隠密
The Dead In The Water、俺はこの世界に転生してしまった。しかもすぐに死ぬモブとして。
ゾンビの発生そのものを先回りして無かったことにしようとしたけど、ゲームとは別の方法でゾンビが生まれてしまった。
けれども、あがいた分だけ、ちゃんと運命は変わってきているらしい。
俺にはその確信がある。
というのも、ゲームにはマイケルというゾンビの開発者は出てこないのだ。
俺は1Fに上がってエントランスから外に出た。
なんか追ってくるゾンビが増えたような気もしたが、ダッシュで追いかけてくるような奴は居ないのでなんとかなりそうだ。
外は曇り空。これからしばらくゾンビたちと追いかけっこをすることになるので、炎天下で無くて本当に良かった。
この島はそこまで大きくはないが、人を見失わさせるくらいの距離は稼げる。
ゾンビを引きつけつつ走っていると、遠くから悲鳴が聞こえてくる。
助けに行ってやりたいが、俺の状況が状況だ。こいつらをぞろぞろ引き連れて合流すると、却って危なくなってしまうだろう。
だんだんとゾンビたちの特性がわかってくる。
奴らはまず、音に反応する。その次の優先度として奴らの視線がある。
そして、狙うのは耳や目で捉えた一番近い人間だ。
共食いをしないところを見ると、人間の心音なんかを耳で判別しているのかもしれないな。普通の人間なら脳が処理せずに捨てているような音も全部拾っているんだろう。
俺は遠回りをしながら波止場まで出た。そこにあるオブジェクトを使ってなんとかゾンビを撒くことができた。
直線距離としては少し研究施設から近くなってはしまったが。
「ブ・ソア」
呼び出そうとしてみたが、小声は虚空に消えていった。
施設内はユビキタス化が行き通っているけど、外は全然なんだよな。まあ、あまり人が踏み入れない場所といえばそうだから仕方ないんだけども。
屋内にいるゾンビの数を把握しておきたかったんだが。
俺は仕方なく身を隠していた茂みの奥から踏み出し、ゾンビたちに気づかれないよう忍び足で研究施設を目指した。
一応、オブジェクトに身を寄せる動きを心がける。
これを上手く使わないと、シューターではすぐに死ぬからね。
俺は正面玄関口が見える場所にあるベンチに隠れて、内部の様子を伺っていた。
今の所、ゾンビはいなさそうだ。
最終的に置き去りにできたゾンビはおそらく6人、研究所から出るときに階段から転落したのが2人。まだテリーは6Fあたりをうろついているんだろう。
未確認のゾンビはあと5人くらいか。
これから地下に戻るにあたって、テリーを合わせて最大6人を相手しなくてはならない可能性がある。
マイケルが俺たちにゾンビを差し向けた事実があるのだ。何か奴らを操作する方法が存在して、彼が仕掛けてくるかもしれない。
本当に危険だ。
だが、それは百も承知。
救援が来るまで、なんとか生き延びなくては。
俺はメアリーと本土に戻る。
意を決して飛び込もうと思ったとき、肩をぽんと叩かれたのだった。




