作戦
ゾンビに囲まれた状況を脱するために、なんとかメアリーをコールドスリープさせることに成功した俺だったが、自分が入るために用意した装置には入れずにいた。
が、突きでゾンビを後ろに仰け反らせることで跳ね返すのがやっとで、装置の中に入ることができないのだ。
これは無理かもしれん。
しかし、俺はこれからどうすべきなのか…… とにかく生き残るのが第一だ。
メアリーが完全に格納されるところは見守ることができた。
彼女は守れたと考えていい。ゾンビ共にこの封を破ることはできないからだ。
俺はプランの変更を頭に浮かべた。
一旦この部屋を出て、ゾンビを外に誘導してから撒き、再度戻ってきてコールドスリープする算段がすぐに思いついた。
「よし……」
鉄パイプでゾンビの横っ腹をはたき、突きを入れて道を作る。
さあ駆けぬけようかと思った時、フロア中のインテグレイテッド・デスクからホロモニターが立ち上がった。
マイケルの顔が沢山投影されている。
「やあ、ジョン。奮闘してるみたいだね。こっからはよく見えないけど」
「マイケル!」
「御察しの通り、きみらを食堂に引きつけている間に彼らをけしかけたんですよ。だってさ、俺のこの顛末を上に報告したり警察に突き出したりする気っぽいから」
「当たり前だ。俺は丸坊主以上の責任の取り方を要求する!」
「無理っす。俺、失踪して海に溺れて死んだことになってるんで」
会話で油断してしまったところ、ゾンビに頭を掴まれた。
俺はその腕を掴んで強引に引き剥がす。
ゾンビの腕の骨が、ミシミシとひび割れていく振動を感じる。身体強化補正の乗った火事場の馬鹿力が出たんだと思う。
「フロアリーダーの声が聞こえないですね。もしかして死にました?」
「別行動だ」
「強がってますねえ! あっ、迎えがきたみたいなんで、俺はこれで失礼します! 生き残れたらまたメシでも食いましょう。俺にとっては話の通じる数少ない人の一人なんで」
「待て! 次あったら殴るからな」
「おお怖い。それではまた。アデュー」
一方的に通信が切られ、フロア中のホロモニターが全部クローズした。
マイケルに迎えがきた……ということは、やはり何らかの後ろ盾があると考えて良さそうだ。
スロープ社の内部なのかどうなのか。スパイが入っていた可能性もある。
それは今考えても答えが出そうにない。俺はなんとか生き残ることに専念しなくては。
ゾンビの弱点は頭だ。
今まではメアリーを庇ったり平行して作業をしたりしていたから出来なかったが、今なら頭にこの鉄パイプをぶち込むこともできるだろう。
だが俺は5歳。圧倒的に背が足りないのだ。デスクの上に立つ必要がある。
そんなリスクを犯して戦うくらいなら、今は逃げの一手に集中した方が良さそうだ。
俺はゾンビをノックバックさせつつエレベーターホールに出た。
このままエレベーターに乗ってしまうと、ゾンビたちを置いてけぼりにするか密室に同室することになるため、俺は階段を選択した。
しっかりゾンビ引きつけて、適度にノックバックさせてブロックする。
階段を転がり落ちた奴が、何体かそのまま動かなくなった。
地上に出て、適度に距離を保ったまま遠くに連れて行った後、こいつらの追跡を撒いてやる。
そして、地下に戻ってコールドスリープする。
救援を待って生存だ!




