4話 『ひみつのやしき』
……晶斗と離れた叶恵は、『秘密基地』に向かっていた。
天叢雲の弱点が露呈した為、一旦それをしまっておく、もとい封印することにしたのだ。
敵の形質が定まっていない巡回中や休憩中の動員において、零装に求められるのはどの場面でも対応できる汎用性だと叶恵は考えている。
「―――♪」
鵜ノ崎の秘密基地は、元お屋敷だった施設だ。管理が行き届いていて、妙に小綺麗だ。本来大抵の施設は今、死んでいる。
ただ幸い、その書庫の一部の書物は生きていた。叶恵の能力が能力である。この施設はまさに彼女にとって天国だった。珍しく設備も生きているモノが多く、工房もある。
◆┃◆┃◆┃◆
そもそも零装とは。
海魔には、普通の攻撃もダメージになる。だからどうしたと思うだろう。ダメージにはなる。しかし個体によっては耐久力の高いヤツがいて、無論ソイツ相手にも十分なダメージを与えたい。
そこで、旧政府が秘密裏に隠匿してきた非科学的技術を取り込み、扱えるようにしたのが零装だ。定義には一応能力も含まれる。基本的には能力はまた別の呼び名で呼ぶのだが。
叶恵は支給零装を分解しているので発掘したものをそのままあるいは手を加えて転用し扱っている。そういった彼女の零装の数々もまたここに保管されている。本人的には、『デッドスペースを有効的に活用しているのだから感謝されても叱咤はされぬべき』と、考えていた。その旨もなぜか執拗に基地の移転を命じる上層部に訴えているのだが退去命令は止みそうににない。
鵜ノ崎的にはここは譲れない。旧屋敷は大きい建物(?)だ。秘密と呼ぶには悪目立ちする。
しかし、だ。どうやら旧政府が秘密裏に隠匿していた技術の一端による代物だが、建物は侵入を試みるモノを阻む結界に覆われているようで、シェルターに相応しい施設と言える。まだ触れていないシステムや機材は数ある。まさに基地なのだ。
そんな場所で一人、鵜ノ崎叶恵は零装構築に勤しんでいた。
◆┃◆┃◆┃◆
これまた零装をいじくり回す少年と、かれこれ5年は建物を出ていない少女は、帰りの遅いもう一人の同居人を待っていた。
「誰か私に優しくしてほしーい」
「そんなこと言ったって俺はお前が人間かどうかすら怪しいと思ってる」
本気かどうか読めない顔で、口だけ笑ってそういう。大概ふざけて言っているのだが、目がいつも死んでいると言われるので本気に聞こえるらしい。
「ひどいっ」
対してネーレはどこまでいっても素直だった。
◆┃◆┃◆┃◆
時を同じくして、倒れ伏すそれらに目もくれず、遠い地であるモノは呟いた
。
「もうちョッと面白くならないかなァ……あのときみたいにさァ」
ぽけーっとぼんやり宙を眺める。
◆┃◆┃◆┃◆
不思議な少女は、随分気軽に一つ尋ねてみる
「……そういえばー。饗庭くんのご両親って海魔に殺されちゃたんだっけー」
「なんともまあ唐突な質問だが……少なくとも俺はそう聞いてる。見たわけじゃないしそのとき何してたかも曖昧なんだ」
なんだかんだで質問には答えてしまうのが饗庭晶斗という人間で、現代の倫理観に若干のズレがあるのが、ネーレという少女だった。こう見えても面倒見は良かった。ネーレはああ見えてはっきり言うタイプだ。いつもぼんやりしているが。
「で? そんなこと聞いてどうする」
「いやー。なんでも」
「……?」
含みのある言い方に、その時はただ首を傾げることしかしなかった。




