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海放戦線  作者: あるかぱ
第二章 『知己と結社』
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19話 ヴェールヌイ

 「どゆこと。ヌイ」

 「おやおやようやく少年が戻ってきたかと思ったら君いつの間に彼に接触したのかなそれと随分入れ込んでいるんだねえ」


 あのあと医者(対海魔科の人)に事情を説明し、そして先程までいたとある場所に戻ると、予想通りまだソイツはいた。何やら細かい事情まで知っている口ぶりだったので、饗庭は聞こうと思っていたのだが、顔は見えないがむすっとしていそうな雀が着いてきた。黒いヴェールを被った、水牛を想起させる無機質な角が生え、背が高くないが低くもない、黒い西洋喪服のようなドレスを着た怪しい女と伝えると有無を言わさず着いてきたのだ。


 「それで? アンタ何なんだ」

 「だーからすぐ結論を急くんだからーまったくもーしょうがないやつだよー。ねえ、ランb……」

 「そっちで呼ぶな。白だ白」


 何か言いかけたが雀にすぐ遮られ訂正させられていた。そしてそれに「ヌイ」と呼ばれた者はため息をつく。


 「なんの目的で来たワケ。ヌイ」

 「ヌイヌイ言うないばかやろーホントキミぐらいだよそう呼ぶの。てか皆安直すぎない良くないよね。いくらこんなの被ってるからって『ヴェール』で『ヴェールヌイ』とか名前つけちゃって迷惑だよなあ。戦艦じゃないんだけどこっちはさ」


 あんまりだといった様子でペラペラしゃべる「ヴェールヌイ」だが、涸沼は変わらず、むしろもっとずいずい詰め寄る。


 「答えて」

 「あれ? 今『白』じゃないんだね。この条件下でキミなんだ。へえ。あー混ざってんのかなまあどっちでもいいけどさ」

 「……」


 しかし変わらずしらばっくれて話を逸らし、しかも意味深なことをいうヴェールヌイ。しかし。


 「あのな。俺もいるんだが」

 「「……はぁ」」


 (何なのコイツら……)


 ◆┃◆┃◆┃◆


 「おい待てこんなのおかしい」

 「うるさい」

 「んじゃしばしお待ちを~」


 なんか閉め出された。


 ◆┃◆┃◆┃◆


 どういうわけだか防音結界でも張ったらしい。しばらく完全放置だった。


 しばらく待つと声が中から響いてきた。


 「入っていいよーアキくーん。いやいくら読んでもこの呼び方面白いね」

 「その呼び方やめろ」


 ドアを開けて中に入るとヴェールヌイはソファにくつろぎ雀はその辺に立っていた。


 「えー? お姉さんに呼ばれるのはいいくせにねえ」

 「ん? お姉さんいんの?」

 「ややこしくなるからやめろ」


 これ以上本題に入るのを阻止されたくはない。


 「んで? ヴェールヌイはなんでそんなに知ってるんだ。それと知ってることについて教えてくれると助かるんだが」

 「はーいばってーんざあんねん。んま残念賞くらいはあげようじゃないの優しい奴はなんだかんだ損ばかりするってのがあ持論だけれどもネ」


 (もう意味が分からん)


 大ぶりな動作で腕をクロスしてバツをつくり、不満げにしゃべるヴェールヌイ。控えめに言って訳が分からない、はっきり言って意味不明といった具合。


 「いやいや意味わからんて顔してるけどさあ言ったよね長くお話ししましょうねってえ結論急くぼーやにゃ残念賞だよー」

 「ああもうそれでいいから早くしてくれ」

 「げんてーん。んま、しゃあないねえ」


 またもや減点される晶斗。いい加減相手をするのが疲れてきた具合で肩を落とす。


 「だあからそうゆうのも減点なんだって分かんないのお? いやいいや。本題本題。まるいーち。なぜ知っているのか、だけどそりゃ知ってるからに尽きるよね。知るようにできてる、知ってるから知ってる、ちょーっとだけ言うと白も関係アリー。んでまるにー。この件について知ってることはあ、ざっくり言うと君の力の源っと、君が死んだことっとー、クリメーター君は死んでないってことに、さらにあの場にいたのは君たちだけじゃなくそしてその人たちは揉めていた、そんで多少なりともそれも君の死に関係してるよね。まっほかにもいろいーろ知ってるけど残念なキミには細かいことはおしえてあげまっせーん」


 実際この件については、ヴェールヌイが一番詳しいのは事実だ。紛れもない事実。だからこそ、ヴェールヌイの扱いにはもっと慎重になる必要はあった。しかし、機嫌を取って情報を聞き出せたとしても、その真偽の判断はできない。概要を聞き出せた方が、むしろ晶斗にとってはプラスだった。


 「ほら、帰った帰った暇じゃないんだよこっちだってさ。しばらくしたらまたちょっかいかけにいくから。じゃあねー」

 「は? おいまさか」


 気づけば晶斗と雀は宿舎棟の四人部屋に転送されていた。


 (情報量が多い……)

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