雨降って、地固まる。
「おらぁ!」
ケイジが蹴りを放ち、イノシシが絶命する。
「よし、今日の昼はこいつだな。」
そして私とケイジがイノシシに近づくと…。
ぷるぷると震えている小さなイノシシがいた…うりぼうというやつだろうか。
「か、かわいいっ…!」
やばい、すごいかわいい、母親を殺しちゃったのかなぁ…ごめんね…。
「おいでおいで~♪」
そうやってうりぼうに手を伸ばそうとした瞬間…
メメタァ!
変な音が聞こえて、うりぼうは潰れた。
顔を見上げるとケイジが手刀をうりぼうに振り下ろしていた。
「なっ…なっ…な…なんで殺すの!?」
何を考えているんだろうケイジは、こんな小さな命を!
「………。
エリー、昨日から思っていたが、甘い考えは捨てろ。」
「甘いって何がよ!」
「では聞くが、そこのでかいイノシシは殺してもいいが、その小さなイノシシを殺してはだめな根拠はなんだ?」
「~ッ! そんなの…そんなの」
そんなの決まっている…決まっているが…
「喰うために殺す、生きるものなら当然のことだ。
お前が毎日食べているものだって、どこかで誰かが殺したものを口にしているんだ。
それらを全部理解して、言っているのなら俺は何も言わない。
だが、今のお前は違うだろう?一時の感情に任せている。」
「…ッ! 確かにそうかもしれない…うん、そうよ…。
わかってるわよ!
だったら昨日のカモーイへしたことは何なのよ!?
昨日からずっと言いたくて我慢してたけど、言わせてもらうわ!
あんなことをして、あれならまだ殺した方がましじゃない!
わかんないよ!私わかんないよ!ケイジのこと、ずっとずっと優しいって思ってたのに!」
「優しい?生き物を殺しまくっているのに?
俺がお前を助けたとき、俺は他の生物を殺して助けたんだぞ。
お前がいう優しいとはなんだ?
昨日のチンピラもそうだ、なぜあいつらをあそこまでしてはいけない。
俺は昨日のチンピラを殺そうと思えば殺せた、再起不能にしてボロクソにしたのは、わけがある。
あいつらは外道だ、クソ以下だ。
あいつらのせいで何人が人生をめちゃくちゃにされたと思う?
ただ生きるためというのならば仕方がない、だがあいつは違うだろう?
"悪意"を持って他のものに害を及ぼすというのなら、それは外道だ。
死すら生ぬるい、だから俺は殺さずに死んだ方がましな処分をしたまでだ。
まあ見せしめというのもあるがな。」
………わからない、ケイジの言っていることがわからない…いや、わかってはいる…けど、わかりたくない!わかりたくないよ…!
「俺の言うことは、わかるだろう。
ただ賛同しろとは言わない、人の生き方なんてそれぞれだ。
…………。
………今日はもうここで野営にしよう。」
そういってケイジは野営の準備をはじめた…。
頭の中がぐちゃぐちゃだった…ケイジのこと、好きだったのに…ううん、好きだから、認めたくない…わかんない…、涙がとまらない。
「…エリー。」
ノゾミが私を抱き寄せ、頭を撫でてくれる。
「うちもな、いつかは言わんとあかんって思ってたんよ。
エリー、狩をしててもどこか遊び感覚っていうところがあったんやで?
けど、ええ機会や…しっかり自分を見つめなおそか…。
エリー、ケイジが言ったんは間違ってはない。
正しいとも言えんけどな…、考えは人それぞれや。
けど、当たってるところもある。
エリー、ハンターとして生きていくんやったら、ううん…人として生きていくんやったら、"覚悟"を決めんとあかん。」
「…覚悟…?」
「そうや。
"奪い、奪われる"覚悟や。
生きるっちゅうんは、何かの犠牲の上で成り立ってるんや。
食べるために、殺す、より簡単に狩るために、強くなるために…殺す。
いつもご飯のとき、言うてるやろ?
『いただきます』『ごちそうさまでした』
食材となった生き物に、それをつくった人に、それらに関わったモノ、そういったもの全部にありがとうっていつも言ってるやん。
別にな、エリーにケイジさんみたいになれって言ってるわけやないんよ?
ケイジさんも、うちも、エリーに知って欲しい。
ただ、それだけや…。」
「……。
今からでも…間に合うかな…ケイジに、愛想つかされてないかな…。」
「エリー? どんな超絶バカップルでも、喧嘩するんや。なんでかわかる?」
「………??」
「喧嘩っていうのは、仲がいいほど起こるねん。
嫌いやったらそもそも喧嘩すらしいひん、無視や無視。
相手に自分のことわかって欲しい、相手のこと、知りたい、こうなって欲しい、自分のこと知って欲しい……そういう思いがあるから、喧嘩になるんよ。
ケイジさんもな、エリーを見てうちと同じように思ったんやと思う…。
エリーのこと、好きになればなるほど、エリーのことをじっと見る。
好きになればなるほど、エリーのこと知りたくなる。
エリーの全部、見たくなる、見えてくる。
だから今回の喧嘩になったんとちゃうかなぁ…?
エリーのこと、そんだけしっかり見てるんやで。」
「………。」
わかっていなかったのは、どちらだろうか。
ケイジは私のこと、しっかり見て、考えてくれて、喋ってくれた。
なら私は?
ケイジのことを、勝手にこうだと思い込み、自分が思ったとおりでなかったら怒り、わめき散らした。
どちらが相手のことを考えているのだろうか…、今となっては愚問だった。
「……ケイジと話してくる…。」
「ん、いってらっしゃい♪」
そして今ならわかる…ノゾミは、いつも私を見てくれていた。
今日もだけど、今まで何度もこうして話してくれていた…私はいい友人だとしか思っていなかった…ノゾミのこと、見ていなかった…。
改めて考えると、なんてすばらしい人なんだろう…。
そう思うと…ついしてしまった。
「ノゾミ…ノゾミも、ありがとう。
今日のことも、そして、今までのことも…ずっとずっと…ありがとう…!」
ノゾミに抱きついて、キスをした…。
今までのように、流されてじゃない…心の底から、したいと思った、愛おしいと思った。
「ありがとう…ノゾミ…。」
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あああああ…言ってしまった…!
自己中心的な考えだとわかってはいても、つい言ってしまった。
なんでエリーはわかってくれないのか、何で俺が怒られるのか、かっとなっていってしまった。
嫌われただろうか…思えば俺、ポンポン人殺しまくってたなぁ…。
とりあえず気まずいから今日はもう野営にしよう…。
そう思っているとノゾミとエリーが話し始めた。
グ…さっきの件か…!
俺は木陰に身を隠して、耳に気を纏わせ聴力を強化し、二人の会話をこっそりと聞くことにした。
…
……
………
…………
……………
「ありがとう…ノゾミ…。」
キマシタワァ!!
っていかんいかん、欲望が暴走した。
ノゾミはすごいな…エリーだけでなく、俺にまで言うように言葉を発していた。
エリーに偉そうにいったが、俺もエリーをしっかりと見ないとな…。
俺もまだまだ修行が足りん!
エリーがこちらに歩いてくる…。
「エリー…。」
エリーが顔を上げ、こちらを見る。
――――――ッッッ!!!
その瞳は透き通るような青で、一見深い深淵のように、けれど晴れ渡る青空のように澄み切っていた。
俺は目を見開いた…。
―化けた…!エリーの中で、何かが確実に変わった。
その瞳がすべてを物語る…そしてそれは内面でも変化を起こしていた。
エリーの気が、今までにないぐらい輝いている。
心のあり方…ここまで変わるものなのだな…そして………改めて惚れた…!!!
「いい目だ。」
コクリと頷くエリー。
「そして…改めて言おう。
惚れたぜ!!」
その瞬間、エリーの顔がボッと赤くなった。
こうして俺達3人は、絆をさらに深く、強固にした。
なお、今回は7ラウンドしてエリーが25KO、ノゾミが3KOだった。
…………調子に乗りすぎた、エリーがガクビクアヘ顔ダブルピースになった…反省はしているが、後悔はしていない。
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エリーとケイジがお互いのこと、わかりあった。
本当の意味で、仲間に、そして恋人になれたと思う。
うち?うちは元からやん♪
そう思ってたら夜はケイジが大ハッスルした。
エリーがもういろんな意味でぶっ飛んでた…猿どころか獣のように叫んでた…まあうちも調子にのってケイジと一緒にエリーいじめてたからやけど…うん…やりすぎた…。
次の日はエリーが動けんくなって、グリーンドラゴン討伐はさらに次の日に延期になった。
………別に反省も後悔もしてへんよ?
「……………(ビクッ…ビクンビクン…)」
「………(うわぁ…)」




