。 ティナのそのオーラと言うか、隠しきれない邪悪な気は誰にでも感じ取れるだろ」
「・・・」
ティアが無言で俯くとアレフはまずいことを言ってしまったと気づき少し慌てた。
「あっいや。 そ、そんなことより、まずは飯だな。 ちょうどあそこに酒場がある。 今の時間なら食い物も頼めるぞ」
「わたしは何も食べなくても、あと200年は大丈夫です」
ティナは少し寂しそうに笑う。
「リリィとララも人間の食べ物じゃ、お腹はいっぱいにならないよ」
サキュバスたちもあまり機嫌がよくない。
「それじゃあ、俺だけちょこっと行ってくるわ。 悪いがお前たちは、この広場からは動かないで待っててくれ」
「わかりました」
「いいか絶対に面倒事を起こすんじゃないぞ!」
そう言ってアレクは、酒場へと向かった。




