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かみんちゅ  作者: さんさん
第3章 メーリ連合国編①  ~エリーシア~
31/59

コーニャの気が………消えた…?

宿敵を久々に見つけたと思ったら、男を連れていた…。

思えば敗北の人生だったわ…。

孤児院時代はいつもあいつに苦汁を飲まされていた。

勉強はどれだけがんばっても勝てないし、運動もそう、唯一のとりえだった魔法も負けた…。

独立してハンターになって二つ名がついた…勝ったと思ったらあいつにも二つ名がついていた上に、私より全然有名だった。

あの牛のような胸もさらに成長したようだ…私は孤児院時代からまったく変わっていない…どういうことなの…。


まあともかくだ、あいつったらグリーンドラゴンの討伐なんかを受注しやがったのよ!

いくら氷結の魔女だとか呼ばれてBランクでブイブイ言わせていても、危険すぎる。

だから私がこっそりついていって、ピンチの時に助けてやるのだ…そして彼女は思うだろう…ありがとう!と…フフフフ…完璧すぎるわこの作戦…!


―――そもそも彼女がピンチになる状況で自分がどうやって助けるのか、助けたとしてもその後どうやって逃げるのか…彼女は考えていなかった。


街を出ると…道中のモンスターを蚊を払うかのように屠っていく男…何者なのよあいつは…!

ってああ!今のビッククマタンじゃない!いいなぁ…爪欲しい…ってそうじゃない!クマタンが一撃!?

ぐぬぬ…ま、まあまぐれよ!うん、まぐれ!


って今度はあいつら喧嘩しはじめたし!?

ええ…ど、どうしよう…あう、声かけたほうがいいのかな…ううけど部外者の私が行っても…けどあの金髪の子泣きそうだし…うう、ダメよ私、今出たら作戦が台無し…。


…落ち着いたみたいね…。

そして野営するのね、ってあれノゾミと男がこっちを見てる…?ううん、気のせいよね…。


……

………

…………

だああああああ!

なんなのよあいつら!何しちゃってるの!?この森のど真ん中で!?ナニしちゃってるの!?

なにその獣みたいな声、ねえ、ちょっと!ええ…そ、そんなにすごい…の…?

うう、ううう…


その日は結局悶々として眠れなかった…。

幸いあいつらも次の日は休むみたいで、出発しなかったから、私もゆっくり休むことにした…。






------------------------------------------------------------






あの日からエリーの魔法は段違いで強くなった…。

まあ容量自体はまだ少ないため連発はできないが、雷を纏った矢と身体強化は目を見張るものがあった。

武器への帯電はまだまだ難しそうであるが、俺が雷刃を付与して、そこから繋げてみたりと大した進歩である。

そしてやってきました、グリーンドラゴンの寝床…、ハンターギルドに報告のあったとおりの場所だった。

念のために、と罠を2つ設置し、準備万端…あちらさんもこちらをジッと見つめているし、やる気満々だ。


ズシン―ズシン―と地響きがする。

俺の約50メートル前には、薄く暗い緑色の大きな生物…10メートルくらいだろうか。

長い首に長い尻尾、飛ぶことはできないが少しの間滞空はできるらしい大きな翼…前足は短く細いが、掴むために器用、そしてそれらを支える太く逞しい後ろ足…その鉤爪は硬く鋭い…夢にまで見たドラゴンが、雄たけびをあげた。




『グルアアアアアアアアアアアアア!!!!』



ビリビリと震える大気…ほう…これが、これが超位種か!

なるほど、リーザドン等とは比べるまでもない、同じと考えるなど愚の骨頂!

まさしく他の生物の"超位"の種が、そこにいた。



キュボゥッ!



とドラゴンの口から火の玉が放たれる、無詠唱の魔法…彼らは空気を吸うように魔素を吸い、使役する。


「せいッッッ!!」


俺は拳に気を籠めて火の玉を殴り飛ばす…火の玉が消し飛んだと思った瞬間、既にドラゴンは雄たけびをあげながらこちらに突進してきている…!


『ガアアアアアアアア!!!』



「オラアアア!!!!」


ドラゴンと交錯する一瞬、俺は正拳突きを放つ…



ドオオオオオン!!!



停止するドラゴン、そして両足で地面をえぐりながら少しだけ後ろへズザ!となる俺。

ドラゴンは脳が揺れたのか(脳があるのかは不明だが…)頭を左右に振っている。


「くくくく、ははははは!!!楽しい、楽しいなぁ!!」


ちょっと力を入れて殴っても消し飛ばない…うむ、久々に正拳を放ててうれしいぞ!


「け、ケイジ!?大丈夫!?」


エリーがあわてて俺に駆け寄る。


「ああ、大丈夫だ!むしろ快感だ!」


「そ、そう…!……そう……。」


若干引きつった顔をしているが、気にしない。


「まあまあエリー、ケイジは変態やから気にしたらあかんよ。

 …で、ケイジ。手はず通りでいいんかな?うちらだって試したいんやし。」


「誰が変態だ…。

 ああ、かまわんさ、俺だってお前たちの本気を見てみたい。」








『グギョオオオオオ!』


ドラゴンを罠の設置場所に誘導する…最初の一撃で怒ったのかドラゴンは簡単についてきた。

そして…



ズシーン!バリバリィ!



見事落とし穴にはまり、さらに罠にエリーの改良した雷撃まで走る。

これがまず試したかったことその1、ギルド特製落とし穴(エリー改造ver)はどんなものか?だ。

結果は○!ドラゴンはバリィ!っと痺れて若干ぐったりしている。

籠める魔力等色々問題はあるが、十分合格点だ。


そしてその2…エリーとノゾミの最大火力は、超位種に通ずるか。

まずはエリーである。


「はああああ………………ッ!」


大きな水晶の矢じりにエリーが魔力を籠める…パリパリと放電するそれは最早白く輝いている。


「行くよ…これが私とケイジの愛の結晶…ッ!

 ラブ!ハート!アロォオオーーー!」


ヒュボッ!…………カッー! ドオオオオオオン!!!


雷光がドラゴンに向けて走り、翼付近に着弾…大爆発を起こす。

煙が晴れるとなんとそこには元気に走り回るドラゴンの姿が…!


…ではなく、左翼の一部が吹き飛び、左側の鱗の一部が禿げ、血を流すドラゴンの姿があった。


「すごいな…(何その技名)」


「すごいなぁ…(恥ずかしくないんかなぁ…)」


「えへへ…やった、私やったよ!えへへへ…」


そうやってエリーはがっくり膝を着いた。

魔力を使い果たしたのだろう…ぜいぜいと肩で息をしている。


「ああ、色々とすごいセンスだ…あとは任せろ。」


「ほな、次はうちの番やな!」




「はああああ…………。」


ノゾミの周りの気温が下がり、それなりの気の奔流が彼女の中を駆け巡る。



『ギャオオオオオ!1!』


ドラゴンがショックから立ち直り、こちらへ突進をしてくる…罠はエリーのラブハートアロー(笑)で壊れている。


「いくでぇ!

 クリスタルぅ…エッジ!!!!」



ビキビキビキ…ガシャアアアアン!!!



特大のツララが地面から生え、ドラゴンにぶち当たる。

強烈なアッパーカットを腹にもらい、ドラゴンが宙を舞う。


ズシイイイン…


ドラゴンが地面に叩きつけられる…鱗がない腹の柔らかいところにあたったせいか、見事に肉を裂き、腹に刺さっている。

ドラゴンは最早息も絶え絶え、起き上がろうとするも、首を持ち上げるだけである…。

ノゾミも同じく、肩で息をしてがっくりと座り込んだ。

上下するその身体と共に果実もたわわと揺れている…うむ…さすがは氷結の…

っていかんいかん、ノゾミが睨んできた。

俺はゆっくりとドラゴンに近づいた。





「すまんな、これも生きるためだ。

 楽しかったぞ超位のものよ、あとはせめて痛みを知らず安らかに死ぬがよい。」


俺としては心行くまで戦いたかったが、エリーとノゾミの実力の確認…二人自身も自分の力がどれくらい通用するか見てみたかったようであったしな。

俺としても最初の正拳でまあ満足だ、超位種の下でこのレベルなら、上…そして幻種はかなり楽しめそうであるしな。

そう思いつつ、俺はもうあとは死を待つのみのドラゴンに対し、敬意を持って介錯をした。

戦った強敵に対していささか失礼な気もしたが、これもこの世の理、お前自身を使って強くなるのだ、許せ…と殺したドラゴンの角、爪、瞳を剥ぎ取り、鱗や肉も取れるだけ取る。

残った肉や鱗は他の生物が食べるだろう。


こうして俺の初めての超位種討伐は終わった。

ドラゴンから離れたあたりで、まだ明るいが、二人の魔力切れのため野営となった。


「と、その前に…」


「どうしたの?」


俺は気を使い一瞬で距離を移動し、とあるところまでいく。


「ケイジ、どうしたの?!急に離れて…ってなに、それ…」


そうやってエリーが指を刺すその先には…


ぐったりと気絶した幼女…確か絶壁のコーニャが抱きかかえられていた。


「なんか街を出てからずっとついてきててな、ほっておこうかと思ったんだが、気絶したままだし襲われてもいやだしな…拾ってきた。」


「そ、そう…」


引きつった彼女の顔は無視しよう…そんなことよりだ。


「ところでこのガキ漏らしてるみたいなんだが、服変えてやってくれるか?」


彼女の気は、ドラゴンの最初の咆哮の後に消えていた…大方怖くてちびって気絶したのだろう、まあ子供だししょうがない。

こうして俺達は、コーニャとやらを回収し、今夜はここで野営をしたのだった。







-----------------------------------------------------------






『グルオオオオオオオオオオオオオ!!!』



ドラゴンが咆哮をあげる。


「~~~~~~~~~ッッッッ!?!!?  ひいいいい!?!?!?」


私は恐怖のあまり一瞬で気絶してしまった…と思う、あまり覚えていない。


次に目を覚ましたら、パチパチと火がついた前にいた。

視線を左右に揺らすと、どうやら毛布にくるまれているようだ。


(……ここは…ああ、そうか、私は気絶して…)


視線をさらに揺らすと、紐にかかって干されているスカートとパンツが見えた。

あれ…なんか似たようなの私履いてたよなぁ…と思うと、どう見ても私のだった。

こーにゃ と書かれたパンツはどう見ても私のです、本当にありがとうございました。

思い出した…私は漏らしたんだった…そのあと気絶して…。


(ぐ…こうなったらあのパンツとスカートを回収して何もなかったことにしなければ…!)


そう思い、改めて周囲に気を配る…もう夜になっている、寝静まっていれば行動は容易い…と思っていると…。



ひぎいぃ♪………あふぁ!ううああああああ!

もう、もうだめ、もうだめええええ!

あかん、あかんてえええ!もう…あっ…くううううううう!

い…きゅううう!!!

あへぇ…


すごい声が聞こえてきた…落ち着け、落ち着け私、この声は聞き覚えがある。

一昨日散々聞いたではないか、むしろ一人は孤児院の時から忘れたことはないではないか…その声が嬌声であったとしても…!

お、落ち着け私…1とその数でしか割れない数を数えるのよ…2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61…

よし、よし落ち着いた。


って落ち着けるかあああ!何してるの!?何しちゃってるのあいつら?!ねえ!ナニしてるのおおお!?!?

ここ外よね!外だよね!っていうか私横で寝てるよね!?




…………こうして彼らと私の眠れない夜は…更けていった…。

「しゅ、しゅごいいい!魔力が、魔力がもどってくりゅのおおお!」


「ケイジ、ケイジィ!うちもぉ…うちももっとぉ…」


「………………(聞こえない!聞こえない!聞こえない!2、3、5、7、11…)」

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