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原子という名の魔法  作者: 氷線香
中世、紀元前番外編
6/12

紀元前(空白の5年間)番外編1

アローと、ビゴは、ほぼ同時に10部隊へ昇格した。

「ア、アロー。い、一緒に手合わせしない?」

「どうせお前が勝って終わりだろうが。」

「も〜、べ、別にそんなことないって。じゃあ、」

ビゴはそう言うと、魔法を唱えた。

「ウィンド」

2人の間に風が吹く。

「は?」

アローは唖然としていた。

「どうやってやってるんだ。」

「へ、へへっ、びっくりしたでしょ!」

ビゴは鼻を鳴らす。

「こ、これはね、還元を使った応用術なんだよ。」

そう言うとビゴは机の上の鉄を取った。

「磁石を使うとわかりやすいんだけど、この鉄を酸素だとすると、このさがホウ素とくっつく。これがプラス極とマイナス極でくっついているとする。このホウ素の極を帰ると、お互い退け合うでしょ...」

(なんかこいつ、長ったらしく説明してるときだけ噛まねぇ。)

「じ、じゃあ始めよっか。」

「おう。」

「スロー」

刃がビゴへ飛んでいく。

「ウィンド」

ビゴの魔法によって全ての刃が弾かれた。

「アトプレッシャ・ハイ」

ビゴが唱えた後、マッチを投げる。アローは距離を取った。緑色に燃焼する。

「すげぇ、綺麗だ。」

辺り一面の花火に驚いていると、後ろから背中を突かれた。

「ア、アロー。油断しすぎだよ。」

ビゴが面白くなさそうに言う。

「わりぃ、あんなきれいな炎見たことなくて。」

「え?」


「ヒューー...ドン!!」

「き、綺麗、」

三原色に輝く花火が、辺り一面に広がる。7年前の夏、幼少期のビゴは、家族と共に一時を過ごした。父親が兵士で、滅多に帰ってくることはなかったが、その日だけ、帰省が許可された。

「き、黄色の花火を作り出すナトリウムと、あ、青色の花火を作り出す銅を混ぜたら、み、緑色の花火が作れてしまいますよね。」

ビゴは花火大会の後、花火大会の主催者、ミヤストロンに話を聞いた。もちろん花火も綺麗だったが、それよりも、家族揃って笑顔で見る花火が、あまりにも綺麗だったので、もし、次に父親が任務から帰ってくることがあったら自分もこの大会に参加したいと思った。しかし、決して素人が入れるような花火大会ではなかったので、ビゴはダメ元で尋ねる。

「そんなことないよ。実はお互いが干渉し合ってうまくいかないことがほとんどなんだ。だから、緑色に発色できるホウ素や、バリウムはよく使われるとてもありがたい原子なんだよ。」

その時は、喜びに浸ったビゴだったが翌年、父親が帰ってくることはなかった。任務で忙しいのか、もう死んでしまっているのかも分からない。

しかし、来年、再来年また来てくれる事を願ってビゴは花火の発色を練習した。そのうち、還元系の魔法を覚え、その応用型として、酸素による風魔法を習得したのだった。


(て、手合わせしたのもこの花火を見てほしいっていう口実だった。け、けど、アローの方から言ってくれて嬉しい!)

「あ、ありがと。」

「どうやってやるんだ?」

「ア、アローの場合、スチールウールを作るの。ほ、細い鉄にすることが重要で、そういうのをスチールウールっていうんだけど、操るのかなり難しいの。」

「別にそんなことないだろ。」

アローはそう言うと、数ミリサイズの小さな筒の管を簡単に作った。

「どうだ!」

「え、えっと、もう少し細く。」

「おいおい。それマジで言ってんのか?」

アローの作る注射針のような細い鉄は、アローのいた地域ではほとんど作れる者がおらず、それがアローの自慢の一つでもあった。


翌日

10部隊は核所有国への出陣が命じられた。


「また来ちまったな。」

「うん。」

以前は罠にかかりそうになり、死にかけたが、今回はその教訓があったため、警戒心がより一層高まっていた。

「今回は迷路じゃなさそうだな。」

アローとビゴのいる部隊の視線の先は1人の敵兵に向いた。


「貴様、何者だ!!」

隊長が言った。

「0@?」

(やはり、言語が通じな...)

「はぁ、せっかくここで気持ちよく寝てたのに。」

その敵兵は確かにオーガ語を話した。

「オーガ語が通じるのか!!さらば、今すぐ捕まれ。そうすれば命だけは助けてやる。」

「あのさぁ。俺1回も負けたことないんだよね。しかもこれだけ大勢いてもビビらないってどういうことかわかる?」

「こりゃあとんでもねぇ猛者と出会っちまったねぇ」


少しの沈黙の後、


「総員、奴を囲め!」

隊長の指示のもと、兵士たちが背後へ回ろうと走り出す。

「無駄無駄、もう何もかもがあり来たり。」

兵士は落とし穴に引っかかる。

「そろそろこっちからも攻撃するね。」

「スロー」

敵兵は何かの液体を兵士に向かって飛ばすと、兵士の鎧が溶け始めた。

「硫酸。」

「どうした、ビゴ。」

「と、溶かしたのはつよい酸性によるもの。だ、だから...」

ビゴはハッとすると共に上を見た。大量の硫酸が浮いている。

(い、いつの間に。)

「じゃあまたね〜」

すると硫酸が一気に降ってくる。

「ハード」

屋根を作り回避するものもいたが、半分ほど皮膚が溶けた。

「おい、どうするビゴ。」

「わ、わからないよ。」

「わりぃ。」

すると敵兵はビゴに気づき言った。

「君、ホウ素操ってるっぽいね。うちの補助としてどうだい?もちろんそこより良い条件はつけよう。君さえ来てくれればここにいるヤツ全員見逃してやる。」

「じ、じゃあアローも...」

「なに、隊長ならいいよ。だがそれ以外はだめだ。鉄とか、アルミとかは腐るほどいるからね。」

「そう、ですか。」

するとビゴは敵兵に向かって歩き出す。

「だめだ!ビゴ!」

アローは必死で止めるが、硫酸により、鉄が腐ってきて、それどころではない。

ビゴが敵兵の目の前に来ると、敵兵は金の手錠をかけた。

「あいつ!どうして金を。」

「あぁ、自己紹介したほうがよかったかな。俺はウラン国の総司令官、イドロ・アシッド。ま、覚えなくていいけど。」

イドロは、ビゴと一緒に国へ帰った。

こちらは撤退し、6部隊に任務が引き渡された。


「アロー!おい、アロー?」

翌日、アローは部隊から姿を消した。


ウラン国にて、

「おい、お前、何をしてる。」

「拉致されたやつを見てねぇか?」

「そんなの知るか。お前は敵国の兵士だろ。さっさと出てけ、さもなくば殺す。」

「そうか。なら、」

「スロー」

問題の兵士を素早く切りつけ、アローは国の敷地に入る。

「捕らえよ!」

兵士や町人が、次々と物を投げるが、当たっても全く止まる気配が無かった。そのまま、政府機関までたどり着き、その中を走り回り、ようやくイドロとビゴを見つけた。イドロは昨日のような兵士の装備とは真反対のスーツを着て、ビゴは、白のワンピースと、赤のハイヒールをはいていた。

「ア、アロー?」

ビゴは驚いていた。

「迎えに来たぜ。」

「なんなんだお前は?」

イドロは混乱している。

「お前、ビゴに戦わせる気満々みたおなこと言っといて、なんだこの状況。」

「あぁ、そうさ。このビゴ?とかいうんだっけ。この子は俺のために戦ってくれる。そうだろ?」

イドロはビゴのほうを向く。

それと同時に警備隊がアローを見つけ、捕まえようとする。

「あぁ、いいよいいよ。そんな無理に捕まえないでやってくれ。彼はこの子の想い人なんだ。それを無理やり引きはがすってのは流石に気の毒すぎる。」

するとイドロは、アローに向かって手招きした。

「場所を変えよう。ビゴはここで待ってなさい。」

そう言ってアローは会議室へ連れて行かれた。


「君はビゴちゃんにとってどんな存在なんだい?」

「相棒だ。俺はあいつがいねぇと何もできねぇ。だがあいつさえいてくれれば何でもできると思うんだ。」

「俺がこの場で君に1億出すと言っても?」

「渡すわけねぇだろ!」

「そうかそうか。じゃあここで、俺の自慢話を聞いてくれないか?」

「興味ねぇよ。」

「そうか。なら聞き流して構わない。」

イドロはそう言うと用意された紅茶を飲みながら話した。

「まぁ、俺は総司令官なだけあってこの国では一番強い。君の国で言うと、長髪の兵士や、総司令官よりもだ。2年前、オーガから長髪の兵士率いる第1部隊が攻めに来たことがあってね。確かに手ごわかったけど。結局オーガ軍隊は引き返した。あっちは10人ほどいたんだけどね。こっちは3人だったのにも関わらず。」

「でも、引き返したってことは殺せなかったんだろ。」

「人情が出てしまったようだね。」

「嘘つきやがれ。あいつは人一倍使命感があって逃げねぇってことをビゴから聞いてんだよ。」

「君がそう解釈するならそれでいい。だが、昨日のやつをみればわかるだろう。俺の強さと君たちの未熟さが。」

「...。」

「何も言わないってことは認めたってことでいいね。それなら交渉しようじゃないか。君がビゴちゃんをこっちに引き渡してくれれば俺の権力でそっちへの侵攻をやめさせる。でも、もし断ったら。分かってるよね。」

イドロはアローの横で囁く。

「そりゃあすごい交渉だな。まぁ、オーガなら捨ててもらって構わねぇよ。俺の母国じゃねぇからな。」

「は?じゃあなぜお前はオーガの兵士として戦ってる?」

「お前がビゴにしたことと同じだ。あと、お前総司令官じゃないだろ。」

「スロー」

イドロに刃物が刺さり出血する。

「お前。ふざけ...」

「ブルッコ」

イドロの血液がイドロをさらに切りつける。

大量出血で、イドロは意識を失った。

(ここの会議室は机や椅子に鉄が使われていたから不意打ちに成功したけど、こんな所に連れて行くとかアホか?どれだけ焦ってたんだよ。)

少し物音があり、階段を誰かが駆け上がってくる。アローが警戒していると扉が開いた。

「ギィィー」

「こ、これ以上はもうやめて!」

中に入ってきたのはビゴだった。その後ろで敵兵がビゴを止めにかかる。

「え?ど、どういう状況?」

「ビゴ、逃げるぞ。」

「ウィンド」

風魔法で窓ガラスから脱出した。

「ア、アロー。風魔法、使えるようになったの?」

「まだ荒削りだけどな。」

「スロー」

誰かがアローたちに向かって金属を投げた。

「ア、アロー。もう少しスピード上げれる?」

「それはどういうことだよ。」

「み、見ててね。」

「アトプレッシャ・ハイ」

ビゴが魔法を唱えたあと、ホウ素を擦って火花を出す。それが燃え上がり。緑色の炎の道ができた。

「つ、突っ込んで!」

「無茶言うなよ!!」


その後ボロボロになりながら、部隊に戻り、隊長から二六時中、説教された。


「ってか、戻んなくてよかったのか?」

「ど、どこに?」

「アトムだよ。お前、アトム出身なんだろ。」

「じ、実は違うの。ま、まぁ色々な言語に触れられたからアトム語も話せるだけであって...」

「じゃあどこ出身なんだ?」

「ご、ごめん。あ、あんまり言いたくないかも。」

(マジのやつじゃねえか。)

アローは少し焦った。

「すまねぇ。いやなこと思い出させちまったかもな。」

「そ、そんなことないよ。えへへ。」


とても長い2日間であった。


―原子という名の魔法 紀元前(空白の5年間)番外編1 完―

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