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原子という名の魔法  作者: 氷線香
中世、紀元前番外編
5/12

中世編 前編

―世界は紀元後より大幅に進化した。―

電子機器が生まれ、エネルギー保存の法則が原子魔法によって、無視することができると証明された。それにより、永久機関が生まれ、エネルギーが無限に作れた。それによりもっと遠くの場所へ行けるようになり、宇宙から大量に物質を得られた。『モノ』という概念は、価値を失い、生物、芸術、宗教、未知の物質等がトレンドのよくわからない世界が誕生した。そして、努力の必要性すら無くなった。


「進化によって、人々は農業をするようになったって、なんか先祖返りしてる気分。」

畑を耕しながら、俺は音楽を聞く。

変わらないいつもの景色、何気ない日常に嫌気がさしていた。

「そろそろ学校行かねぇと。」

支度をし、メイクをし、学校へ向かった。


「ここのけれ、けり、ける、はしっかり...」


退屈な授業が進んでいく。


西暦1000年以降、戦争もぼちぼちあった。今もまだ続いている。やろうと思えば、地球人全員で仲良くあと1億年くらい過ごすことだって可能なのに。今まで作られてきた、電子機器なり、原子魔法なり、先人の築いた礎は、大量にあって、俺たちは、そこからできる限り平和で、無機質なものを選ぶだけの簡単なこと。

しかし、その礎を簡単に壊し、紀元前に行われた悲惨な戦争の数々に再び触れようとしている俺たち現代人は、馬鹿だ。愚かだ。そして、その状況に文句一つ言えない俺や、国民全員も馬鹿で愚かな存在だった。

一度被爆したオーガを、消滅させまいと努力した当時の総軍司令官アローの格言も、17歳という若さで、政府の陰謀にたどり着き、国を動かしたフェインの行動力も。永久機関の存在を証明したヨハンの原子魔法学も。何もかもが人のあり方を豊かにした。

しかし、どんな世紀の大発明がされても、人の欲求は満たされなかった。

そんな中、陽子魔法によって場所という名の3次元、時間という名の4次元の常識が覆せるのだとか、まぁ、歴史の中で完全の陽子魔法使用者は淘汰されたので実現は不可能だろうが。

一応、そんなこと言ってる俺は実は陽子の魔法が使る。と入っても、陽子が一つしかない水素原子くっつけて、陽子を2個にさせてヘリウムを作り出すくらいしかできないが。しかもそれも持って数分。


「ストラクチャラルチェンジ」


水槽の水位が減った。まぁ、水が酸素と水素にかわり、その水素が魔法によってヘリウムへと変化しただけだが、それに数分すればまた元の形に戻ってしまう。2個以上の陽子の使用は今の俺ではできなかった。


家に帰ると誰もいなかった。母や父は出稼ぎに出ているため、いないのは当たり前なのだが、寮から戻ってきたはずの姉もニートで四六時中ひきこもっている兄もいなかった。とりあえず連絡をしようと思い、スマホを持ち、音楽を...いやいや、こんなことしている場合ではない。電話をかけるが、誰ともつながらなかった。

結局、その日は俺以外、一人も家に帰ることなく終えた。


翌日

昨日送ったメッセージに既読がつく様子がない。引きこもりの兄までいないのはさすがにおかしい。どこかで友達と遊んでるなり、魔法を勉強してるなり、仕事を探しに出たなら感激だが、置き手紙の一つもないとその説は薄いだろう。農地が荒らされてる様子はない。


「どうしたものか。」


さすがにそんな理由で学校を休むわけにはいかないので、田を耕して、メイクして、学校へ向かった。

敵国の襲来と、拉致事件は学校に行ってから知った。その被害者が丁度俺の家の奴らだった。姉と兄が拉致され、脅迫され、父と母の場所が突き止められ、俺以外、連れ去られてしまったらしい。あっちも焦っていたのか、3人目の子供の説を考えなかったことが不幸中の幸い。いや、俺だけ残されるくらいなら、家族と一緒に、、なんてことを考えたが、それは違うと同時に思った。いっそのこと復讐しようと、マグネシウムや、酸素や鉄、塩素や炭素を探したが使えそうな物質は、すべて漁られてしまったらしい。今ここにのこってるのは水素、宇宙へ簡単に行けるようになってから、価値が暴落したため、持つだけ無駄だと言われた物質だが、今はこれしかない。 

陽子魔法は力の小さなものでも簡単に、人を殺めることができる。例えば水素をヘリウムにしかできない俺でも、人間の水分をそのまま酸素と水素に分解して、その水素をヘリウムに変化させることで、物質の特徴が異なるため、即死させることができる。しかし、イメージできないものは操ることができない。原子魔法で生物や、細胞を操ることができない理由は色々あるが、その一つはこれ。さらに、イメージできたとしても、陽子魔法以外は操ることができなかった。


では、俺はどうやってイメージするか。


まず、人に水の含まれる液体や固体を食べさせたり飲ませたりする。それらが消化される前陽子魔法を使うことで、飲ませたり食べさせた水分から人間の水分まで操れる。しかし、消化されるまで5分程度しか持たないため、計画的な犯行じゃないと、効果が発揮できなかった。だから俺は完全犯罪をしようと決意した。まぁ、使える場面があれば良いいが。


とりあえず侵入したかったのだが、どこも監視が行き届いていて、夜になると、街灯がつく。だから侵入のベストタイミングは、街灯が点灯する前で、監視役が休憩する19時30分から35分の間、何重にもなってる結界を今自分が操れる少量の5つの原子と、学校から借りパクした塩酸を原子魔法で濃度を濃くする。

一通り溶かしたり、状態変化魔法を使ったりして、人ひとり入れるスペースはできた。そのまま入ると監視カメラ等でバレるのでこの穴のなかに水素を入れまくる。あとはマッチで火を付ける。一瞬爆発的に燃える。あとは風魔法で、瞬時に火の海を脱する。これで監視カメラには一瞬光ったような痕跡のみが残ったり

あわよくば、破壊されてる。

爆発の音で兵士がやってくるので、急いで夜でも人混みの多い場所へ逃げた。もう後は探す必要はない。なぜなら国の境界線で電波が遮断されているため、逆に言えば、国内であればどこでもつながる。


「頼む、誰か繋がってくれ。」


唯一繋がったのは兄だった。一番のハズレ枠。


「お前も今連れてかれてんのか?」


兄はコソコソと話した。話し方で恐怖が伝わってくる。


「いや、あんたらが拉致されたって聞いたから連れ戻しに来た。」


「何やってんだよ。今ならまだ間に合う。引き返せ。俺のことはいいから。」


「違う。兄貴のことじゃない。姉貴や親父やおふくろのことが心配なんだよ。」


「このやろう。」


「で、今どういう状況なんだ?」


「特になんもねぇ、窓があって、監視カメラがあってベッドがある。ここから外の様子は見えない。脱がされたり乱暴された形跡がないが、所持品はすべて没収されてる。」


「じゃあどうやって電話繋がってるんだよ。」


「俺が密かに開発した小型カメラと電話、趣味でこういうの作ってたんだよ。」


「犯罪者予備軍じゃねぇか。」


すると電話越しに足音が聞こえた。同時に電話も切れる。これ以上電話かけようと試みると、兄の小型カメラがばれて、最新技術の逆探知とか言うやつでこっちの位置まで特定される可能性がある。大体収容場所の目星はついているが、すべて確認するほど時間がない。ここで活躍するのがSNS、しかし、この国のスマホがない。もちろん電波のつかみ方もわからない。

だからここにある木の実が役に立つ。これとスマホを交易する。本来、木の実と電子機器の交換は数十キログラムの木の実が必要だが、この地域ではこの木の実は取れない。しかも、かなり品質のいい一級品と交易することで、200グラム程度での交換が妥当。このために毎日畑を耕し作物を育て、木の実を山から収穫した甲斐があった。

第二の壁、言語。翻訳アプリで大丈夫なのだが、問題はそこではない。想像してみれば簡単だ。この国は国交をほとんど結んでいない。つまりこの国の言語を翻訳アプリでリアルタイムで調べると、敵地のど真ん中で私はあなたたちの敵ですと名乗り出るの同然である。俺が選んだ選択肢は、一か八かここでこの言語を覚える。代表的な動詞、代名詞、名詞の発音を聞いて一通り覚えた。


5分後


「す、すみません。」


声をかけると外人(メタル国人)は俺のほうを見て、次の言葉を待っている。チャンスだ。


「この、きのみ、交換。」


付属語がおそらくないため、少し不自然に感じるかもしれないが、名詞だけでも十分伝わった。こちらには、木の実500グラムとその他野菜や果物が少しだけ入っていて、実は、侵入する際、抱き枕のように抱いてから風魔法を使ったため、多少苦労した。外人は運良く二つ返事(首を縦に何回も大きく振って握手までしてきたので、おそらく納得してると勝手に思ってるだけだが。)で受け入れてくれた。

マップや、写真を通して、いくつかの収容場所の建物の特徴を得た。時刻は11時30分を回ったところ。俺はもう一度電話を兄にかける。そして無事、繋がった。


「おい、なんかされてねぇか?」


「いや、俺もなんかされると思ったんだけどな。メタル国の言語を学ばされた。」


「は?何言ってんだよ。お前の小型カメラも電池に限りあるだろ。もう少し真剣に...」


「本当なんだよ。朝に少し運動させられて、お昼に畑仕事させられて、夕方過ぎにメタル国の言語を学ばされた。なんかもうちょっと乱暴されるのかなとか思ったんだけど、全然そういうことじゃないらしい。しかも、なんか意外と快適だし。なんか明日から、掃除みたいのを始めるとか何とか言ってたけど。」


「じゃあ一生そこに住みついてろ。」


「おいおい。冗談もいいかげんにしてくれよ。で、何の用だ?」


「収容場所の特徴って分かるか?例えば銅像があるとか、めちゃくちゃ敷地が広いとか。」


「いや、別にそういうのはなかった。ただ...」


そこで電話は切れてしまった。充電が切れたのか、看守にバレそうになったのかは分からないが、今日はもう遅いので、寝ることにした。ここは特に目立った場所ではなく、見つかる心配もないので。寝ることにした。


「ファイヤ」


焚き火をして就寝した。


翌朝

「ウォキシ」

焚き火を消して兄と連絡を取ったが、出てくる様子がない。おそらく洋服ごと没収されたか、電池が切れたかの二択。少しふざけて会話しすぎた。 


「特に目立ったところがない収容場所。7件もあるのか。」


そういえば、あいつ勉強したとか、運動したとか。つまり、あいつが今いるのは収容場所なんかじゃなくて、、、

案の定、寮付きの中高一貫の学校が合った。つまり、あいつは今、学校で青春してるかもしれない。最初は飲み込むのも無理があった。勝手にメタルに連れてこられて、敵国の学校で、メタルの言語を学び、運動し、三食付きで寝床もある。メタルは今、激戦区真っ只中で、敵国の奴らに教育を受けさせるなんて不可能だった。なんのために?


とりあえず、居場所は特定出来たので急いで向かう。最新のニュースを見る限り侵入したことはまだバレていない。


30分後

到着した。数十人ほどしか収容できなさそうな場所。そんなとこに、なぜ、置いとくだけ無駄なニートなんかを置くか意味不明としか言いようがない。

中を覗こうと試みたが、誰もいなかった。兄に何人くらいと生活していたのか聞きたかったが、もうこの状況では叶わない。というか、運動できそうなほど校庭は広くない。写真では、広かったのに。いわゆる刑事法違反だ。色々怪しまれない程度に回ってみたが、人のいる気配がない。


「どういうことだよ。」


その時、ふと思い出した。


―陽子魔法によって場所という名の3次元、時間という名の4次元の常識が覆せる―


俺たちオクス家の民は代々陽子を操れる。つまりどちらか完成してしまったのかもしれない。過去に行けないことはもう分かっているので、少し先の未来まで行く術があるのか。または無限の場所が確保できる原子があるのか。ブラックホールが完成した説も否めない。まぁ、その場合とっくに世界は終焉を迎えているが。


建物に誰かいる様子はない。恐る恐る建物に入ると、外側は赤いのに内側が黒いモノがあった。みるみる吸い込まれていく。


―気づけば光の届かない。場所にいた。―

失明してしまったのような暗さ。声すらも吸い込まれる。このまま地球は吸い込まれてしまいそうだ。

「痛っ」

左右から圧力がかかった。

「アトプレッシャ・ハイ」

気圧どうこうの話じゃないみたいだ。酸素が薄い。

でもおかしい。時系列的に、ブラックホールが仮に俺と兄が電話した当日にできたとしても、もう今頃、地球は飲み込まれている。


―♪―

意識が朦朧としてる中、声がした。だが何も見えない。たいていの音は、吸い込まれてしまうので、相当大きな音だ。もう何が起こっているのか分からない。だが、このままでは死んでしまう。頭痛が強くなってきた。特異点が見えてこない。

「オキシダズ」

何をやっているのだと、自分で思った。ただ、少し興味があったのだ。何でも吸い込んであるということは。空気も吸っている。

―ブラックホールって酸化するのかな。―


「ウォキシ」


「ファイヤ」


「メルト」


『バーニング』


一度も唱えたことの無い魔法だった。そもそも法律で禁止されてるし。ただ、落ちていっているのがだんだん気持ちよく感じてきて、今なら何でもできそうだ。


1時間後、気づけば自分は寝ていて、銃を向けられていた。


「おい。何やってんだ。」


そのまま俺は連行され、尋問された。俺が外国から来たことはもう分かっているらしく、翻訳機を渡された。


「目的は?」


「この国に家族が拉致されたからです。」


「つまりお前は陽子を操れるのか?」


「まぁ、ちょっとですけど。」


「ここで少し待ってろ。」


俺に指示すると、刑事デカは部屋を出た。それとともにカンコーヒーを飲もうとする素振りが見えた。こうなってしまえば俺の思う壺。尋問されている間にも水素と酸素を操って部屋を乾燥させていた。


5分後

刑事デカが帰ってきた。もう5分たってしまったが、糖分の多いコーヒーは、消化に数十分かかるので問題ない。刑事デカは俺に銃口を突きつけた。


「わかってると思うが、これからお前を家族のもとへ連れて行く。」


「そんなこと言って、収容施設に連れて行くだけですよね。」


「黙れ。実はだな。ブラックホールの研究をしているチームがあって、陽子魔法の使い手を募って実験したら、できてしまったんだ。今は申し訳ないが、ほかの国から陽子魔法の使い手を拉致して、ブラックホールを小さくしている。あと一ヶ月ほどかかる。良ければお前も...」


「ざけんなよコノヤロー!!」


久しぶりにこんなにでかい声が出た。自国ならまだしも、なぜ他国からの要望を拉致までされたやつが、一ヶ月かけて尻拭いしなきゃいけないのだろう。食事や寝床が出されてる理由も分かった。1つ目のブラックホールは破壊したが、事態が収まってないということは複数ある。もう間に合わない。なら、いったん腹いせに。


「ストラクチャ...もういいや。お前らにつきまとわれる暇はない。」


「メルト」


炭素でできた建物が溶けた。


「ウィンド」


そして、大きくてわかりやすいブラックホールから、突っ込んでいった。

やはり横から強く圧されて、縦に伸ばされている感覚になる。


「バーニング」


ブラックホールの原子核は破壊された。一発やるだけでも、かなり体力を浪費する。

3つ目のブラックホールに潜りこんだとき、俺は思った。


「どうしてブラックホールがあるにも関わらず、地球はまだ存在するのだろう。」


―原子という名の魔法 中世編 前編 完?―
















―原子という名の魔法 ???編―


青年は目覚めた。朝の六時。

「なんか今日は変な夢だったな。」

青年は、朝食を済ませ、次に住める星を探すべく衛星を飛ばす。


1397年。

突如陽子魔法の使い手がブラックホールを完成させた。地球は数十秒で飲み込まれ、生き残ったのは電子魔法で一時的にブラックホールのコアを破壊した15代目ラフテル教皇と、その周りにいた人々だった。その後は、15代目ラフテル教皇が、ブラックホールのコアを破壊している隙に、周りにいた人々は地球を脱出した。運良く、酸素魔法、金属系魔法。水素魔法を操れる人々がいたため、長い年月をかけ、今青年たちが住んでいる、プロキシマ・ケンタウリbへ、たどり着いた。それも何世代にもかけて。

(ブラックホールに吸い込まれた人は、どんな感覚だったのだろうか。痛覚を感じる前に死ぬとは、鬱の人たちにとって救いなのだろうか。

―ブラックホールに吸い込まれた人たちは、どのような夢物語を見ているのだろうか。―)

音楽を聞いて青年は農業作業を始めた。

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