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海放戦線  作者: あるかぱ
第一章 『切符と病と森と黒』
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11/22

9話 ふーあーゆー

 森はまだ先だ。なぜ外側に犠牲者がいたのかは全くもって不明。

 都市部から離れたこの辺りはやけに開けているが、他に人の姿は見えない。


 「森に入っちゃいけないって言われても人がいないんじゃな」

 「アレ。多分ふつうの疾患系じゃないわ。領海の外に被害が出るっていうのは前例ないし。おそらく人は()()のね」


 (分からないことが多すぎる。上も情報は持っているが伏せているような雰囲気だ。なんというか……

 「つかれたー。おぶってー」

 「はいはい」

 (なんというか、とにかく今回のは厄介になる。一度、都市部に戻るべ……

 「あったかいねー」

 「そうか」

 (戻るべきか。作戦は練り直すべきだ。どう人間を探し……

 「いい天気だねー」

 「おう」

 (探していこうか)


 「すー……」

 「寝やがった……」


 如何なる時如何なる場所でもネーレはマイペースな気がしてならない饗庭だった。


 ◆┃◆┃◆┃◆


 何時までも背負っているわけにはいかないということで、一度都市部と平野の境にあたる『柵』付近まで来た。

 柵は所詮柵だが、一応警備ぐらいはいる。

 柵から出ればもう平野で、内に入ればすぐ都市部。

 かなりハッキリと分かれているが、柵の外側にも村はある。『領海』被害が出たのもそのためだ。

 こんな文明でもカラオケぐらいはある。防音に関して文句はないので、作戦会議も兼ねて入店した。


 「どうする?」

 「どうするって何よ」


 空いたソファにネーレを寝かせて(たず)ねる。


 「これからだよ。この辺は少し遠いからアテになんないし」

 「地道に人探ししていくしかないでしょうよ。それともなに? 貴方の『金庫』に任せてみるの?」

 「それじゃ多分うまくいかないぞー」


 少し俯いて考え直す。

 『金庫』とは勿論、『法規(コード)』のことだ。信用している人間がそれを言語化することで、何かしら良い方向に運ぶというものだが、そこまで便利ではない筈だ。

 それに信頼は恐らく数値化されて蓄積される。あまり使いすぎたくはない。

 そういう考え方だと、『信用金庫』は色々とリスクが高い。


 「これまで通り地道に行くっきゃないか」

 「……ぶっ殺」

 「は?」


 顔を上げる。突如として現れた凶刃はもうそこに迫っていた。

 咄嗟に身体が動く。手に持っていた『アタッシュケース』でなんとか防いだ。


 「……」

 「お前誰だ? ……っ。クッソ力強いし……さっ!」


 勢いよく押し返すと襲撃者は軽やかに飛び退いた。


 「……チッ」

 「こっわ」


(長髪低身長に中性的な声。どっちか分からんがどうせ女だ……。ここ最近頼城先輩くらいしか男と会ってないし)


 叶恵ではない。完全に()()()()()

 ネーレが変身しているわけでもない。まだ横になって寝ている。

 大分主張の強い仮面に作業着にオーバーオール。得物は……刀? そして何より目立つ色味の強い蒼い髪。全くもって見覚えがない。


 「そんな感じなのにおさげでツインテールとはな。女は分からん」

 「元より理解は求めてない。」


 何か懐から、指に挟んで取り出し投擲してくる。

 これは見覚えがある。


 すんでで躱した晶斗は思ったことをそのまま言い放つ。


 「クナイとかお前。忍者ごっこでもしてるのか?」

 「言ってれば。なんなら手裏剣もプレゼント!」


 またもやアタッシュケースで弾く。

 威力は大したことはない一撃一撃だが、手数がそれを上回る。被弾はないが、面で受ける分衝撃は大きい。当然疲労はたまる一方だ。

 (しかしいよいよ『くノ一』ごっこでもしているのかと疑うが、大きく避けるとネーレや鵜ノ崎に当たりかねない。徒手空拳で捌ききるのも限度はある。狙いだけは的確なもんだ。使うしかないか?)

 カカカカカカッ、と何発も何発も撃ち出される凶器の数々を弾き続ける。お互いにまだ息切れすらしていないが、精神的にはかなり疲弊していた。

 一頻(ひとしき)の弾幕の後、ふと攻撃の手が止む。


 「……こちらが言えることじゃないケドさ。お前努力しない(タチ)?」

 「……どうしたァ急に。お前よりはしてると思うが?」

 「ハッ。言う、ねっ!!」


 居合というかなんと言うべきか。一瞬の内に思い切り踏み込み刀を滑らせ切り上げてくる。素手では防ぎきれる筈もない威力と速度の、一撃で刈り取るための攻撃だ。

 だが。

 饗庭にだって武器はある。このような状況に於いて、まさか使わずに済むとは思っていない。『何時(いつ)』使うか。たったそれだけ。

 ならばカウンターで決めきるのが理想。

 喋り終わると同時にアタッシュケースのスイッチを押し、得物を展開してあった。不意打ちに来るのは見えていたからこそ、両手で握り締め、身体ごと大きく回して振り下ろす。

 普通ならかなり隙は大きかったが、来る手さえ分かればタイミングだけだ。

 悟られず、その上で自分も守りきれる、そういうタイミングを見計らった。


 ……饗庭の零装は特殊な大剣だ。

 遠心力を駆使して使うのが想定されている先端ほど重い設計や、片刃でもう片方は叩くことを想定し、分厚く重かったり、そして何より。


 ――燃える。


 「なぬっ!?」

 「お仕舞いだ」


 ……バキッ、と刀の折れる音がした。

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