犠牲
後ろを振り向くと、真後ろで身を屈めていたのはマリーだった。
服がボロボロになり真っ平らな胸が出ている。やたらでかい乳首だ。
声を潜めていちおうコミュニケーションを取っておこう。
「生きてたのか」
「そっちこそね」
「主犯はマイケル。あいつはどうもこのゾンビたちの操り方を持っているようなふしがある」
「うん」
「救援の要請をしたから、俺はこれから冷凍睡眠装置で眠ってやりすごすつもりだが、来るか?」
「なるほど。このまま逃げ続けるのもきついしね」
「オッケー」
俺たちは意気投合してその場で立ち上がった。
前方にゾンビはいない。靴を脱いで、施設まで走ろう。
「よし、行くぞ」
と後ろに手を伸ばしてマリーと手を繋ごうと思ったのだが、そこに彼女がいない。
「ギャッ」
と悲鳴が聞こえ、俺は振り向く。
そこにはゾンビに捕まったマリーの姿があった。
「マリー!」
「いやあああああああああああ」
三人のゾンビがマリーに襲いかかっている。
俺は鉄パイプを捨てたことを後悔した。なぜ、この場に3体ものゾンビがいるんだ?
考えられるのは、マリーが連れてきていたか、マイケルが誘導した。
後者の可能性は低いだろう。
なんとかドロップキックで一匹を弾き飛ばしたが、すでに時は遅し。
ボロボロだったマリーの服が引き裂かれ、その脇の下に噛み付くゾンビ。
「ヴァ〜」
みたいなゾンビの呻き声に、愉悦があるように聞こえる。
そいつは元研究員のウラジーミル。ソマエト系のプレイボーイで、マリーのことは嫌っていたはずだ。
俺は彼にもドロップキックを叩き込もうと思ったが、助走をつけている間が致命的だった。
ウラジーミルが顎の力だけで、マリーの脇から胸にかけての肉を引き剥がした。
そして、もう一人のゾンビが彼女の首元の肉を噛みちぎっている。
バリバリ咀嚼し、唸り声をあげている中、マリーは物も言わず、まず膝をついて、その後うつ伏せに倒れた。
すまない、マリー!
彼女を助けることはできなかった。
俺は研究施設に向かって走り出す。
何度も振り返って、三体のゾンビたちに食われ続けるところを見た。
マリー、すまない、マリー。
さようならだ。




