6話 変身少女
実は鵜ノ崎は、途中から帰ってきていた。
つまり、見ていた。聞いていた。
しかし途中からだけだ。
「分かんないんですかあ?」
――あたりから。
そして今。割り込み時を見失っていた少女は今だと飛び込んだ。
「ネーレちゃんってすごい子なの?」
「……いつから聞いてましたかあ?」
我が子の成長を喜ぶようなキラキラの目をした鵜ノ崎。
実は一応、人払いの結界は張っていたのだが、あっさり飛び出てきた少女の様子に警戒する綷賀。
そして放置される饗庭。
饗庭はバディである鵜ノ崎の法規を知っているが、綷賀は鵜ノ崎と面識はない。
結界は対外に向けて張っていた。つまり元から中に入っていれば凡人でも入り込める。
この非科学的技術や法規と呼ばれる異能が蔓延る世界では、どんな情報がデメリットになるか分からない。
必然的に実年齢云々の件で警戒する綷賀だが……
「ネーレちゃんを連れて行ってってところぐらいからだけど。そういえば貴女は誰かしら?」
「はあ……第四連絡隊の綷賀デス」
確かめようがない。諦める綷賀。
「あーあのいつもうるさいこ……。そんな喋り方だったかしら?」
「あっ。えーなんのコトでしょうかあ?」
「気のせいよね。んんー。あーそうそう。晶斗ー……? あれ、いない」
「えー」
◆┃◆┃◆┃◆
退屈だったので部屋に戻った。
仁王立ちの黒髪ロングがいた。
「少年。キミは我が力を必要とするようだね」
「はあ?」
なんか全体的に見覚えはあるが髪の色とアホ毛が違う。アイツは白髪だしアホ毛もツンツンだった。
全体的に黒い少女。この間拾ってその辺に放置した覚えのある眼帯と、カラコン? 瞳が赤いのとレティクルのミルドットのような模様もついている。
でも頭頂部のアホ毛はそのままだ。
服は今朝見たのと同じ、というかいつも着ている無地のダボT、裸足。
一応聞く。
「誰だお前」
「ネーレ、と呼ばれている人物に相違ない。だが別に彼女に私の記憶は共有していないし、肉体は同じだが心は違う。別の名前をつけてくれ。いわゆる別人格と言うやつだからな」
(ややこしい!)
「彼女が嫌いと言う訳じゃあないし、名字を変えてくれるだけでも良いよ? ちなみに元の名前はともかくあの子はプロトだし、彼女がネーレ=プロトという感じでどうだろう」
一人で話を進めるネーレ(仮)。状況の理解が追いついていない。コイツあれだ、少しナルシスト混ざってるタイプだ。厨二拗らせたかわいそうなやつだ。
「じゃあお前は鵜ノ崎寧」
「勝手に姉を設定した上に微塵も跡形が残ってないとは言いきれない名前の付け方だね……?」
寧は怒りたいけど怒れないやむにやまれぬ感じだった。
なんかこういうのって反抗したくなる、というのが饗庭であり、しかしギリギリ怒られないラインを攻めるのも彼の特技だった。
そうだ。
「この眼帯外すとどうなる?」
「いや元に戻るけど」
「意味が分からない」
引っ張ってみる。
「イタイヨ……」
「ほんとに戻ってる」
ボサボサの白髪に黄色の目。ビーチサンダル。ダボT。
引っ張るのをやめてみる。ちなみに眼帯の紐部分はゴムである。
……ばちんと鳴った。
「痛いなっ!?」
「ふうん」
「いや反応薄くないかな!?」
整った黒髪。模様の入った赤い瞳。裸足。ダボT。
(恐らく服、いや。身につけているものによって外見、性格が変わるといった感じか。迂闊に色んな服着せない方が良さそうだ。何がだめか分からない。)
概ね正しい。少し違うが。




