中世編 本編 6話
アイソトープ・ジェネレーション 特定の原子がほかの原子から中性子のみを引き寄せる。水素を重水素へ変化させたり、ヘリウム原子から引き寄せる。元々の放射能の有無に関わらず、すべての物質に放射能を得させる事が可能だが、一番実用的なのはどこでもある水である。
「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪...」
着信音?アラーム?何の音だろう。体は動かない、視界もぼやけている、動かせるのは目と口だけ。おそらく首をやったのだと思う。こうなってしまえばおしまいだ。
「ファイヤ」
視界が暗く、ぼんやりしているのでとりあえず光源を確保したい。しかし何も起こらない、身体が限界で魔法を繰り出せないのだろうか。
あたりはじんわり冷たく、無風。
「これは、鉄?」
おそらく牢獄だ、ニニチタンはどうなったのだろうか、空気口がなくこのままではなすすべなく餓死だ。
光源が作れなかったのも炭素がなかったからだろう。酸素原子と鉄原子のみだ。細胞を殺して炭素を得ようとしたが、体は清潔に保たれていて肉を剥ぎ取る事ができない。まさに生き地獄だ。首を負傷し、顔以外動けない。こうなったら、、
俺は自分の舌を思いっきり噛んだ。
少しだけ舌がちぎれる。
「これにも炭素が含まれてんだよな。」
細胞が死ぬのを待つ。
15分ほどだろうか、舌のかけらが動かせるようになった。あとは密度を高めて、、
「ハーダー」
炭素さえあれば舌からダイヤモンドを作り出すことだって可能、直径5ミリほどのダイヤが出来上がった。
「ショット」
「スロー」
「ショット」
「スロー」
だめだ。こんなんじゃ鉄の壁を壊す前に餓死してしまう。
「こうなったら」
「スロー」
すると俺の体は浮き上がり、壁に勢いよくぶつかった。「髪」には生きた細胞はなく、実質動かすことができる。実戦で使われないのは今では炭素を扱える人間が多すぎて相手が炭素使いなら、この攻撃はほぼ通用しないし、毛根から動かせないため、相手はあえて髪を切り回避することすらできてしまうのだ。
このやり方は、一瞬首吊り状態になり、叩かれた衝撃で骨折することがよくあるが、今はこうするしかない。
―1時間後―
少しボコッと凹んだが終わる気がしなかった。
意識も朦朧としてきた。肋骨はほとんど折れ、髪は抜け落ち、首は痛みを増した。
―オーガ役所にて―
「ニニチタン、お前どういうつもりだ?」
「ケッ、あんたやっぱり衰えてねぇな。」
「元軍隊総司令官だからな。第1部隊程度なら現役のやつでも勝てる。話をそらすな。俺はお前を信用してるんだ。下手な真似しなきゃここから解放してやる。」
「信用してもらってる中悪いが、俺はあいつを返してもらうまであんたに殺意むき出しだぜ。」
「勝てないことが分かっていても私に歯向かうか。まぁいい、お前も鉄箱送りだな。」
「あいつには出るのが難しいだろうが、俺は鉄箱の弱点を知ってる。入れたきゃ入れればいいさ。」
「そうか、なら死をんでもらおう。逆らわなければ、また奴隷として働いてもらってもよかったんだがな。」
「余計なお世話じゃ。」
「スピン」
ニニチタンの攻撃が飛んでいく。
「ハーダー」
ニニチタンの攻撃は一瞬で防がれてしまう
「ニニチタン。最後の警告だ。お前はまだ上を目指せる。ここで終わっていいのか?」
「だから、余計なお世話だって言ってんだろ!!」
「ウォキシ」
ニニチタンは400フィート離れた池から水を吸い上げる。
「ほう、酸素、水素魔法を習得したか。だが水系魔法ではお前より実力が上な俺に、どう攻撃をあて...」
「アイソトープ・ジェネレーション」
「ニニチタン。お前、まさか、」
「案外こういうのってすぐできるよな。またな、あんたが敵になるまでは楽しかったぜ、どうせあんたが俺にブルッコを使わなかったのは人情ってやつが芽生えたんだろ。優しい優しい、
―アロー12世さんよ―」
「バーニング」
アロー12世は少し微笑むと、爆風で飛んでいった。
「『アイソトープ・ジェネレーション』と『バーニング』一回この魔法で世界が滅びかけたんだってな。バカらしい。」
ニニチタンはそうつぶやくと、青年の収監されているであろう鉄箱へ向かった。
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―15分後―
「メルト」
「何をされているのですか、ニニチタン様!」
看守が慌ててニニチタンを取り押さえようとするが、びくともしない。
「いいからこいつを今すぐ鉄箱から出せ!」
「別に構わないのですが、
―もう息を引き取っておりますよ―」
「は、、、」
「あとから事情聴取を行おうとしたのですが、自ら壁や床に自分を叩きつけて、10カ所以上骨折したまま、内出血により死亡しました。あとで棺桶に移そうとしたのですが...」
「なんで助けなかった!!」
「ニニチタン様、落ち着いてください。彼は不法入国した大犯罪者ということが分かっていて...」
「お前は!!
あいつの過去を知らないだろ。」
「ニニチタン様、お言葉ですが、戦争を繰り返さないために、不法入国者は徹底的に排除する。これは国の方針ですし、ただでさえ飢饉によって国民が危ないのです。優秀な人材も戦死で不足し、もうあとがないのは分かっていますよね。」
「じゃあ、今すぐ陽子魔法の研究室から、オクス家を全員母国に戻せ。」
「彼らは満足しています。報酬は定期的に出していますし、良い待遇を受けさせているので、簡単にはどうじません。」
(情ねぇ情ねぇ情ねぇ!!俺はあいつの何一つ守ってやれなかった。約束を何一つ果たせなかった!!こんな結末あんまりだ!!15年前から、第1部隊にはいるまで、誰一人俺の自己中を聞いてくれるヤツなんていなかった。風の噂を流され、皆、国の平和は守ってくれるが、関わったらマズイとか冷たい対応を取りやがった。あいつほど優しく、俺に寄り添ってくれるヤツなんていなかった。いっそのこと、全部壊しちまうかな、、、オレにそんなことできるのかな。)
「一応オクス家の人間なので、解剖が必要です。ニニチタン様はどっか行ってくれませんか?細菌がうつりますよ。」
鉄箱の中から出てきたのは血まみれで、ほとんど原形にとどめていない青年の姿だった。
―原子という名の魔法 中世編 本編 第6話 完―




