14話 『チーム・アルカナ』
――叶恵&ネーレ+くろいの――
少女ネーレは、猫の口のまま目を細めぐでんとしながら、相変わらず叶恵の背中に背負われつつアホっぽくしていた。
どうしようと思いつつ。内心かなり慌てつつ。しかし面倒だ。勝手に動くとマズイ。不信感しか買えない。どうしろと。そんなことを考える。
しかも? 何やらギスギスしてるじゃないですか。今逃げたら叶惠ちゃんかわいそーじゃん? 逃げようと思っても降りたらすぐ気づくし? あーあ楽せず歩けば良かったなー逃げるのは心が痛むから逃げないけどー。うーん。
「あほーう」
「ど、どしたの?」
「にゃんでもなーい」
「遅いぞ」
「えあっ、はい」
喧嘩というよりも一方的なギスギスじゃん。んなめんどくさい。対等な関係は大事だよとおもーけどなあ。あと小走りは揺れるからやめてほしい。酔う。
短パンのポケットに右手を突っ込む。確か飴があったハズ。
「およ?」
「「?」」
「みせもんちゃいまっせー」
適当な喋り方で誤魔化すネーレ。ポケットに入っていたいつぞの品を握りしめた。
(晶斗くんは策士だねー。いつの間にいれたのやら)
使い方も何もあったものではないし、もしかしたら自分の知らない間に身を滅ぼすかもしれないが、少なくとも有用ではある。沈みゆく日を背に、ぐっとポケットから出した手を握りしめた。このポケットには自分なりの切り札がある。使い時を見定める。
◆┃◆┃◆┃◆
もう暗くなってきた。両チームとも休息をとる。雀、叶恵はテントの設営、黒いのは棒立ちで様子を見る、晶斗、ネーレはそれぞれの場で弁当を支給していた。波澄は何か木に杭を刺したり紐を結んだり呪術的にも見える結界を張っていた。
――叶恵&ネーレ+くろいの――
「そこなお方はカレー食べるかーい?」
「いやいい」
「そーかい。じゃあほれ、叶惠ちゃんの分だよー」
「ありがと」
「どーもー」
くろいのは多分食べないのは分かりきっていたが、ここでスルーしておくのはリスクが高い。見えていることがバレなかったとしても反感は買ってしまうだろう。すると当然動きにくくなる。それは避けたい。
今までの感じからすると、恐らく鵜ノ崎兄本人もきっとあんな感じの、引っくるめて言えば傲慢なタイプだ。今したような気遣いというかなんというか。質問だって自分が先にされなければ気に食わないような奴だとネーレは判断した。自分の方が地位が上だと思っているから、自分より下に見ている相手が優先して気遣われているように見える状況は奴からしたら気分の悪いものだろう。
そんなことも、ネーレは一応考えてあった。正直ほっとしていた。予想通りで助かる。もしも面倒なシスコンのようなものだったら聞くべき順番は逆だっただろう。
自分のカレーも注ぎ終わって手を合わせる。
「いただきます」
――饗庭姉弟&雀――
こちらはそこそこのんびりやっていた。こちらもまたカレーを作り、三人で食べる。
「アキくん料理なんて身につけちゃって……。お姉ちゃん寂しいな」
「姉貴は元々料理しなかっただろ」
「あはっ? バレちったー」
「仲いいねぇ。アイツらも見習ってほしいよまったく」
何気ない会話を繰り広げつつ、たまに誰かのこぼす言葉の違和感に疑問を浮かべてすりあわせをして。相性が良い。そういう感じで過ごす。
今度はアイツらという言葉に、波澄が疑問を投げる。
「アイツら?」
「えあっ? あっいや、その」
「鵜ノ崎とかか?」
「えーあー……そだよ?」
あまりに歯切れの悪い返事で逆に怪しまれる雀。
(コイツら妙に頭が回るなー! お仲間くんタチのことは漏らさない方が良いし、発言には気をつけなきゃバレちゃうかな……)
大したことではないので、すぐ警戒を解く二人にほっとする雀。
機転を利かせたにこにこ笑顔で誤魔化そうとしていたのだったが、その努力はたいして功を奏していない。そこにいるのは仮面で顔が見えないのを忘れていたただのアホである。
それはともかく。
「姉貴は今まで何してたんだ? しばらく会ってなかったし」
「あ。ちょっとわーしも気になっちゃう」
「ん? そーねぇ、他言無用にしてくれるなら教えてあげても良いけど? あー叶惠ちゃんはいいわよ? ただちょっとあまり騒がれると困るのだけど……」
「「ぜひぜひ」」
ちょっとした警告をする波澄。対する二人は食い気味に応えた。波澄はそれを聞き立ち上がって背を向ける。顔を隠すようにして。
「私は七年前からとあるチームに所属してるの。その名も『チーム・アルカナ』。詳しいことは言えないけど、いつか分かるはず。きっと……いつか!」
ほんの少し、ほんの少しだけ無理をしているようにも感じる声で、だが努めて明るい声で、饗庭波澄はそう言った。誰の声もない空間に、焚き火の火花の音だけが響き続けていた。
◆┃◆┃◆┃◆
――叶恵&ネーレ+くろいの――
ネーレは最悪の気分だった。だってそう、
(ここで寝たくないっ! もう寝袋に入っちゃったけどさ! あのくろいのかまた別のに襲われそうじゃんっ! ぜっっっったい寝るもんかぁああああ!!)
……十分もすると、すやすやと寝息を立てていた。




