倉庫
俺の名前はジョン。The Dead In The Water というゾンビガンシューに転生してしまった。しかも開幕で死ぬモブなので、なんとかこの運命を変えなきゃいけない。
だが、結局ゾンビの発生は起こってしまい、目の前で秘書が死んだ。
ちくしょう。
俺はかねての予定通り研究施設に向かっていた。今も後ろの方では現在進行形でマリーが食われている。
前方に二体のゾンビがいる。ちょうど施設の入り口あたりだ。
後ろの三体と合わせて、未確認だと思っていた5体が揃ったらしい。
このまま突っ切るか?
できなくはないだろう。身体能力強化ウィルスで向上した敏捷性があるのだ。
でも俺は、施設内に彼らを誘導してしまうことに躊躇いを覚えた。
決めた。
あいつらをまた別の場所に置き去りにして、安全に地下へと戻る。
仮に救援が来る前に目覚めてしまって、周りにゾンビだらけだったら詰むからな。そのあたりはブ・ソアに頼めばよろしくやってくれそうなもんだが。
俺は前に足を出して突っ張り、急ブレーキをかけた。そのまま左方向へ直角にダッシュする。
「こっちにきやがれ」
ふわりと円を描くように走り、ゾンビ二体を引き連れて、マリーに群がるゾンビにも挑発する。
あいつらの移動速度は走れば余裕で突っ切ることができる。近づかず離れずという距離を取って、しっかりトレインしていく。
波止場に置き去りにするのがいいだろう。全員まとめて置いたほうが、施設内で地図にプロットしたときに位置を把握しやすくなる。
来た道を引き返すことになっているので、途中で捨ててしまっていた鉄パイプを拾った。
ゾンビの距離をノックバックのある突きで整える必要があったからだ。
波止場にはゾンビがうろうろしている。
鉄パイプを引きずって大きな音を立てて、やつらの注意を引いた。
ぐるぐる回るように走って、連れてきた3体と既存の群れを合流させる。
さすがにポリゴンのゲームとは違って、同一座標にスタックすることはなかったが、密集させることはできた。
これを倉庫に引っ張っていこう。
難しいのは、足の遅いやつと速いやつがいるということだ。
足の遅いやつは大体、死ぬときに怪我をしたとかそういう感じだろう。速いやつが普通みたいだね。
倉庫のシャッターを開けるボタンを押し、ゆっくりと上がっていく間もゾンビをまとめ続ける。
走り続けているのでかなりしんどくなってきた。
だが、しんどいということは、ゾンビ化する心肺機能強化ウィルスに感染/発症していないという事実の証左だ。
「開けるなバカヤロー!」
シャッターが半分ほど開いたところで、倉庫の中からオッサンの声が聞こえた。
どうやら先客がいたらしい。中から操作されて、シャッターが降り始める。
「まってくれ! こいつらを中に閉じ込めたいんだ!」
「他を当たれ。わしはここを出るつもりはない!」
俺は舌打ちをした。
しょうがない。別の倉庫にしよう。




