第3話 阿修羅高校、朝の狂気と男汁全開の登校
統「おい京一、シャキッと歩け。お前さっきから足取りが完全に夜逃げ中の残党なんだよ」
俺葉「黙れ統。昨夜、299円の繊細系ラーメン(進化形態:スープ完全吸収仕様)を消化するために、俺の消化器官は全精力を注ぎ込んだ。いま俺の胃袋は『終末の処理工場』と化している」
統「ただの食べ過ぎと消化不良やろがい。あとお前の部屋の鍵、昨夜ハンガーで開けたまんま施錠してねえだろ。セキュリティ意識が終末を迎えてんだよ」
朝の8時15分。
俺と統は、相変わらず徒歩3分の距離を無駄に重厚な足取りで並んで歩いていた。
向かう先は、俺たちが通う神奈川県立・阿修羅高等学校。
県内屈指の「野郎しかいない男子校」であり、校名からして仏教の戦神を冠しているだけあって、集まる生徒も校則も、どこかネジが数本飛んでいることで地域では有名だった。女子生徒の視線という抑止力が存在しないこの空間は、言わば男汁とバカの純度100%濃縮還元エリアである。
俺葉「だいたいな統、阿修羅高校の校門前を見ろ。あそこをくぐるだけで人間の尊厳が3割ほど削らされるんだ」
校門の前には、巨大な阿修羅像のレプリカと、仁王立ちする生活指導の「鬼頭先生」が立っていた。
鬼頭先生の手に握られているのは、竹刀でも指導用パイプ椅子でもない。
なぜか『巨大な魚すくい用の網』だ。
鬼頭「さあ来い野郎ども!! 男子校の乱れは世界の乱れ!! ベルト忘れてジャージの紐で縛ってる奴と、寝癖がひどい奴は網で捕獲して校庭5周だ!!」
統「捕虫網で男子高校生を捕獲しようとするな!!」
統がすかさずツッコミを飛ばす。
俺葉「ふっ……甘いな鬼頭。俺の今朝の寝癖は『無風状態のつむじ風』をイメージした緻密なアシンメトリーだ。網などにはかからん」
統「ただの爆発頭だろ!! ほら言わんこっちゃない、鬼頭先生がこっち見て網構えたぞ!! 走るぞ京一!!」
俺葉「ヌオオオ! 母体(201号室)で鍛えた足腰を舐めるなよ!!」
校門を猛ダッシュで駆け抜け、鬼頭先生のスイングを間一髪で回避した俺たちは、息を切らしながら2年B組の教室へと滑り込んだ。
教室の扉を開けると、そこはすでにカオス(阿修羅)の坩堝だった。
黒板の前では、むさ苦しい男子数人が「自作の紙相撲」で朝から血で血を洗う死闘を繰り広げており、窓際ではブレザーを脱ぎ捨てた奴が「今日こそベンチプレスで自分の限界を超える」と称して、他人の机を持ち上げている。女子の目がないのをいいことに、全員が野生に戻っていた。
俺葉「……なぁ統。俺たちの学校って、本当に偏差値存在するのか?」
統「存在するよ。ただ全員がその偏差値を足し算しても、一般的な高校生一人分に届くかどうか怪しいだけだ」
俺葉「なるほど、つまりここは集団的知性の極致というわけか」
統「ポジティブにバカを表現するな!! さっさと席つけ!!」
俺と統は自分の席につき、朝のホームルームという名の嵐の前の静けさを迎えるのだった。
よろしければ次回も読んでいただけると幸いです。
登校したときの荷物検査、毎度ハラハラします。
次回もお楽しみに!




