16話 迫
翌朝。
――饗庭姉弟&涸沼チーム
「やーおはよー……ん? お前ら早くね? 起きるの」
雀が腕を上に伸ばして眠気を覚ましながらそう言っているが、その間に二人はいつのまにかほとんどテントを畳んでいた。今起きたばかりの雀は自分が起きるの遅いのかな? と考えてみるけれど、実際今四時半頃である。まだちょうど日が出る時間帯であり、早朝も早朝。烏が若干アーアー鳴いてはいるが、日の出の少し後の何とも知れぬ小鳥がピヨピヨ言っている時間帯には早い。しかしさらっと返された。
「まあ寝てないしな」
「だよねえ」
しかし、流石にこれには文句もある。早起きして驚かせてやろうとか子供っぽいことを考えていたこちらの身にもなれといった感じだ。
「いやっ! じゃあなんでテント立ててんだよ! 寝ないなら使わないだろ! お前ら荷物も置いてないだろうがっ!」
「え? いやまあ。そりゃ……ね?」
「ねー?」
「ねじゃねえよ! この環境なら二対一でも勝てる気がするわっ! かかってこい!」
「何コレ?」
「俺も知らん」
結構な勢いでキレる雀を見つつ、 「さあ?」といった顔で首をかしげる二人を見て、やっぱり姉弟なんだなあと思いつつそれでもやっぱりムカつく涸沼は叫ぶ。いや、叫ぼうとした。
「ドメ……」
「領地は使うなよ」
「なっ! それくらいはさせてほしい……」
こう、もう使ったら後の祭みたいな。何言われても吹っ切れた感じで押しきろうと考えていても。大抵の場合やることを先読みされ釘を刺されると怯んでしまうものだ。
そして、怯んでしまうと勢いも削がれる。やる気も下がる。無論例外的にそれでもやってのける人間はいないことはないが。
「あー使えるの? 思ってたよりすごいわね」
「まあちょっとワケアリなんだケドネ。詮索はナシで」
「はーい」
例の掛け違えたダッフルコートを着て、背中に何やら杖のような、少しうねりのある木の棒をいつの間にか持っている雀はそう伝える。
しかしその木の棒に興味が移った。
「何それ? 杖?」
「何のハナシ? ……あー。杖ではないよ? 森だからってそこらで拾ったわけでもない。私物」
「へー」
まだまだ尋ねる。気になるものはとことん気になるのが、饗庭波澄という女だったりした。
「じゃあ何に使うの?」
「使わないに越したことはないけど、得物?」
「どんな?」
「ナイショ」
「それじゃあいつもは何使うの?」
「そこの阿呆がわーしの刀折った」
「何してんのアキくん」
突如晶斗に話が振られる。けろっと返す。
「こいつが悪い」
「アレお気に入りだったんだぞ。スペアだケド。他にもスペアあるし真打もまだ保管してるケド」
「思ったんだけどそもそもそれ木?」
そして急に話が戻る。
「一応?」
「杖っぽいけど芯とか入ってるの?」
「杖じゃないから入ってない」
「それホントに何?」
「ヒミツ」
「えー」
◆┃◆┃◆┃◆
――叶恵&ネーレペア
饗庭姉弟と雀のチームとは違い、恐らく場所を知っていたであろう『くろいの』の導きもあったため、もうそこになんかいた。
干からびた皮を人形の骸骨にくっつけたみたいな、全体的に強ばった感じの煉瓦っぽい色合いのやつが頭にヴェールみたいなものを被って座禅を組んでいた。
はっきり言えば怖い。
絶賛木陰で小声の作戦会議中。
「あれ許可とかどーにか出来ないの?」
「そこまで万能じゃないのよ。無制限だったら今頃地球なんかニホン列島以外認識で削れてるわ」
「今回は直接せんとー用のじゃないの?」
「一対一はキツいわね」
「じゃーコイツはどー?」
ポケットに入っていたそれを見せびらかすと、どうしようかと考え込む叶恵。
まだ一度しか見ていないし、何より信頼に足るかも分からない。使い道も使えるかも、どういうものかも分かっていない。
第一、本人もアレを覚えていないとすると、知らぬ間に……ということも有り得る。
熟考する叶恵。そして。
「それは晶斗達が合流してからでいいわ。一旦待ちましょう」
「りょー」
絶えず刺客は送り込まれているのだが、認識していないため無為に散る。
認識していないのだから、バレていないと思いながら、狭い木陰で二人はただ待つ。




