表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の領主に転生した俺、なぜか国を救ってしまう  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/41

第二章:崩壊の予兆と善政”

翌朝。

領主館は、いつもより静かだった。

静かすぎると言っていい。

「……旦那様、本気でございますか」

執事の声は、慎重というより恐怖に近かった。

「本気かどうかって話なら」

俺はあくび混じりに言う。

「昨日の時点で本気だろ」

広間には数人の側近が並んでいるが、誰も目を合わせない。

「税を半分、備蓄開放……」

財務担当が紙を握りしめる。

「それはつまり……今年の収入の放棄どころか、来年以降の統治基盤そのものを削る行為です」

「正確には“今の統治基盤”な」

俺は帳簿を指で叩く。

「この数字見てまだ続けろって言う方が無理あるだろ」

「しかし領主としては――」

「領主として?」

少しだけ声が低くなる。

「その“領主として”が、この結果を作ったんじゃないのか?」

沈黙。

誰も答えられない。

執事が一歩だけ前に出る。

「……旦那様。恐れながら申し上げます」

「言え」

「このままでは、徴税どころか軍の維持も不可能になります」

「うん」

「領地は……他国に食われます」

「それも想定内だ」

「……っ」

その一言で空気が凍る。

側近の一人が思わず口を開く。

「ではなぜ……!」

俺は窓の外を見る。

「じゃあ聞くけどさ」

振り返る。

「このまま徴収続けて、どうなると思う?」

執事は即答できない。

代わりに財務官が絞り出す。

「従わぬ村は処罰し、恐怖で……統治を維持するしか……」

言いながら、自分でも気づいている顔だった。

“もう無理だ”と。

俺は静かに言う。

「恐怖で支配できるのは、人がまだ“生きてる”ときだけだ」

沈黙。

遠くで風が鳴る。

まるでその言葉に返事をするように。

「それともう一つ」

俺は帳簿を閉じる。

「今日から徴税役、全員戻せ」

「……は?」

一斉に空気が跳ねた。

「徴税機構を止めるってことは……国家機能の停止と同義です!」

「もうその機能、腐ってる」

「ですが!」

執事が声を荒げる。

「それでは誰が財源を――」

「財源?」

俺は笑う。

「その財源ってやつで、人死んでるだろ」

一瞬、誰も動かない。

そのとき――

扉が叩き割るように開く。

「報告!!」

兵士が転がり込む。

「南部三村で暴動発生!徴税隊が襲撃され、三十名行方不明!」

「……来たか」

俺は小さく息を吐く。

執事が青ざめる。

「旦那様! だから申しましたように強硬策を――!」

「違う」

一拍。

「これは“強硬策の結果”だ」

広間の空気が完全に止まる。

財務官が震え声で言う。

「では……どうすればよかったと……?」

俺は少しだけ黙る。

そして言う。

「最初から、壊さないことだろ」

誰も返せない。

正論が、今さら重すぎた。

兵士が叫ぶ。

「村はまだ一部残存!しかし火が回りつつあります!」

俺は外套を掴む。

「全員、出る準備しろ」

執事が必死に止める。

「お待ちください旦那様! それは領主自らが出る案件では――!」

俺は振り返る。

「じゃあ誰が行く?」

「……っ」

誰も言えない。

貴族は行かない。

兵士は間に合わない。

執事は決断できない。

「結局さ」

俺は扉の前で止まる。

「こういう時に動かないから、全部終わるんだよ」

外に出る直前。

一言だけ落とす。

「火を消しに行く」

そして歩き出す。

――それが、この世界で初めての“統治”だった。

悪徳領主と呼ばれた男が、

初めて“責任”というものを手にした瞬間。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ