表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の領主に転生した俺、なぜか国を救ってしまう  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/41

第二十八章:噂の終わり

噂は、消えなかった。

だが――

広がらなくなった。

「トマトは毒らしいぞ」

誰かが言う。

「まだ言ってんのか?」

返事は、笑い混じりだった。

市場。

「毒だって話――」

言いかけた男に、店主が肩をすくめる。

「毎日食ってる客が、ここに何人いると思う?」

周囲を見る。

誰も倒れていない。

「……まあな」

それで終わる。

別の場所。

「子どもにはやめとけって――」

母親が言いかける。

「母ちゃん」

子どもが言う。

「昨日も食べたじゃん」

沈黙。

「……そうだったね」

それで終わる。

積み重なっていた。

毎日の食事。

毎日の無事。

一人ではない。

全員だ。

「毒なら、とっくに死んでるだろ」

誰かが言う。

笑いが起きる。

笑いに変わった時点で――

噂は、終わりだった。

屋台。

「トマト煮込み、どうだ!」

客が並ぶ。

ためらいは、もうない。

「前よりうまくなってねえか?」

「改良したんだよ!」

そんな会話が普通に交わされる。

疑いは、話題から消えた。

城。

報告が上がる。

「デマの影響、ほぼ消失」

「流布者も特定できず、拡散停止」

側近が続ける。

「……誰も、気にしていません」

姫は少しだけ目を細める。

「そうですか」

「はい」

一拍。

「“気にしない”という状態に移行しました」

姫はうなずく。

それが何を意味するか、分かっている。

否定ではない。

論破でもない。

無関心。

それが、最も強い終わり方だった。

「人は」

姫が静かに言う。

「自分の経験に勝てない」

側近は答えない。

必要がない。

外では、今日も食べられている。

芋を。

赤い実を。

当たり前のように。

それはもう、証明ですらない。

日常だった。

そして日常は――

どんな噂よりも強い。

一方で。

暗い部屋。

「……効かなかったか」

低い声。

「はい」

報告が返る。

「誰も信じておりません」

沈黙。

「なぜだ」

短い問い。

答えは簡単だった。

「食べているからです」

その一言で、すべてが崩れる。

理屈ではない。

証拠でもない。

毎日の食事。

毎日の無事。

それが、すべてを上書きした。

「……馬鹿な」

だが、それが現実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ