海
「お兄ちゃん、見てみて。海だよ、海」
電車の窓から見える海は確かにきれいだ。
現在、俺等は町から1時間位の所にある浜辺を目指して、電車に揺られている。
「おぉ、これが海なのじゃな」
「真奈、そんなに窓から乗り上げると危ないわよ」
真奈と美雪、がそんなやり取りを繰り広げている。
真奈も初めて近くで見る海に興奮しているようだった。
目がきらきらしているし、何よりいつもより楽しそうだ。
特にいつもボディーガードについている黒スーツの男達がいないからどうやら気が楽のようだ。
今回の海は俺と美雪がボディーガードについていることを理由に真奈が門脇さんを説得したのだ。
門脇さんは最初は反論をしたものの、俺と美雪が以前真奈を救ったことがあることをだしに真奈が説得をし、何とかなったのだ。
お気の毒だと思う。
「もうそろそろ着くぞ。忘れ物をするなよ」
「了解じゃ」
「お兄ちゃんテンション低すぎるよ。友梨亜のテンション激下がりだよ」
「いいえ、友梨亜ちゃん。雄二も結構テンションが高いわよ」
どうやら美雪にはテンションが高く見えていたらしい。
真奈もうなづいていることからどうやら真奈も俺がテンションが高いことが分かっているのだろう。
この2人にはかなわないな。
あまり2人には隠し事ができないみたいだ
「次は△□駅、△□駅になります。お降りのお客さまは……」
「じゃあ降りましょうか」
先頭を歩く美雪に続くように俺等は電車を降りた。
「じゃあ俺は、パラソル立ててるから美雪達は着替えてきなよ」
「分かったわ」
そういうわけで俺は1人でパラソルを立てることになった
今回の海へのメンバーの男は俺1人なのでしょうがないが、さすがに1人はさびしい。
早くみんな帰ってこないかな。
ちなみに俺はズボンを下ろせばすぐ海パンになれるのでそれほど時間はとらないのである。
男の着替えって早いんだぞ。
それから待つこと15分、美雪達が列を作ってぞろぞろと外へ出てきた。
まず目に入ったのは美雪の水着である。
ホルタータイプのビキニで美雪の魅力を引き立てている。
そして後ろの友梨亜はフリルがついた可愛い模様のビキニである花柄。
パレオをつけているあたり、大人の魅力でも意識しているだろうが年相応の可愛らしさである。
そして最後に真奈である。
でも、何でお前だけスクール水着なの?
胸の真ん中に【2-B 高宮】と書いてある。
「なぁ、真奈? 何でお前はその水着なんだ?」
「バカ者。本当の大人の女性はこういう水着を着ると友梨亜は言っておったぞ」
あぁ成る程。こいつは友梨亜に騙されたのだな。
あわれなり、高宮真奈。
「雄二、真奈。早くこっちに来なさい。水が気持ちいいわよ」
先にパラソルに荷物を置いた美雪と友梨亜は海に入っていた。
「わかった。すぐ行く、真奈行くぞ」
「言われなくても分かっておるわ」
そう言いながら、俺と真奈は美雪達が待っている海へと向かった。」
「友梨亜よ。この茶色いそばは一体なんなのじゃ?」
「真奈ちゃん、それは焼きそばって言って麺にソースをかけて野菜とか肉とかと一緒にいためたものですごくおいしいんだよ」
「どれどれ……うん美味である。こんな料理も存在したのだな」
真奈は初めて食べるソース焼きそばに下鼓しているようである。
あれから俺等はビーチボールで遊んだり、泳いだりした。
そして現在海の家でお昼ご飯を食べている。
真奈はどうやらソース焼きそばや、かき氷といったものは食べたことがないらしい。
それにしても改めてみるとこの3人の少女のレベルは高いと思う。
美雪は元よりそうだが、真奈と友梨亜に関しても将来がすごく楽しみなレベルである。
「雄二はどう? こんな可愛い子に囲まれて食べるご飯は?」
「美雪は俺の思考でも読み取ってるのか」
あぁ、役得だよ。
俺にはもったいないよ。
「それならよかった。雄二も少しは素直になったわね」
「俺は元から素直だよ」
「いや、雄二は童と出会ったときはひねくれておったからの。今は少しはましになったと思うぞ」
「確かにお兄ちゃんは元々ひねくれていたもんね」
3人とも俺に対して酷い言い様である。
確かに俺はひねくれてはいるが、そこまで言うのは失礼である。
「それじゃあひとしきり雄二をいじった所で午後は何をしようか?」
「童はもう少し、ビーチバレーをやりたいのじゃ」
「友梨亜も賛成だよ。もう少し体動かしたいな」
「じゃあ決まりね。もう少しビーチボールをやりましょうか」
そう言って午後にビーチボールをやることが決定した。
「ふぅ、結構こうしているのも疲れるの」
「お疲れ様。ジュース買ってきたから一緒に飲まない?」
先ほどまで海辺で友梨亜と真奈とビーチバレーをやっていた美雪もパラソルに戻ってきていた。
「今日はありがとう」
「何がだ」
「こうして皆で海で遊べるのも雄二のおかげよ」
「そのことか。俺は特に何もしていないよ。元々美雪が発案したことじゃないか。俺はそれにのっただけだよ」
「違うわよ。今こうして真奈や友梨亜ちゃんと遊べるのも雄二が引き合わせてくれたから。そのことに私は感謝しているの」
そういい、美雪はこちらを見て微笑んだ。
「ありがとう。雄二がいなかったら私こんな楽しいことがあるなんて知らなかった。雄二と一緒に行動するようになってから私の世界は変わったの」
「美雪、それは違う。変わったのは美雪が変わろうとしたから変わったんだよ。俺は特に何もしていない」
人は自分で変わろうと思わなければ変わらない。
それを俺は前の世界で散々理解した。
俺は特に変わろうと思わないし、変わりたいとも思わない。
だから俺は昔のまま。
特には変わっていないのだ。
「雄二はアウトブレーク前の私の噂も全て知ってるのでしょ。私がどんなことをしていたのかも」
美雪は何かを必死に振り払うようだった。
自分が昔起こした過ちを振り払うように。
「お前が由良とやっていたことだろう。他の奴へのいじめとか。」
この話は、俺が前の世界で聞いた話だ。
彼女が由良達と結託して、ある生徒を退学に追いやったという話。
その他にも由良に逆らうやつや美雪の嫌いな奴も退学まで追い込んでいたらしい。
俺はその話を美雪に直接聞いたため、俺は知っている。
「他にも雄二も知っているでしょう。私が薬の売買をしていたとか、毎日由良と朝まで遊んで立って話も」
確かにその話は俺も知っている。
学校で流れていた噂の1つにあった。
「でも、噂は噂でしかない。そうだろう? それとも美雪は本当にそれをやったのか」
「いや、私はやってない。そんなことを由良達がやっていたことすら知らなかったわ」
「なら、それでいいじゃん。俺は美雪が言っていたこと以外は信じる気はないよ」
そう、噂はあくまで噂でしかない。
噂も大切な情報だが、誤りもある。
だから俺は基本的には本人から聞いたことしか信用していない。
噂に踊らされるほど滑稽なものもないしな。
「それに今は何も悪いことはしていないんだろ」
「当たり前でしょ。もうあんなことは2度とやらないわ」
「ならいいんじゃないか? 反省を次に生かしてるんだし。同じことを繰り返さなければ俺はいいと思う」
そういい、俺は笑顔で彼女に笑いかけた。
昔のことは俺はどうでもいい。
美雪も沙耶も真奈も友梨亜も今の俺にとっては信用できる。
だから俺は彼女たちを何があっても守ろうと思う。
たとえこの世界で自分の命が尽きようとも。
「これ、雄二と美雪お主たち何やっているのじゃ?」
「お兄ちゃん達もビーチバレーやろう」
「ほら、美雪。友梨亜達が呼んでいるから行こう」
「そうね、行きましょう」
そういい、俺と美雪は真奈達の所へ向かった。
「今日も聞けなかったわ」
私は電車の中で1人誰にも知られないように呟く。
私達は帰りの電車で帰っているのだが、今は皆寝ている。
真奈も友梨亜も、そして雄二も遊び疲れたのだろう。
それにしても雄二の寝顔は本当に可愛いい。
特に口からよだれが垂れている所も子供っぽくていいと思う。
「だから気になるのかな」
雄二が妙に大人っぽい所とか。
今日は私が雄二に痴態をさらしてしまった。
その内容は前の世界で雄二に話した内容と同じものだが、考えていることが違った。
前の話は私が救われたかったから話したこと。
1人退学に追いやってからは由良にそのことをゆすられ続けて、由良に敵対する色々な人達を陥れた。
そのことに対する罪悪感は今も私の中でくすぶり続けている。
ただ、こうしてもう一度チャンスをもらえたのだから、今度は間違えないようにしたい。
あの時のようなことは絶対にしてはならないし、おこしはしない。
そう私はこの世界に戻ってきたときに誓った。
それよりも私は雄二のことがすごく気になっている。
彼は基本的には本人からの話しか信用しないと言っていた。
そして、人の噂も信用しないと。
どうして彼はそこまで割り切って考えることができるのだろうか。
多分そのことは彼の……雄二の過去に関係があると私は思っている。
よくよく考えれば私は雄二のことをよく知らない。
私が知っている雄二は、面倒なことが嫌いだが優しく、誰にでも手を差し伸べる強くて優しい人と言うことだけだ。
だからこそ私は雄二の根底にある優しさが何なのかを知りたかった。
多分それは前の世界、もっと言うと私と出会う前の世界に関係しているのだろう。
「いつか聞ける日が来るのかな」
雄二が私に心を開いてくれてその話をしてくれた時、本当の意味で私達は恋人になれるのだろう。
それがいつになるかはわからないが私は待っている。
雄二がその話をしてくれることを。
ご覧いただきありがとうございます
感想をいただけるとうれしいです
閑話はこれで終了し、次回からは新章に入ります。
この後雄二の昔話を書こうと思っていたんですが、書ききれませんでした。
また、機会があればのせようと思います。
次回も宜しくお願いします。




