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最悪の領主に転生した俺、なぜか国を救ってしまう  作者: レモンティー


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第一章:目覚めた瞬間、詰んでいた

目を開けた瞬間、まず感じたのは――違和感だった。

天井が高い。

いや、高すぎる。

装飾された梁、金の縁取り、見たこともない紋章が刻まれたシャンデリア。

「……どこだ、ここ」

声が低い。

しかも、やけに響く。

「……え?」

思わず自分の手を見た。

大きい。厚い。

明らかに“自分の手じゃない”。

「冗談だろ……これ」

起き上がると、重い。

身体が違う。筋肉の質も、骨格の感覚も、全部が“別物”だ。

「うわ、重っ……誰だよこの身体」

そして机の上に置かれた一通の書類。

「……これか」

そこにはこう書かれていた。

「辺境領主ミカエル=クロムウェル殿へ」

「ミカエル……?」

指が止まる。

「誰だそれ」

その瞬間――

頭の奥に、流れ込んできた。

「っ……!」

映像。

燃える村。

泣き叫ぶ人々。

剣を振り上げる男。

そして――笑っている自分らしき存在。

「やめろ……何だこれ……!」

こめかみを押さえる。

「嘘だろ……マジで……」

ようやく理解する。

しかも――

「最悪のやつじゃねえか……“悪徳領主”って……」

その時だった。

頭の奥で、“何か”が確かに起動する。

――《転生補正システム 起動》

――個体適合確認:完了

――特典付与:あり

「……は?」

一瞬、視界の端にだけ文字が浮かぶ。

――転生ボーナス:土地改良(トチ改良)

――状態:未使用

――効果:土壌・地質・水脈の最適化/農業生産効率の大幅向上

「……はぁ?」

「なんだそれ……チートっぽい名前だけど地味すぎだろ……」

思わずツッコミが漏れる。

だが同時に、妙な“理解”も流れ込んでくる。

この領地の土地は、もう死にかけている。

普通のやり方では回復しないレベルで。

その瞬間。

コンコン、と扉が鳴る。

「旦那様、失礼いたします」

老いた声。

扉が開くと、執事が深く頭を下げた。

「本日の税の取り立て結果をご報告いたします」

「……ああ」

声が勝手に低く出る。

「言ってみろ」

執事は一瞬だけためらい、そして言った。

「今年も、例年通り。ほぼ全村が納付不能にございます」

「……納付不能?」

「はい。加えて、一部の村では……抵抗の兆しが」

「抵抗?」

胸の奥が冷たくなる。

記憶がまた浮かぶ。

“前任のこの男”のやってきたこと。

「……なるほどな」

小さく呟く。

「そりゃ壊れるわ」

執事が顔を上げる。

「旦那様、いかがなさいますか。例年通りであれば――」

略奪。

見せしめ。

処刑。

その単語が、空気の中に見えないまま浮かんでいる。

「……いつも通り“やれ”って顔してるな」

執事が固まる。

「え?」

俺はゆっくり息を吐いた。

「いや、もういい」

「……は?」

「今日から方針を変える」

執事の目が見開かれる。

「ほ、方針……変更……?」

「税を、半分にしろ」

沈黙。

空気が一瞬で凍る。

「……は?」

「それと、備蓄を全部出せ」

「……旦那様、それは……」

声が震える。

「領主としての収益を……完全に放棄する行為でございます」

「知ってる」

即答だった。

執事が一歩下がる。

「し、しかしそれでは領地経営が――」

「もう破綻してるだろ」

言葉が鋭くなる。

「なあ執事。正直に言えよ」

窓の外を指す。

痩せた畑。

崩れかけた家。

こちらを見上げる、怯えた視線。

「これ、もう“搾れる領地”じゃない」

「……っ」

執事が言葉を失う。

俺は続ける。

「利益ってのはな、回収できる状態で初めて意味があるんだよ」

少し間を置いて、笑う。

「このままだとさ」

「利益取る前に、領地が死ぬ」

執事が震えた声で言う。

「……旦那様、それは……あまりにも……」

「らしくないか?」

「……はい」

俺は椅子から立ち上がる。

「じゃあ今日からは、“らしくない領主”でいく」

その時、ふと理解する。

(……この“土地改良”)

(もしかして、これがまともに機能したら――)

視線が窓の外へ向く。

「……見てろよ」

小さく呟く。

「詰んでるなら、やり方変えるしかねえだろ」

その日。

悪徳領主は――

初めて“まともな政策”を口にした。

そして同時に、まだ誰も知らない“土地の再生計画”が、静かに始まろうとしていた。

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