罠師
「クソッ! どうしてこうなった!」
俺が狼狽えているのは、大勢のゾンビに囲まれることになったからだ。
俺とメアリーは昼食をマイケルと一緒に摂ったのち、何をしでかすかわからない彼をしっかり監視し続けていくつもりでいた。
しかし、ちょっと目を離した隙に居なくなっていたのだ。
「排気口が開いてる。こっから逃げたのか、あの男は。追うか?」
「私には無理そうです。追うことができないのは、私は排気口に入れないからです」
「分かった。きみを一人にはしないよ」
「ジョニーさん」
「メアリー」
で、俺たちは地下に戻る選択をしたのだ。
そこで外部の様子をモニタリングしながら、本社に救援要請を送り、何とか迎えが来るまでやり過ごすという作戦だ。
これは上手くいくはずだった。ゾンビたちは入ってこれないのだから。
地下でエレベーターを降りた時、すぐ異変に気付くべきだった。扉が閉まるとすぐに、上へと昇っていったからだ。
地下の灯りが消されていたので、中へ入って点灯させた時に判明した。
俺たちはゾンビたちに囲まれていたのだった。
ゾンビたちは全員見知った顔だった。この人工島での仲間だ。皆、何らかの怪我を負ったらしい。
背中に斧が刺さっている者、腕が吹っ飛んでいる者、足がひしゃげている者。いろいろだ。
俺はインテグレイテッド・デスクの上に乗って、一番近くにいたゾンビを蹴飛ばした。
メアリーに手を伸ばして引き寄せる。
すると、ゾンビはメアリーのほうに釣られて動いた。
やはり新鮮な肉か。
排気口に引っかかるほどの豊かな胸が、あいつらは欲しくてたまらないのだ。
「ハッ!」
机の上からゾンビにドロップキックをかます。その後、上手く着地できずに転倒してダメージを受けた。視界が狭くなる。
「ジョニーさん!」
俺はメアリーに抱き起こされ、二人でゾンビから遠ざかるようにフロア内を走った。
視界がだんだん元に戻ってきて、俺は彼女を守るべく奮闘する。
そこらに転がっていた良さげなパイプを拾って殴ったり、椅子を投げつけたり。身体能力が強化されているので、かなりの威力が出た。
ゾンビはダメージを受けて仰け反ったり転んだりはするのだが、しばらくビクンビクンしてからまた動き出してしまう。
「キリがない!」
徐々に逃げ場が無くなっていく。
俺が庇って後ろに立っているメアリーが、意を決したみたいに言った。
「ジョニーさんは小さいので、小さな隙間を縫ってここを抜けられます! 私は大きいので小さな隙間を縫えません! 逃げてください!」
「馬鹿言うな。死ぬときは一緒だ!」
「ジョニーさんには死んで欲しくないので、ジョニーさんだけでも生き残って欲しいんです!」
確かに俺だけなら、この修羅場もくぐり抜けられるだろう。サイズ感と敏捷性で、かなり有利だからだ。
けど、メアリーが大事なんだよね。
ちくしょう、これまでか。
そう思ったとき、俺の周囲には、細胞人体を格納するための冷凍設備があることに気がついたのだった。




