◆出航準備
アレフはララたちに幽霊船まで引っ張って来られた。
「結構でかい船だな」
見上げるような、その船の全長は50mはありそうだ。
それに、もと船員のスケルトンたちは、30名近くいる。
この大きさだから、ワニや水龍も攻撃してこないのかも知れない。
アレフは、古さを感じさせない船体に感心しながらも、船の隅々までチェックして行く。
もしこの船に乗せてもらえるなら、自分の命を託すことになるからだ。
動くのかは分からないが、船の両舷と船尾には大砲も積んである。
もしかしたら何十年か前に、この階層まで到達した冒険者たちが、ここで船を建造して98階層を目指そうとしたのかも知れない。
ざっと見た限りには、船体に大きなダメージは見つからない。
という事は、この湖があまりにも巨大であり、湖岸の向こうに到達するのは不可能だったという事だろうか・・・
だとしたら、アレフがこの船に乗るためには、大きな問題がある。
そう、食料ときれいな水が必要なのだ。 それもかなりの量になるはずだ。
まずは、湖の周辺を調べて、食料を調達しなければならない。
肉は、ワニを狩れば何とかなりそうだが、干し肉にしたりするには、何日かはかかるだろう。
水を入れる樽は、船の倉庫にあったので湖の水をろ過し、煮沸してその樽に詰めればいい。
あとは、肉以外の食べ物が見つかるかどうかだ。
湖の周囲は断崖絶壁が続くが、一部は砂浜のような所もあった。
小さな川がいくつか湖に流れ込んでいて、両側にはジャングルのように木々がうっそうと茂っている。
もしかしたら奥には、木の実や小動物などがいるかも知れない。
***
**
*
アレフは、忙しそうに働くスケルトンの中で、キャプテンらしき帽子と首に双眼鏡をかけている者を見つけ声をかけた。
「あなたが、この船のキャプテン?」
だが、そのスケルトンは顎をカタカタ動かすだけで、声を発することはなかった。
「もし、可能だったら俺と仲間をこの船に乗せてもらえないだろうか? もちろん礼はさせてもらう」
するとスケルトンは、ゆっくりと首を縦に振った。
「おお、そうか。 ありがとう。 感謝するよ」
アレフは嬉しさのあまり、スケルトンの両手を強く握り、ブンブンと上下に振った。
するとバキバキッと音を立て、スケルトンの腕が肘の関節から外れ、床に落ちてしまった。
「ああっ! すまない。 悪気はなかったんだ」
しかし、スケルトンは、無言で床から骨を拾って自分で付けてから立ち去ってしまった。
「まったく取れたのが頭でなくてよかったぜ。 しかしスケルトンって案外ともろいんだな・・・ あのキャプテン、怒ってないといいんだが」
それから、5日後の早朝。
水とかなりの量の食糧を積み込、アレフたちが乗り込んだ船は朝焼けの中、静かに湖岸を離れたのだった。




