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『第13話:ニ◯リで『母体』をレイアウトせよ(※ベテラン店員との死闘)』

長野から250キロを走破した激震の週末。


俺と統の脚はまだ生まれたての子鹿レベルにガクガクだったが、俺たちは青空の下、大型家具量販店『ニ◯リ』の巨大な店舗の前に立っていた。


統「……で? なんで脚が死んでる状態でニ◯リに来てんだよ」


俺葉「フッ……我が母体(201号室)のQOL(生活の質)を極限まで高めるためだ。今の201号室には万年床と299円ラーメンの空き容器しかない」


統「ただの汚部屋じゃねーか!! 早く片付けろや!」


店内に入ると、お値段以上なおしゃれ家具やインテリアがずらりと並んでいた。家族連れやカップルが穏やかに買い物を楽しむ中、俺葉は高級ソファコーナーの前で足を止めた。


俺葉「おい統……見ろ。この『お値段以上』と謳われる漆黒の革張り3人掛けソファ(12万円)を。これに腰掛け、右手に缶コーヒー、左手に『繊細系・麺形生命体』を持ちながらアニメを見る……これぞ真の『至高の母体』だ」


統「高えよ!! ってかお前、201号室の畳の広さ分かってんのか? このデカいソファ置いたら扉開かなくなるぞ!」


俺葉「フッ……問題ない。入り口が開かないなら、俺はベランダから出入りするまでだ」


統「戸建ての侵入ルートかよ!! 部屋の半分がソファで埋まるだろ!!」


その時――


???「あらぁ〜〜〜〜ッ!! お若いお兄さん方、お目が高いわねぇ〜〜〜〜ッ!!!」


突如として背後から、溢れんばかりのプロの笑顔と黄金の営業スマイルを身に纏ったベテラン熟年店員お姉さん――接客の鬼・強烈圧子(ごうれつ あつこ)がヌッと現れた。胸元の名札には『勤続20年・売上No.1』の金バッジが光っている。


圧子「このソファ、当店の最高級本革仕様なのよぉ〜! 今ならなんと、配送料半額! お兄さんみたいなスタイリッシュな方にピッタリだわぁ〜!」


(……チッ、金もなさそうなクソガキ高校生2人が冷やかしで触りやがって。だが私の営業トークにかかれば、このガキどもの親のクレカを引っ張り出させて12万のソファを即決させてやるわよ……!)


統「(……え!? 今、店員のお姉さんから凄まじい殺気と営業圧を感じるんだけど!?)」


俺葉「……ほう。お姉さん、このソファは俺の『母体』の次元を上昇させることができますか?」


圧子「勿論よお兄さんっ!! 次元どころか宇宙まで行けちゃうわぁ〜〜〜ッ!!(※笑顔)」


(……母体って何よ!? 宗教か!? 意味不明なこと言って気取ってんじゃねえぞガキが! 買わないならサッサと帰れよボケが!!)


圧子「さあさあ、実際に座ってみて! ほらっ、この包み込むような低反発! まるで羽毛に抱かれているようでしょう〜!?」


(……どうだ、座り心地最高だろ! さあ買え! 買いますと言え! 今月のアタシの売上ノルマがあと12万足りないのよ!!)


俺葉「……くっ、確かにこの低反発……俺の意識が『虚無思考・無限流入(ヴォイド・インフロー)』へと引きずり込まれる……! お姉さん、このソファで15分ほど睡眠デバッグを行っても?」


統「店内で本気で寝ようとすな!!」


圧子「あらぁ〜! 寝心地バツグンってことねぇ〜! じゃあ、こちらの『ローンシミュレーション表』をお持ちするわねぇ〜〜ッ!(※圧倒的スピードで紙を差し出す)」


(……寝るなクソガキ!! 売り物のソファでヨダレ垂らしたら定価で買い取らせるからな!!)


お姉さんの目が血走り、笑顔の裏で般若のようなプレッシャーが膨れ上がっていく。

押し問答と超ハイテンションな接客が続き、気付けば1時間半が経過していた。


圧子「さあお兄さん!! このソファ、本日限定でクッションもセットでお付けしちゃう! どうかしらぁ〜〜〜ッ!?」


(……ハァハァ……もう1時間半も喋り倒したわよ……これで買わなかったらマジでこのガキどもの足元に全自動バルサン焚いてやる……!)


俺葉は静かに立ち上がり、深々と息を吐いた。


俺葉「……お姉さん、素晴らしい接客でした。俺の心は決まりました」


圧子「本当ぉ〜〜〜〜ッ!? ありがとうございますぅ〜〜〜ッ!!(やったわ!!12万ゲットよ!!)」


俺葉「俺が本日、我が母体に迎え入れるのは――これだ」


俺葉がレジのベルトコンベアにそっと置いたのは、小物コーナーの隅に転がっていた『299円のカップ麺の蓋を押さえるためだけの謎の猫型置物(199円)』だった。


圧子「……え?」


俺葉「レジ袋は結構です。199円、ピッタリで」


統「ソファ買わんかったんかいーーーーーっ!!!(ずっこけ)」


固まるお姉さんに向かって、俺葉は199円の猫をポケットに突っ込みながら、腕を組んで静かに口を開いた。


俺葉「……お姉さん。最後に、一つだけ客目線からのフィードバック(ダメ出し)をさせてほしい」


圧子「……は、はい……?」


(……は??? クソガキがアタシにダメ出し……????)


俺葉「全体的に素晴らしい熱量だったが、『押しが強すぎて顧客のニーズ(201号室の畳の狭さ)に対するヒアリングが疎かになっていた点』と、『途中で出してきたローンシミュレーションのタイミングが早すぎて引いてしまった点』……この2点が本日12万円を逃した要因だ。次はもっと寄り添う接客を期待しているぞ」


統「どの立場からものを言っとんねんお前はーーーーーっっっ!!! 199円の置物しか買ってない客が一番偉そうにアドバイスすな!!」


圧子「(※ブチ切れすぎて目が血走り、笑顔のまま顔の筋肉がひくひくと痙攣する)」


(……このクソガキがああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!! 199円でコンサル気取るんじゃねええええええッッッ!!!)


背後から店員お姉さんの噴火寸前の般若のオーラをビシバシと浴びながら、俺たちはいつもの爽やかな秋風の中へと疾走していくのだった――。

よろしければ次回も読んでいただけると幸いです。

俺もソファほしいいい

次回もお楽しみに!

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