序/七 ーー目覚まし時計を止めるような
「――――……………っ…ぁ…。」
目からこぼれた水が 止まらなくて。
頭の中が ぐちゃぐちゃしてて。
体がふるえて おかしくなりそう。
「はははははははははははッ!!!」
近くで すごくいやな声がした。
「おいおい!なんだよ、そりャあ!人間一人、死んだだけだぜ!?」
声はどんどん 頭のおくに入って来るようなかんじがする。
――――うるさい。
「どうでもいいだろ、そんなもん。お前は、人間じゃないんだから。」
声が すこしづつ近づいてくる。
――――すごく うるさい
「お前は、『こっち側』の存在だろ。俺と来い。人間との本来の関わり方を、教えて―――」
佐堂さんを しなせたモノが すぐ近くで うるさい声を出してる。
あたまの おくで じりじりと
「……ぁ…っ………ア…ァ……ッ!」
―――――――――本当に うるさい
「〓〓〓〓〓〓〓〓―――――――――――!!!」
そのとき、わたしの口から聞いたことのない声が出て、とつぜんきえるみたいに、いしきがとぎれた。
―――――――――――――――――
「―――………はぁ…っ…、っ……は…。」
気がついたら、すごくきもちがわるくなってた。まわりを見たら、じめんはガチャガチャになってて。
…あの、いやな声を出してたモノは、いなくなってた。
どうなったのか分からないけど…いないなら、いい。
「………………佐堂さん、は…?」
近くにいなくて、もっとよくまわりを見る。
……見つけた。
いしきがとぎれる前より、はなれたところにいる。いつもより動かしづらい体をなんとか動かして、佐堂さんのところまで、歩く。
「……………………。」
となりに、すわる。
佐堂さんの体は、さっきと変わってない。お腹はなくなったままで、『ち』がたくさん出ちゃったから、もう、おしゃべりはできない。
佐堂さんは、『しんだ』――。
「……っ…!」
このまま『家』に行っても、だれもいない。
わたしはこれから、ひとりで、いきなきゃ…。
それを考えると、また目から水がこぼれてくる。きもちがぐにゃぐにゃで、体も動かしづらくて。
じぶんの体を見てみると、ふくも体もたくさんよごれてた。
それに気づいたら、なんだか体の力がぬけて、そのまま、たおれた。
たおれたら、空が見えた。
すごく、くらくて、人は『ねる』じかん。
わたしも、きのうまでの、よっかはそうだった。
今とおなじように、佐堂さんのとなりで横になって。
「……。」
手を、にぎる。
すこしくらい元気になれるかと思ったけど、ダメだった。
むしろ、さっきより…、
「…………『さみしい』よ…佐堂さん…。」
話しかけても、何もかえってこない。
また目から水がこぼれて、それからすこしづつ、いしきがとじていく。
さっきとはちがって、ゆっくりと。いつもとおなじように、佐堂さんのとなりで。
――――そして、この日々は終わる。
けれど、『運命』は終わってない。それでも、わたしは生きていく。
佐堂さんがくれた大切なモノを、胸に刻んで歩いていく。




