一/九 波乱の呼び声
気持ちを切り替えて、わたしの部屋で雫ちゃんと談笑中。窓の日差しに目を向ける。
今日はとっても天気が良くて、心地良い気温。昨日、灰くんと話した後、今日は外で体を動かしたいって考えてたから、丁度良い環境。
折角だし、雫ちゃんも誘ってみようかな。
「雫ちゃん、今日は外に出て動きたいと思ってるんだけど、良かったら一緒にどうかな?」
「んー、そうね…良いけど、具体的に何するかは決めてるの?」
「えっと…ごめん、まだ決めてない…。」
そういえば、とりあえず体を動かしたいって思ってただけで、何をするかは全然考えてなかった。
反省。
「まあ、別に急がなくても、午前中は家で過ごして午後から外で運動でも良いし。」
「そうだね。お昼までには決めとく。」
運動の内容は一先ず保留。
ぼんやりとどうしようかを考えながら、雫ちゃんとのおしゃべりを再開した。
「そうだ。昨日も生徒会業務の前に、少し瑠佳と話したのよね。今回は、話しかけたの私だけど。」
「珍しいね、そういうの。何かあったの?」
どんなことでも、キッチリ時間を守ってちゃんとやる雫ちゃんが、仕事の直前に別のことに時間を割くなんて。なにか特別な事情がない限りしない筈だけど…。
「自分がした話の所為で、緋乃に元気が無くなったから、あの子の方も落ち込んでたのよ。だから、緋乃はそんなの気にしないって言っておいたわ。」
「あ………。」
そっか…。瑠佳ちゃんも優しいから、わたしに元気がなくなって、責任を感じさせちゃったんだ…。
落ち込んでる瑠佳ちゃんの様子に、わたしは全然気付かなかった。自分のことで一杯になって、周りが見えなくなっちゃってた。
昨日のわたしは、とことん冴えてない。
「ごめん、雫ちゃん…。わたしの代わりに――ぁいたっ…!?」
本当はわたしが、自分で瑠佳ちゃんに言うべきだったことを代わりに言ってくれた雫ちゃんに、謝ろうとした。そうしたら、おでこを人差し指でつつかれた。
「暗い顔させるつもりで言った訳じゃないわ。むしろ逆。瑠佳もアンタも、お互い相手が笑顔の方が嬉しいって思ってるんだから、次に顔合わせたときは笑顔でいてあげなさい?」
「……!」
確かに、雫ちゃんの言う通りかも。
しょんぼりした顔で謝るより、笑顔で大丈夫だよって言う方が、きっと瑠佳ちゃんも笑ってくれる。
うん、きっとその方が良い。月曜日の朝、瑠佳ちゃんに会ったらそうしよう…!
「あと、そのときに連絡先交換したから、それ伝えとこうと思って。」
「…!?」
なんと。いつの間にか、そこまでの仲になっていたとは。びっくり。
雫ちゃんからそういうことはあんまりしないから、瑠佳ちゃんの方から提案したんだと思うけど…。流石、瑠佳ちゃん…距離を詰めるのが早い…!
「いいな…。わたしも、瑠佳ちゃんと連絡先交換したい。」
「なら、午後の運動、瑠佳にも声掛けてみる?あの子、体動かすの好きそうだし。」
成程…!確かにそれはいいかも。瑠佳ちゃんもいたら、きっともっと楽しい。
「そうだね…!聞いてみて貰っても、」
いいかな?と言い掛けたところで、家の外から不思議な音が聞こえた。
「?何だろう…?」
何の音か分からずに首を傾げる。雫ちゃんの方を見ると、どうやら雫ちゃんにも聞こえたみたいで訝しげな表情をしてる。
「ぴ…、………ーーん…。」
尚も響き続ける音に、集中して耳を傾ける。
これは、もしかして…、
「人の声………?結構近いわね…。」
わたしと同じように、雫ちゃんも人の声だと思ったみたい。もっと声をハッキリ聞く為に、雫ちゃんは窓に手を掛ける。
そして、窓を開くと――――
「ぴんぽーーーん!!ぴんぽーーーん!!」
そんな言葉を連呼する、奇妙な声が聞こえてきた。




