昔話の続きと、犯人の供述。
学園の騒動が治まった後も、おば様はマリアのことを監視していた。
マリアは、卒業パーティーの後、その足で隣国へと行き、予定通り後宮に入った。
そして、すぐにアリスを産んだ。
しかし、数年後に王が病に倒れ、そのまま命を落とした。
後宮は解体され、マリアはアリスと共に市井に落とされた。
マリアは王には愛されたが、王妃を始めとする後宮の女たちには嫌われていた。
ひどいいじめを受け、後宮を出された時はまるで老婆のようだったと言う。
マリアとアリスこの国に戻り王都に住んでいた。
おば様はすぐにマリアに接触した。
老婆のようになってしまったマリアは、学園にいたマリアではなかった。心を入れ替え、ただアリスの幸せを願っていた。
おば様はマリアを援助することにし、長く二人を見守っていた。
しかし、おば様が外交で少しだけ国を離れた間に、マリアが亡くなってしまった。
おば様がそれを知ったのは、マリアが亡くなって半月も過ぎたころだった。
伝手を頼り、アリスの行方を追ったが、まるで神隠しにあったように足取りがつかめない。もしかして隣国へ連れ戻されたのかと思い、そちらも探していた。
まさかおじ様に見つかり、ベルンと同じ学園に入学しているとは思わなかったそうだ。
おじ様のところに、光魔法を使う少女がいると連絡が入ったのは、最終学年が始まる一月ほど前だったと言う。
光魔法と聞いて、おじ様はマリアを思い出した。
まさかと思って調べてみると、その少女はやはりマリアの娘だった。
かつて愛した人の忘れ形見、そう思うと妙なスイッチが入ったとは、本人談だ。
愛したマリアとその娘の生い立ちを聞き、隣国の王の妻だからと諦めてしまったことを後悔し、その償いをしようとした。
で、昔のことを思い出した。
マリアはあの時フリーだった。隣国の王と約束はあったが、誰もそれを知らなかった。
そのせいで、学園全体の男がマリアの相手になろうとした。
最初から誰かのモノだと分かっていたら、きっとあんなことにならなかった。
ちょうど良くアリスと同じ年のベルンが学園に居る。
ベルンはあの学園での地位は最高位。
そうだ、最初からベルンの婚約者としておけば、誰もアリスにそう言った感情を持たないのではないか。
そして今のベルンの婚約者は、ベルンとの婚約解消を望んでいる。
愛する人の娘を、自分の娘として守れるならこれ以上の償いは無い。
おじ様はそう考えて、行動を起こした。
学園側にアリスが隣国の前王の娘であることをそれとなく教え、王家が許すからとエリザベスを下位のクラスに下げ、その場所にアリスを置くように指示した。
そして、昔学園で女性陣がした嫌がらせを、エリザベスがしたように噂を流させ、ベルンとアリスが両思いであるように周囲に見せつけた。
最後に卒業パーティーで、ベルンに婚約解消をさせれば、おじ様の計画は完了する。
――――はずだった。




