『第12話:長野から走って帰った俺たちと、いつもの休日』
チェーンソーを振り回すおかま校長の爆音と狂叫が、遥か後方へと遠ざかっていく。
統「はあ……はあ……! 命からがら逃げ切った……か……!?」
俺葉「ふっ、甘いぞ統。振り返るな。奴の『おかまセロトニン』は山を越えて追いかけてくるかもしれん」
大馬鹿太郎「ていうか僕たち……ここどこッスか?」
冷たい夜風が吹き抜ける、街灯すらない闇の中。
看板を見ると、そこには『長野県・標高1200m』の文字。
統「……終バスも電車もとっくに終わってるだろ。どうすんだよ!?」
賢木「フッ……僕のワイシャツに描いた全国路線図によれば、ここから我が校のある神奈川県本気ノ真面市までは、およそ250キロだ」
統「絶望的な距離をドヤ顔で提示するな!!」
財前「ふん、下々どもめ。僕の金でタクシーを――……しまんた、財布も携帯も山小屋に置いてきた」
統「金持ちの最大の強みが封じられてるじゃねえか!!」
絶体絶命の空気の中、俺葉は静かに夜空を見上げた。
俺葉「……統。昔の偉人は言った。『道がないなら、作ればいい。電車がないなら、走ればいい』とな」
統「聞いたことねえよそんな格言!!」
早漏「へへっ……言っておくが俺の足は『爆速仕様』だぜ? 250キロなんて実質5分みたいなもんだ!!」
筋張「フンス!! 250キロの夜間ランニング……これぞ至高の大胸筋有酸素運動!!」
極端尖「フッ……徒歩移動の完全効率化か。僕の『音ゲー走法(ノーツに合わせて足を出す)』を見せてやろう」
統「お前ら正気か!? 走って長野から神奈川まで帰る気かよ!!!???」
俺葉「行くぞ亡者ども!! 目指すは我が母体(201号室)と、熱々の299円ラーメンだぁぁぁッ!!」
クラス一同「「「うおおおおおおおおおーーーーーーーっっっ!!!(野獣の疾走)」」」
こうして、阿修羅高校2年B組による「深夜の東海道膝ガタガタ地獄マラソン」が幕を開けた。
◇
【午前2時:山梨県通過】
早漏「ハァ……ハァ……! 動脈が……動脈が破裂するぅぅぅ!!」
統「開始1時間で限界迎えてんじゃねえか!!」
鹿太郎「あ! 沿道にハンバーグの看板があるッス!! ペロペロ(看板を舐める)」
統「看板舐めるな汚ねえ!!」
【午前4時:静岡県突入】
筋張「ぬおおお!! 大胸筋が……乳酸の限界突破で発熱している……!! 身体が温かいぞ!!」
極端尖「くッ……足の運びが『判定:GREAT』に落ちてきた……パーフェクトが維持できない……!」
賢木「フッ……汗で全身のカンニングペーパー(肌の文字)が溶けて……青い人間になってきた……」
統「もうお前ら全員病院行けよ!!!」
【午前6時30分:神奈川県本気ノ真面市・阿修羅高校前】
朝日が昇る頃。
ボロボロの体操服、青いインクみみず腫れ男、看板を舐めすぎた男、息も絶え絶えの亡者たちが、奇跡的に校門前に辿り着いていた。
全員「「「ハァ……ハァ……つ、着いたぁぁぁぁ……!!!」」」
統「(地面に倒れ込みながら)生き……残った……奇跡だ……」
俺葉「ふっ……見たか統。これが人間の『底力』だ」
統「お前が言うな!! 身体中バキバキで一歩も動かねえよ!!」
◇
【同日朝:阿修羅高校・2年B組の教室】
ボロボロの姿で命からがら教室の自分の席へと雪崩れ込んでいた俺たち。
ガラガラ……とドアが開き、胃に穴があきかけの担任の先生が入ってくる。
担任「……お前ら、よく生きて帰ってきたな」
統「先生……俺たち、長野から走って帰ってきたんスよ……」
担任は深く溜め息をつき、教卓に資料を置いた。
担任「校長なら、今朝病院に運ばれたよ。山の中でチェーンソーを振り回しながら『アタシを脅かす悪い子は刻んでやるわぁッ!』と叫んでいたところを警察に保護されたそうだ。重度のおかまショックとPTSDで、しばらく入院らしい」
統「PTSDの原因、俺たちだけどな!!」
俺葉「ふっ……校長もこれで『火力が足りん』などと軽々しく言わなくなるだろう。めでたしめでたしだな」
統「全然めでたくねえよ!!」
担任「まあ……追試の件は校長が退院するまで保留だ。今日はもう帰って休め」
◇
【その週末:俺葉の部屋(201号室)】
ガラガラ……
俺葉「はぁー、宿題やった??」
統「やるわけねぇだろ、250キロ走った後だぞ」
俺葉「宿題をやらない理由に『長野から走ったから』が使える人生、最高だな」
統「最高じゃねぇよ、脚が生まれたての子鹿みたいにガクガクなんだよ」
オンボロアパートの201号室。
畳の上に大の字で転がる俺と、勝手に冷蔵庫を開けて麦茶を飲む統。
地獄の定期テストも、深夜の山ごもりも、おかまチェーンソー校長も関係ない。
いつものくだらない、静かで騒がしい休日が、再び戻ってきたのだった――。
よろしければ次回も読んでいただけると幸いです。
走るのはパネエエ
次回もお楽しみに!




