並走
(サブ)プロジェクト名、心肺機能の相対的強化。
人工島で立ち上げられていた数多のサブプロジェクトのうち、一番盛り上がっているのがこれだ。
7Fで作業しているエンジニア側からのアイデアで、それを6Fにいる研究員がシミュレートしたり理論を構築したりして、双方協力しているうちに自然と人が増えていった、みたいな経緯だ。
これはひとえに、俺が6Fと7Fのやりとりをもっと活発にするような内部改善を行なったことが大きい。俺のおかげなのだ。すごくない?
心肺を単純に強化するのではなく、相対的にということで他の臓器なんかに比べて強化されるというのがミソだ。
つまり、人間の燃費を良くする、という感じ。
で、結構いい感じに進んでいるものだから、俺は経営陣に掛け合って一定の予算を得ることに成功した。
サブプロジェクトが完了してリリースした後のビジネスプロセスをものすごく理想的になるように資料を作り、それを達成したらとんでもなくスロープ社が儲かるということを伝えた。
さらにメインで進んでいるプロジェクトに付随する形で、人員や設備を使いまわすことで、本来新規に開発するよりもとんでもなく安く開発ができるということもしっかり強調したのだ。
「まさか、予算まで降りるとは思いませんでしたよ」
サブプロジェクトの発案者、マイケルが俺にそう言った。
肩をすくめてみせる。これくらい朝飯前だ。
「俺たち、6Fの連中にはちょっと偏見があったんですけど、頻繁に話したりしてるうちに同じ会社の仲間だってことが分かってきました」
「4歳だが、俺もね」
「ええ。そのうち他の研究員たちも暇になるだろうし、このプロジェクトに参加してくれるようになるかもしれません」
「人が増えて場所が必要になったら、俺のフロアを使ってくれ。5Fに俺とマリーだけで寂しいんだ」
「本当ですか!? 必要になったらお願いします。予算の管理までしてもらって。研究に専念できるってもんです」
「予算の管理はマリーが全部やってくれてる。彼女もヒマみたいでね」
と、まあこんな感じで俺も仲良くやらせてもらっている。
やはり円滑なコミュニケーションがないと、滞りがどうしても出てしまうからね。
メアリーは暇な時に何をしているのかというと、以前はぼーっとしていると言っていたが、彼女は彼女で一人細々とサブプロジェクトを回しているらしい。
内緒だと言って資料も見せてくれなくてプロジェクト名すら教えてくれない。
どうしても気になって、エンジニアの部下達に訪ねてみても絶対にはぐらかしてきて教えてくれない。
何をやってるんだメアリー。
俺は自分のフロアに戻って、インテグレイテッド・デスクで作業するマリーの細い体躯を眺めた。




