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最悪の領主に転生した俺、なぜか国を救ってしまう  作者: レモンティー


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第四十四話:農民覚醒――そして価格暴騰、最後に王が堕ちる

変化は、静かに――だが確実に広がっていた。

「おい、あんたの畑もやるのか?」

「ああ。小麦半分潰してトマトに変える」

「正気かよ……」

「正気も何も、“金になる”んだろ?」

畑のあちこちで、同じ会話が繰り返されていた。

赤い果実。

今まで家畜の餌にもならなかったそれが、

今や“金貨に変わる作物”になっている。

「苗はもらったのか?」

「領主様から配られたやつだ」

「作り方は?」

「簡単だ。水と日当たりだとよ」

笑いながら、だが手は止まらない。

動きは速い。

理由は一つ。

――儲かるからだ。

「じゃが芋も植えろ! 両方やればもっと儲かるぞ!」

「肉の値段も上がってるらしいぞ!!」

「なんでもいい! 売れるものを作れ!!」

農村が、熱を帯びていた。

革命だった。

土地を選ばない。

痩せた土地でも。

寒い場所でも。

他の作物が枯れる中で、こいつらは生き残る。

土を耕し、苗を植え、支柱を立てる。

トマトは煮込めば甘く、酸味が肉を引き立てる。

じゃが芋は腹を満たす。

だが――

「旦那様」

執事が静かに告げる。

「市場が、崩れかけております」

「だろうな」

俺は即答した。

城下町の市場は、すでに異常だった。

「この値段、ふざけてるのか!?」

「嫌なら買うな!!」

「昨日より高いじゃねぇか!!」

怒号が飛び交う。

トマト。じゃが芋。肉。

それらが高騰している。

「現在、平均で四倍。場所によっては六倍です」

「上がりすぎだな」

「はい。完全に投機が入っております」

商人が買い占め、さらに値を吊り上げる。

典型的なバブルだ。

「……庶民は?」

姫が低く問う。

「食えません」

執事が淡々と答えた。

「屋台の食事は、贅沢品になりつつあります」

姫の表情が曇る。

「それでは、本末転倒では……」

「そうだな」

俺は頷いた。

このままでは、

“流行”が“暴動”に変わる。

少し考える。

――やることは決まっている。

「価格は触らない」

「……よろしいのですか?」

執事が目を細める。

「代わりに、供給をぶち上げる」

俺は笑った。

「農民はもう動いてる。時間の問題だ」

「それまでの間は?」

姫が問う。

「耐えろ」

「……強引ですね」

「市場に逆らうと、もっと歪む」

短期の痛みは避けられない。

だが、長期で見れば――

「勝つのは供給だ」

そのときだった。

バタバタと足音が響く。

「報告!!」

兵士が駆け込んできた。

「隣国の王都から使者が!!」

「……来たか」

俺は小さく呟く。

「何の用だ?」

「それが……」

兵士は言い淀む。

「姫様に“ハンバーガーとフライドポテト、ケチャップを持って来い”と……」

「我が国にも屋台を出店せよとの内容です。」

沈黙。

姫がゆっくりと目を閉じた。

「……父上……」

執事が淡く微笑む。

「確認いたします」

数刻後。

「間違いありません」

執事が告げる。

「隣国の国王陛下が、屋台の料理を強く所望されております」

「理由は?」

「すでに試食済みで、“もう一度食べたい”とのことです」

「……早いな」

「ええ」

さらに執事は続けた。

「加えて――」

わずかに間を置く。

「我が国の国王陛下からも、同様の通達が届いております」

空気が止まった。

「……は?」

思わず声が漏れる。

姫が、ゆっくりとこちらを見た。

「……つまり」

「はい 王都にも屋台を出店せよとの内容です」

執事が淡々と答える。

「両国の王が、同時にハンバーガーとポテトを所望しております」

沈黙。

そして――

「……面白い さすがハンバーガーは中毒性が高いな」

俺は笑った。

「王様まで中毒か」

「笑い事ではありません」

姫が睨む。

「二国の王が同じものを求めているのですよ?」

「分かってる」

むしろ――最高だ。

「外交カードになる」

「……やはり」

「輸送路、関税、通行許可。全部通しやすくなる」

食い物一つで、国が動く。

いや――

「もう止まらない」

屋台から始まったものが、

農村を動かし、

市場を歪め、

そしてついに――

王をも動かした。

「準備しろ」

俺は言う。

「両国向けの分、最優先で確保だ」

「かしこまりました」

執事が一礼する。

姫は深く息を吐いた。

「……本当に、食べ物で世界を動かしている……」

「違うな」

俺は笑った。

「もう“世界が食べ物で動いてる”んだ」

赤い果実と、黄金の塊。

そして、肉とパン。

それらは今や――ただの料理ではない。

力だ。

かつての最悪の領主は今日もまた、

“食”で世界を塗り替えていく。

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