第四十六話:偽物ハンバーガー乱立、肉不足(畜産パニック)
広がりすぎた。
――それが、すべての始まりだった。
王都。
「おい見ろ!また新しい店だ!」
「“本家風ハンバーグサンド”だとよ!」
「いや“王家直伝バーガー”ってのもあるぞ!!」
乱立。
屋台、屋台、屋台。
似たような匂い。
似ていない味。
「……増えましたね」
姫が呟く。
「ああ」
俺は一瞥する。
「そりゃ真似するやつらは出てくる」
こうなるのは分かっていた。
問題は――
「質がバラバラだ」
一口かじる。
「……まずいな」
「ひどいですね……」
パンは固い。
肉は焼きすぎ。
ケチャップは薄い。
だが――
「売れてるな」
「え?」
「“それっぽい”からな」
人は本物を知らなければ、偽物でも満足する。
そして――
「本物の価値が落ちる」
別の問題。
「……肉が、ない?」
商人が青ざめた顔で報告する。
「仕入れ値が三倍に跳ね上がっています!」
「農村からの供給も追いついていません!」
当然だ。
需要が爆発した。
供給は――追いつかない。
「家畜が足りません!」
「盗難も増えています!」
「無理に増やそうとして病気も……!」
畜産が壊れ始めていた。
「……来たな」
俺は小さく呟く。
「予想通りですか?」
「むしろ遅いくらいだ」
農村。
「売れ!全部売れ!!」
「今が稼ぎ時だ!!」
牛が消える。
豚が消える。
鶏が消える。
未来を残さず、今を売る。
「……来年どうするんだ」
誰かが呟く。
だが止まらない。
金があるうちに、回収する。
それが人間だ。
再び王都。
商人が言う。
「売上が落ちています」
俺は即答する。
「想定内だ」
「じゃあどうするんです!?」
「簡単だ」
一つ。
「差を見せる」
二つ。
「供給を握る」
三つ。
「市場を奪う」
姫が息を呑む。
「……どういうことですか」
「飢えさせる」
「――っ」
「足りないなら、足りないままにする」
価格は上がる。
本物しか残らなくなる。
「そして」
俺は続ける。
「“食える場所”を限定する」
その数日後。
「な、なんでだ!?肉が入らねえ!!」
「仕入れが止められた!?」
「契約打ち切りだと!?」
崩壊。
偽物屋台が次々に潰れていく。
「本物だけ……残ってる……?」
答えは単純だ。
「流通を押さえた」
王都・正規店。
行列は、さらに伸びていた。
「うめえ……やっぱ違う……」
「これが本物か……!」
価値が戻る。
いや――跳ね上がった。
偽物たちのお陰で――。
姫が呟く。
「……怖いですね」
「そうか?」
「はい」
少しの沈黙。
「人が欲しがるものを、全部操っているみたいです」
「違うな」
俺は首を振る。
「操ってるんじゃない」
一言。
「“流れ”を作ってるだけだ」




