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見ない、聞かない、語らない  作者: 佳凝
上部 冗談すぎ、見るな
9/12

第9話―第五夜(前編)「輪廻転生」と「アップグレード」

『小霊?』


「……」


『今夜はどうした?』

『横になったのに、何も話さないな』


「おじいちゃんが話して」

「聞いてるから……」


『ふふ』

『私が明日帰るから、元気がないのか?』


「……」


『違う?』


「……」


『小霊』

『最初の夜に、私が言ったことを覚えているか?』


「えっ?」


『一つ目の伝えたいこと』


「忘れてた」


『どんなことでも、表に出して話していい。忌み嫌う必要などないって』

『言ったんでしょ』


「……うん」


『だから、話してみろ』

『思ったこと通りに』


「この数日」

「私たち、いろんな話をした」

「私も、いっぱい考えた」


『うむ』


「その中で、変な考えが浮かんだ」

「自分でも驚いた」

「でも、それが正しいかどうかわからない」

「おじいちゃんに、どう聞けばいいのかもわからない」


『なら、まず結論から言いなさい』

『そこから遡ればいい』


「うん……」

「本気で言うよ」


『うむ』


「私は、今のおじいちゃんが……」

「魂じゃないと思う」


『ふふ』

『では、私は何だ?』


「四次元生物」


『えぇ……』

『どうしてそう思った?』


「この数日、一番印象に残ったのは」

「おじいちゃんの話じゃない」


『ほう?』


「その話をしている、おじいちゃん自身」


『私自身?』


「うん」

「おじいちゃんって、本当にすごい」

「何でも見抜く」

「しかも、すぐに」

「まるで机の上の絵を見下ろしてるみたいなの」


『つまり』

『三次元生物が二次元世界を見るように』

『私が、お前たちのいる三次元世界を見てると?』


「そう!」

「だから、その考えを続けてみたの」

「いくつか思い当たることがあった」


『ふふ』

『振り返りを覚えたな』


「そのいくつかのことを考えれば考えるほど」

「おじいちゃんは四次元生物に見える」


『話してみろ』


「一つ目」

「あの日、私がおじいちゃんのことを『鬼』って呼んだ時」

「その呼び方は好きじゃないって言ったでしょ?」


『言ったな』


「しかも、『魂』ならいいって言った」

「つまり、おじいちゃんにとっては」

「『鬼』も『魂』も、呼び方が違うだけで、本質は同じ」

「それって、四次元生物なんじゃない?」


『続けろ』


「二つ目」

「私が『五次元世界ってどんなところ?』って聞いた時」

「おじいちゃん、こう言った」

「『早すぎる。四次元生物のことなど、今のお前にわかるわけがない』って」


『それの何がおかしい?』


「早すぎって、どういう意味?」

「いつか私も、四次元生物になるのかなって思った」

「おじいちゃんみたいに」


『ふふ』

『まだあるか?』


「うん。 一番大きいのは」

「過去も、現在も、未来も見えるって言ったでしょ」


『うむ』


「四次元生物は時間を前後に動けるとも言った」

「だったら」

「おじいちゃんは四次元生物じゃないか?」


『ははっ』

『さすが超人だ』

『そこまで繋げるのか?』


「当たったの?」


『小霊』

『お前がさっきから、ずっと黙っていた理由がわかった』


「……」


『当たっているのが怖いんだろう?』


「……うん」


『何が怖い?』


「だって、もし本当にそうなら」

「宿命論が正しいことじゃないの?」


『いやいや』

『それは別の話だ』


「別じゃないよ!」

「未来が見えるってことは」

「未来が決まってるってことでしょ?」


『宿命論だからといって、何でもありじゃない』


「意味がわからない」


『自然でなければならん』


「……」


『例えば』

『アフリカのヌーやガゼルは、来年も大移動を続けるのか?』

『それとも途中で食われるのか? ライオンかチーターか?』

『私は見える。 それは自然だからだ』

『だが、もし私が』

『十秒後のお前は、まだ横になってると言ったら』


「じゃあ立つ!」


『うむ』

『十秒後、お前は立っている』


「また違う!」

「私……逆立ちする!」


『ほら見ろ』

『宿命は破れたんじゃないか』


「……」


『違うか?』


「つまり、おじいちゃん」

「私が横になるかどうかに関係なく」

「十年後、お金持ちになれるかどうかが見えるの?」


『ふふ』

『百年後』

『この世界にお前がいるかどうかが見えるぞ』


「……そんなこと、私も見える!」


『小霊、怖いか?』


「怖くない……」

「でも、まだわからないことがある」

「うまく言葉にできないけど……」


『焦らなくていい』

『ゆっくり話してみて』


「えっと……」

「今の人ってよく言うでしょ?」

「ああ、時間がない、足りないって」


『うむ』


「それって、二次元生物が」

「高さがない、足りない」

「って言うようなものじゃないか?」


『ふふ』

『面白い例えだな』


「でも」

「おじいちゃんは、時間を自由に動かせるんじゃないか?」

「人間は高さを動かせるみたい……」


『言いたいこと……なんとなくわかった』

『つまり』

『二次元生物は高さを失うことで、高さを扱える三次元生物になる』

『そして三次元生物は時間を終えることで、時間を扱える四次元生物になる』

『そういうことか?』


「そう! だから、私が思ったのは」

「生命は」

「『輪廻転生』なんかじゃない」

「『アップグレード』なんだって!」


『アップグレード?』


「うん」

「パソコンのソフトみたいに」

「もっと高機能になるの」


『面白い……いや』

『すばらしい考え方だ』


「でも」

「そこに、一つの……パラドックスがある」


『何だ?』


「おじいちゃん……」


『うむ?』


「……」


『どんなことでも、表に出して話していい。忌み嫌う必要などないって』

『でしょ?』


「……どうして」

「私を引き戻したの?」

「どうして『アップグレード』させなかったの?」


『……』


「何でも答えるって」

「昨日そう言ったでしょ?」


『ふふ』

『別に、アップグレードを止めてない』

『お前は最初から勘違いしてる』


「え?」


『私は四次元生物じゃない』

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