事情
食堂やラウンジは4Fにあり、俺とメアリーは当然のようにエレベーターを使った。
この騒動の原因にして主犯格のマイケルが来いといってるのだから、そこまで注意しなくてもよさそうだったが、油断はしないように気をつけた。
で、マイケルは俺たちを迎える時に、実に嬉しそうな顔をしていた。
腹パンしたいレベルで。
「待ってましたよー。何食います? マルゲリータ?」
「ヌードル」
「了解すー。フロアリーダーは?」
「ピザが食べたいのでピザがいいです」
「承知です」
マイケルが冷凍食品の自動販売機でそれぞれの希望した食べ物を調達し、缶ジュースを添えてテーブルにやってきた。
俺たちは飯を食いながら、話をすることになったのだ。
「なんでこんなことをしたんだ」
主に、ゾンビを作るような真似をね。
「なんでって、研究してただけですよ。俺がどういう人物かご存知でしょ」
「これからどうすればいい。お前の作ったウィルスに感染したら、どうやって元に戻せばいいんだ」
「うーん、ワクチンを精製してそれを投与すればいいんじゃないですかね。その辺、俺は専門外なんでなんとも」
適当言ってるな。ワクチンって予防でしょ。
「無責任なやつめ。完全に感染者を機能停止させるためには?」
「俺のウィルスですけど、一応感染からいくつかフェーズがありましてね、第一段階だと心臓か脳が破壊されれば動かなくなりますね。あとは血を全部抜くとか。その人が死んでたらなんですけど」
「生きてればゾンビじゃないんだから、今は考えないつもりだ」
「第二段階とかそれ以上はまだ実験できてないのでわからないんですが、理論としては、全細胞、特に神経細胞が熱産生まで行えるようになって、基本的には神経&脳髄ぶっこ抜きでもしない限り死ななく、っつーか停止しなくなりますね」
「それはやばいな」
「まあすぐにそこまでいくわけじゃないですし、そうなる前に殺してしまえば、ある程度発熱した後完全に機能停止します」
「どれくらいで第二段階に入る?」
「生死や年齢で幅が出ると思いますけど、最速で一週間くらいかと」
「メアリー、危険な第二段階に入る前に、この島から脱出しよう」
「はい。第二段階に入ると危険なので、この島から脱出しないといけないと思います」とメアリーは俺の意見に同意した後、忌々しそうな視線をマイケルに向けて続けた。「第二段階の感染者の頭を破壊して、餓死させることはできるのですか」
「フロアリーダー、なんで俺には冷たい口調なんですか」
「私の恋人ではないので」
マイケルは悲しそうにチャーハンを食いながら言った。
「餓死、と同義ではないと思いますが、近いことはできるでしょうね。今の所、第二段階に入った感染者に新しい消化系が構築されたり、何らかの新機能を獲得したりといったことは無いと予測してます」
「なるほど」
マイケルから理論的な説明を聞いたが、俺にはいまいち理解ができなかった。
メアリーは何となく全貌を把握したように見える。
「お前、スプリンクラーを使ってウィルスを撒き散らしたろ。なぜそんなことをした?」
「え、ああ、あれですか」とマイケルは言った。それから、もういらねぇや、と言って食べかけのチャーハンを真後ろに放り投げると、俺とメアリーの顔を交互に見、何が面白いのかくつくつと静かに笑い始め、最後には大笑した。
「何がおかしい!」
俺は椅子の上に立ち上がる。
「いや、滑稽だなって。そんなの決まってる。俺が作ったウィルスですよ。日の目を見る時がこなくちゃ可哀想でしょ」
「ちっ」
俺は舌打ちをした。
こいつはやっぱクソだな。




