友達かそうじゃないかは、見る人によって違う。
「本当に、なんてことしてくれたんだか」
おば様の手から、氷が飛んで、おじ様の足すれすれに突き刺さった。
ヒィとおじ様が悲鳴を上げる。
父と母の持っているティーカップがブルブルと震えている。
父のカップの取っ手がミシリと音を立て、母のカップからは湯気と一緒に気泡が溢れてる。
中身が飛んできそうで怖い。
おば様は涼しい顔で、ちゃんと普通にお茶をすすった。
そしてちらりとベルンを見た。
私もつられてベルンを見た。
ベルンは俯いたままだ。
「ベルンはどこまで知っていたの?」
おば様が聞く。
ベルンは何も答えない。
「聞き方を変える? アリスとはどんな感じだったの? すごく仲良く見えたって学園の先生は言っていたけど」
「アリスとは友達だ。仲がいいと言ったって、アリスはクラス全員と仲がよかった。特別な相手はいなかった。僕もそうだ。たまたまペアの相手がいなくてよくペアを組まされていたけど、それだけだ」
「そう」
「べスのことも知っていて、いつも申し訳ないって言っていたし、僕は卒業パーティーで、ちゃんとべスにプロポーズするつもりだった。父上がベスと結婚させないと言っても、パーティーで言ってしまえば出来ると思って」
「馬鹿だな」
思わず声が出た。
ベルンがこっちを見る。
「べス、僕は浮気なんかしてない」
ベルンには浮気じゃなくても、
「私には浮気なんだよ、十分。ベルンが、アリスのことを知っていて、私を下位クラスに落とすことを承諾した時点で、私には浮気だった」
「べス。僕は」
「もう言い訳はいいよ、ベルン。もう終わったんだから」
「エリザベス。もうやめなさい」
ベルンの真っ青な顔を見て、母が私を止めた。
「本当にごめんなさいね。エリザベス。私がもっとしっかりアレを管理していればこんなことにはならなかったのに」
おば様がため息をついて、おじ様へ向き直った。
「貴方と結婚したのが間違いだったわ。馬鹿だとは思ってたけど、自分の恋のために、息子の恋路を邪魔するとは思わなかった。貴方は、ベルンがどんなにエリザベスを好きか知らないわけじゃないでしょう? 気分はどう? 息子が完膚なきまでに振られた姿を見て。自分と同じ目に合わせられて嬉しい?」
おじ様が唸り声を上げて、首を振っている。
「それに、貴方は何も分かっていない。エリザベスがいままでどんな気分で、ベルンの婚約者でいたのか。貴方が流した噂で、エリザベスの心も、将来もどれだけ傷つけられたか!」
立ち上がったおば様は、そう言っておじ様を蹴飛ばした。
「それも、あれだけの人間を不幸にした女の娘のために!」
もう一度思い切り腹部に足を入れて、ふうっと肩で息を整える。
「アリスが悪いわけじゃないわ。それは分かってる。でも、貴方は手を出してはいけなかった。それも誰かを傷つけるような手の出し方は、絶対にしていけなかった。そのせいで、貴方が愛した女の娘のアリスまで被害者にしてしまったのよ。分かる?」
「うー」
「貴方はあのことに関して反省してなかったのよね。そして自分こそが被害者だと今でも思っている。だからこんなことが出来た。周り全部を、関係のない人までも巻き込んで不幸にして、自分だけが幸せになる、あの女と全く同じ」
「うー、うー、うー」
「何? 何か文句があるの?」
「うー、ううううー」
「はいはい、でも、私たちもこれで終わりよ。貴方には出て行ってもらうわ」
おば様が手を叩くと、騎士が現れて転がっていたおじ様を持ち上げた。
「牢に戻しておいて。犯罪者だから、そのつもりで扱ってちょうだい」
「はっ!」




