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緋の暁光《あけのぎょうこう》  作者: KY
序章 いつか、あなたを繋ぐ為のーー
9/12

幕間 残夜

 珍しく、夜中に目が覚めた。どうも外が少し騒がしくて、そのせいで起きてしまったみたい。


 二階にある自分の部屋から、一階まで移動する。

階段を降りきる少し手前で、リビングに居るお父さんと目が合った。


「雫…!ごめん、起こしちゃったかな…?」


「別に大丈夫。だけど…。」


 お父さんは、この前会った女の子――緋乃(ひの)を抱えてて、二人の服には血が付いてた。どう見ても、普通の状況じゃない。


 ただ、お父さんは暴力をする人じゃない。

となると、考えられるのは、


「…厄介事に巻き込まれた?」


「……そんなところ。この子と一緒に(うち)に来た人、いるだろう?その人のことで、ちょっとね…。」


 その人は確か、お父さんの仕事の先輩。顔が怖めの人だったけど、悪い人じゃなさそうだった。

 けど、


「それで、また、すぐに外に出なきゃいけないんだ。やらなきゃいけないことがあって…。」


 お父さんの表情からして、あんまり良い状態じゃなさそう。

緋乃(ひの)を抱えてきたのも多分、それが理由。


「帰ってくるまで、少し時間が掛かると思う。(しずく)、この子のこと頼んでもいいかい…?」


「うん。任せて。」


 それくらい、断る理由はない。

明日も学校だけど、朝、ちゃんと起きられなかったことはないし、この子の面倒を見てから寝ても全然大丈夫。


「ごめん、ありがとう…!じゃあ、行ってきます!」


 バタバタと、慌ただしく家を出ていくお父さんを見送って、玄関の鍵を閉めた。


「さて。」


 お父さんは多分、『ソファに寝かせてタオルでも掛けてあげて』くらいの気持ちで、私に緋乃(ひの)のことを頼んだんだと思う。


「…でも、凄く疲れてそうなのよね。」


 服も体もボロボロだし。ちょっと苦しそうな顔してるし。

だから、ベッドに寝かせてあげたい気持ちはある。けど、血とか埃で汚れたままベッドに入れてあげる程、優しくもない。

 ので、


「身長も体型もほとんど一緒だし、私の服入るわよね…。」


 服を着替えさせることにした。

二階のロッカーから、適当な服とタオルを引っ張り出して、また一階に降りて洗面所でタオルを濡らして絞る。


「よい…しょ…。」


 緋乃(ひの)の服を脱がして、タオルで全身を軽く拭く。

ここまでやっても起きる気配がないあたり、やっぱりかなり疲れてるみたい。


 結構大変だったから、少し汗をかいた。ついでに、私の顔もタオルで拭く。


「ふぅ…。うっしょ…っと。」


 着替えさせた緋乃(ひの)を背負って、手すりを掴みながらゆっくりと階段を昇る。

 緋乃(ひの)の体重はあんまり重くないと思うけど、それはあくまで同年代の中での話。私もこの子と同年代で、ほとんど同じ体型な以上、自分と同じ重さの物を運んでいるようなもの。

 つまり、この子がどんなに、大人なら簡単に運べるくらいの軽さでも、私にとっては凄く大変。


 少し息を切らしながら、私の部屋に到着。なんとか肘でドアノブを引いて、中に入って、閉めるときは足で後ろ蹴り。肩を使って電気を点けて、ようやく緋乃(ひの)をベッドに降ろした。


「はぁ〜…疲れた…。」


 大きく息を吐いて、素直な感想を(こぼ)す。またちょっと汗をかいてたから、タオルで拭く。


 少し息を整えた後、私もベッドに潜り込む。タオルは、とりあえず枕元に置いておく。

 丁度、疲れたところだし、割とすぐに寝れそう。


「………しぃ…。」


 と、思ってたところに、隣から声が聞こえてきた。

目を覚ましたのかと思ったけど、どうやら寝言みたい。


「……さみ……しぃ………。」


「――――。」


 緋乃(ひの)は苦しそうな顔で、そんな言葉を口にした。


「……何それ。」


 それは、ちょっと気に入らない。

別に、お礼を言われるとか、そういう対価が欲しくて面倒を見た訳じゃない。そもそも、大層なことをしたとも思ってない。

 でも、


「私の隣に寝ておいて、寂しがるとか許せないんですけど。」


 家族以外の隣で寝るのなんて初めてだし、自分で言うのもなんだけど、私はそれなりに優秀だから『私の隣』は安くない。


「なのに、隣で暗い顔されるとか、むかつく。」


 本当、気に入らない。

だから、軽く手を握った。


「何があったのか知らないけど、今、あんたの隣には()()()()でしょ。苦しくても、悲しくても、()()()()()()()()()()()()()()()でしょ。」


 寂しくなるのは、独りだから。

良いことも悪いことも話せる相手がいないとき、寂しくなる。


 でも、今の緋乃(ひの)には私がいる。寂しいなんて言われるのは、凄く心外。


「…………。」


 緋乃(ひの)の手が、少しだけ握り返してきた。顔色も、さっきよりはマシ。

 うん、それでよし。


「…ふぁ……。」


 いい加減、私も眠くなってきた。

明日も学校だし、緋乃(ひの)の顔色も良くなったし、もう寝よう。


 繋いだ手をうっかり強く握りすぎないように、と思いながら眠りについた。

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